【この記事のポイント(Insights)】
間近に迫った2024年の米国大統領選ですが、優勢情報が頻繁に入れ替わっており、激戦の様相を呈しています。勝敗の行方はスイング・ステート(揺れる州)と呼ばれる接戦州次第と言われており、それらの州が赤(共和党)に揺れるか、青(民主党)に揺れるかを世界中が注目しています。
一方で、その州が赤い州か青い州かを考えるうえでは、大統領選挙の結果だけでは十分ではありません。州レベルの政策への影響力という観点では、実際には知事や州議会の政党がはるかに大きな権限を持っているからです。特に、支援や規制の対象になりやすい不動産に投資する場合には、州の政治的傾向を知っておくことが重要です。なかでも注意したいのが、今回解説する「トライフェクタ(Trifecta)」です。
「トライフェクタ(Trifecta)」とは、「州知事」と州議会の「上院」と「下院」の多数派を同一の政党がすべて掌握している状態を指します。ラテン語の「tri-」(三つ)と「fecta」(完了)から派生したもので、「三つの成功を同時に成し遂げる」という意味を持ち、もともとは競馬で1着から3着までをすべて当てることを指す言葉でした。競馬や政治以外にも、スポーツやビジネスの世界でもいわゆる三冠王を指す文脈で用いられることがあります。
冒頭で説明したように、アメリカでは州知事や州議会両院の3機関が、州レベルの意思決定に強い影響力を持ちます。トライフェクタはその3つすべてを一党が抑えている状態であり、州全体の行政および立法において大きな影響力を持ち、政策実行において他党の抵抗を受けにくくなります。
例えば、共和党または民主党が州知事の職と州議会の両方(上院と下院)で過半数を占めている場合、その州は「共和党トライフェクタ」または「民主党トライフェクタ」と呼ばれます。この状態では、その政党が州内の政策や法律の制定、予算の決定などを一貫して行うことが可能です。そのため、政策の決定や実行のスピードが増すというメリットと、ブレーキが弱まるというデメリットを併せ持ちます。良くも悪くも極端に振れやすいとも言えます。
不動産投資家の目線からトライフェクタ州を見ると、以下のような利点と注意点があります。
利点
1.政策の安定性と予測可能性 トライフェクタ州では、同一政党が州知事と州議会を支配しているため、政策の一貫性が高く、急な政策変更のリスクが少ないです。これは投資家にとって、長期的な計画を立てやすいという大きな利点です。例えば、共和党が支配する州では、ビジネスや不動産に有利な規制緩和が安定して行われることが期待できます。
2.税制面のメリット 共和党トライフェクタ州では、低い税率や税制優遇が期待でき、これが直接的に投資収益に寄与します。たとえば、テキサス州やフロリダ州では法人税がなく、投資家にとって魅力的な環境が整っています。これにより、収益を最大化しやすい状況が生まれます。
3.経済的な成長 トライフェクタ州では、政策の一貫性により経済成長が促進される傾向があります。経済成長は不動産市場にも反映され、物件価値の上昇が期待できます。ビジネス環境の良さや人口流入により、賃貸物件への需要が高まる場合もあります。
注意点
1.政策の急激な変更 利点の1と矛盾するようですが、トライフェクタの状態では極端な政策が取られがちであるため、政権交代が起きた場合には大きな揺り戻しが起こり得ます。新しい規制や税制変更が予測外に導入された場合、不動産市場に影響を与えることがあります。
2.規制強化のリスク 民主党トライフェクタ州では、環境保護や住宅供給に関する規制が強く、今後もさらに強化される可能性が高いと言えます。これにより、開発が遅れたり、賃料規制を受けたりすることで、収益性が制限されるリスクがあります。
3.税負担の増加 民主党支配の州では、税率の引き上げや新しい課税が導入される可能性があります。例えば、カリフォルニア州やニューヨーク州では高い所得税や不動産税が導入されており、投資家にとってはコストが増加するリスクがあります。
最後に、2024年9月現在のトライフェクタ州を紹介します。23州が赤いトライフェクタ、17州が青いトライフェクタ、残りの10州がどちらでもない州です。トライフェクタは近年増加傾向で、米国の分断はここでも見て取れます。
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