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米国の利下げの噂は本当か? 読み解く鍵は、インフレ率と雇用統計にあり

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2023.06.07

【この記事のポイント(Insights)】

  • アメリカの金融政策が利下げに転じるのではと予想する人が増加傾向にあるが、FOMCメンバーは利上げ継続を示唆。
  • 利上げ/利下げを予想するキーは、FRBの使命である「物価の安定」と「雇用の最大化」
  • インフレ傾向が根強く、雇用も堅調な今の状況からすると、利上げ継続と考えるのが自然

利下げが近いと期待する人々が増加中

アメリカの一部の人々の間で、FRBが利下げへと転じるんではという期待が高まっています。Googleにおける検索ボリュームの変遷を可視化できるGoogleトレンドによると、アメリカ国内での「Rate Cut」の検索数は4月中旬ごろに年始の2倍ほどに達し、現在もその水準をキープ。利下げへの関心の高まりが読み取れます。

FRBの使命に立ち返るのが、利上げ/利下げ予測の王道

一方で、各種メディアではさらなる利上げの可能性を伝える記事のほうが目立ちます。2023年5月15日には、リッチモンド地区連銀の総裁でFOMCメンバーでもあるバーキン氏がインフレが続く限り利上げを行うべきであると発言、「障壁はない」と金融不安を理由に判断を曲げることはない旨を明言しています。

利上げは継続するのか、それとも利下げに転じるのか、正反対の予想が飛び交う今、何をヒントに未来を予想すればいいのでしょうか? 推論の組み立て方は様々ありますが、王道はFRBの使命に立ち返って考えることでしょう。FRBの使命は「物価の安定」と「雇用の最大化」です。極論を言えば、銀行への信用が失墜しようと、不況に突入しようと物価と雇用さえ守れたらそれで使命は果たせているのです(現実的には、金融不安や不況の下では物価や雇用も不安定になるため、放置できるわけではありませんが)。

利上げも利下げも、本質的には物価と雇用をコントロールするためのアクションです。利上げを行うと、インフレと雇用の両方にブレーキがかかります。借り入れ利息が高まると事業者が投資を控えるため、消費が減り人件費も抑制されるからです。一方、利下げはインフレも雇用も後押しします。借り入れコストが小さいため、どんどん借りてどんどん投資しようという圧力が働くためです。

根強いインフレと、堅調な雇用。そこから導かれるのは?

「物価の安定」と「雇用の最大化」という2つの使命に、現在の状況を照らし合わせてみましょう。インフレ率は徐々に抑制されつつあるものの、4月の時点で年率4.9%とFRB目標の2%からすればまだまだ高い水準です。対して雇用は堅調です。5月5日に発表された雇用統計によると、4月の失業率は3.4%で、歴史的な低水準と言われた3月よりもさらに低い数値を記録。平均時給も前年同月比で4.3%増加しています。

そんな状況で、FRBが踏むのはアクセルでしょうか? ブレーキでしょうか? 物価はインフレ傾向が根強く、雇用は伸びている今、インフレを抑制を優先してブレーキを踏むと考えるのが自然でしょう。アクセルを踏む(利下げに転じる)のは、ブレーキが効きすぎて雇用が停滞しはじめてからになるのではないでしょうか。

そのタイミングがいつになるのかを正確に予想するのは困難ですが、「近々利下げがあるから、◯◯を仕込むなら今」という甘い誘いにはご注意ください。

 

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