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米ドルの独り勝ちはいつまで続くのか?

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2023.11.20

【この記事のポイント(Insights)】

  • 他国通貨に対して、米ドルの一人勝ち状態が長らく続いている
  • 回復が早く、不況にも強いアメリカ経済の地力が通貨価値の差を生んでいる
  • 地政学的な危機に強い点もドル高の要因で、世界の混乱が続く限りこの傾向が続くかもしれない。

基軸通貨の地位を失うとまで言われていたのに…

米ドルの独走状態が長らく続いています。日本では円安として話題になっていますが、ユーロやポンド、人民元に対しても上昇傾向。対ユーロでは、昨年ぶりに1ユーロ1ドルを切る日も近いのではと噂されています。

ほんの1年ほど前、ドルはむしろ下り坂にありました。基軸通貨の地位を失うのではという心配さえされていました。ウクライナ危機によるロシアと中国の接近、人民元建てで中国に石油を売ろうとするサウジアラビア。グローバルサウスの台頭。たしかに当時は、ドルが弱くなる未来も想像できたのですが、蓋を開けてみれば真逆の現状があります。

ドルはなぜ今、これほどまでに強いのでしょうか。そしてそれはいつまで続くのでしょうか?

いち早く回復し、現在も堅調な経済

ドルが強い一番の理由は、米経済が強いこと、それに尽きます。パンデミックからいち早く経済活動再開に踏切った米国は、他国に先駆けて景気回復を果たします。インフレや利上げなどの逆風があり、不景気の陰こそ指摘されているものの、雇用も個人消費もいまだ堅調です。

経済活動再開が米国より遅れたヨーロッパは、回復仕切らないうちに利上げに転じざるを得ず、いまだに経済が安定しません。特に、EU最大の経済大国であるドイツは絶不調にあります。ドイツ政府が10月2週目に発表した経済成長予測では、前回の予測が下方修正され、前年比0.4%の縮小とマイナス成長が予測されています。さらにIMFも、23年の主要先進国のうち、ドイツのパフォーマンスが最悪になるだろうと予想しています。

また、ゼロコロナ政策を取っていた中国は、経済活動再開が非常に遅れたのに加え、最大の産業である不動産業界がバブル崩壊状態にあり、大きなダメージを受けています。

アメリカ経済も絶好調というわけではありませんが、他国経済がそれ以上に弱っているため、通貨価値の差が開いたのです。

地政学的リスクが高まるほど、米ドルの存在感が増す

経済の強さに加えて重要なのが、アメリカが他の強国と別大陸にあり、太平洋と大西洋で守られている点です。EUにしろ、中国にしろ、同大陸内で戦争が続いていることは大きなリスクです。

経済制裁によりエネルギー資源をはじめとする物品の供給が減る。減少分を別ルートで補った結果、コストが高騰する。陸路・海路・空路の一部が使用不可になり物流が乱れる。戦争当事者国の経済が破壊されるため輸出額が減少する。政治リソースを支援や調停に割かれる。そのほか多くの面でマイナスに働きます。

アメリカは、和平に関与するとは言っても、距離がある分、受ける影響は控えめです。加えて、自国内でエネルギー資源を生産できるため、エネルギー危機のダメージもEUに比べれば小さいものです。

地政学的なリスクを避けるという意味合いでも、ユーロやポンド、人民元よりも米ドルが選ばれるのは自然なことでしょう。危機的状況において存在感が増す米ドル。世界の混乱が続く限り、ドル高の傾向は続くのかも知れません。


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