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副業率は日米で意外と変わらない。では何が違う?データで見るアメリカと日本の働き方

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2026.09.15

【この記事のポイント(Insights)】

  • 米国と日本の副業率は、定義の違いに注意が必要だが、ともにおおむね5%前後にある。
  • 米国では副業率そのものより副業者の属性や仕事の形が変化し、日本では副業率そのものが上昇している。
  • 日米は異なるルートから、「1人1社1仕事」を前提としない働き方へ近づいている可能性がある。 

 

2026年9月、リッチモンド連銀が米国の「複数就業」に関する新たな分析を発表しました。発表によると、米国では働く人のおよそ20人に1人が複数の仕事を持っていることが分かりました。実はこの数字、日本の副業率(調査によって多少異なるが、およそ5%前後)とほぼ同水準です。

では、日米の働き方は似てきたのでしょうか。データを詳しく見ると、同じような副業率でも、その背景にはかなり違った変化が起きていることが分かります。最新の米国データと日本の統計を比較しながら、副業から見える日米の働き方の変化を考えてみましょう。

なお、米国の統計で用いられる「multiple jobholder(複数就業者)」と、日本で一般に使われる「副業」は定義が完全に同じではありません。本記事では読みやすさを優先し、こうした違いに留意しながら、便宜上まとめて「副業」と表現します。

日本もアメリカも、副業率は5%前後。

米労働統計局(BLS)によると、2026年8月時点で、複数の仕事を持つ人は就業者全体の5%台です。リッチモンド連銀の分析でも、2026年7月の複数就業率は5.5%でした。ざっくりいえば、働いているアメリカ人の約20人に1人が、本業以外にも別の仕事を持っていることになります。

一方、日本はどうでしょうか。総務省の「就業構造基本調査」では、非農林業従事者のうち副業を持つ人の割合は2017年の3.9%から2022年には4.8%へ上昇しました。

米国と日本では調査方法や対象者、「複数就業」「副業」の定義が異なるため、「米国5%台、日本4.8%だからほぼ同じ」と厳密に比較することはできません。それでも、少なくとも「アメリカでは副業が当たり前で、日本では極めて珍しい」というほどの差ではないことは分かります。

むしろ興味深いのは、その数字がどのように形成されてきたかです。一見すると似た5%前後でも、米国と日本では異なる動きが起きています。

米国の副業率は30年前より低い

まず押さえておきたいのは、米国のいまの副業率は、歴史的に見て特別高くも低くもないことです。

リッチモンド連銀によると、米国の複数就業率は1990年代半ばには6%台でした。1995年ごろには6.8%前後まで上昇。その後、長期的な低下トレンドに移り、2010年代にはおおむね5%前後で推移しました。コロナ禍に入った2020年4月には4.1%まで急低下しましたが、その後回復し、2025年末には6.0%、2026年7月には5.5%となっています。つまり、コロナ禍で落ち込んだ複数就業率が元の水準に戻ったところです。

ここで興味深いのが、1990年代半ば以降に副業率が低下した理由です。米労働統計局が過去に行った分析によると、主な要因は「副業をしていた人が1つの仕事に絞った」ことではありませんでした。むしろ、1つの仕事しか持っていない人が、新しく2つ目の仕事を始める確率が低下していたのです。

つまり、「掛け持ちを続けられなくなった」のではなく、「そもそも掛け持ちを始めなくなった」ことが、副業率の低下につながっていました。

では、今回リッチモンド連銀が取り上げた副業増加には、どのような意味があるのでしょうか。重要なのは「何人が副業しているか」以上に、「誰が、どのような副業をしているか」が変化していることです。

低所得だからとは限らない。変わり始めた「副業する人」

副業というと、「本業の給与だけでは生活できない人が、もう1つ仕事をする」というイメージが浮かびやすいかもしれません。もちろん、そうした副業は現在も存在します。しかし、米国の最新データを見ると、それだけでは説明できません。

リッチモンド連銀によると、2021年から2025年にかけての複数就業率は、世帯所得5万ドル未満では4.2%から4.9%へ、5万~15万ドルでは4.7%から5.6%へ、15万ドル以上では5.1%から5.8%へ上昇しました。上昇幅が最も大きかったのは、最も所得の低い層ではなく、中所得層なのです。

学歴毎の傾向にも変化が見られます。1990年代には、複数就業者に占める大卒者の割合は約35%でした。それが2024年には約50%まで上昇しています。

さらに、働き方別に見ると特徴的なのが自営業者です。2000~2002年と2023~2025年を比べると、全体の複数就業率はほとんど変わっていません。一方、法人化した自営業者では5.64%から7.98%へ大きく上昇しました。

これらの数字から見えてくるのは、米国で副業そのものが突然広がったというより、副業する人と、副業の組み合わせ方が変わってきた可能性です。

従来の複数就業統計が捉えやすいのは、複数の勤務先を持つケースや、会社員と自営業を組み合わせるケースです。ところが現在は、会社員を続けながらコンサルティングをしたり、Uberなどのプラットフォームを通じて単発で働いたり、オンラインで商品を販売したり、自ら複数の事業を持ったりすることもできます。

「勤務先をもう1社増やす」以外にも、収入源を増やす選択肢が広がっているのです。

日本では逆に「副業する人そのもの」が増えている

一方、日本では異なる変化が起きています。総務省の就業構造基本調査によると、非農林業従事者のうち副業を持つ人の割合は2007年が3.9%、2012年が3.6%、2017年が3.9%でした。

長く3%台で推移していましたが、2022年には4.8%へ上昇しています。人数で見ると、2017年の約245万人から2022年には約305万人へ、5年間で約60万人増えました。

米国では30年前のほうが現在よりも副業率が高かったのに対し、日本ではかつては米国よりはるかに低かった副業率が、肩を並べるほどにまで上昇しているのです。

日本の場合も「副業=収入不足」という図式だけでは説明できません。日本の公的統計では、主な仕事から得ている所得(仮に、本業所得と呼びます)と副業率の関係を見ると、本業所得が低い層だけでなく、高い層でも副業率が高くなる傾向が確認できます。中間的な本業所得の層では副業率が下がり、両端が高くなるU字型に近い分布です。

さらに、パーソル総合研究所が2025年に、従業員10人以上の企業で働く20~50代の正社員を対象に行った調査では、年収1000万円以上の層の副業実施率が16.3%と、所得区分別で最も高くなりました。

もちろん、これは民間のインターネット調査であり、総務省の公的統計と単純に比較することはできません。それでも、生活費を補うためだけではなく、自分の専門性を別の仕事で生かしたり、新たな事業に挑戦したり、収入源を分散させたりする副業が、日本にも存在することを示す材料にはなります。

日本の副業理由を調査した労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査では、「収入を増やしたい」「1つの仕事だけでは収入が少なく生活できない」といった経済的理由が目立ちます。

一方で、「自分が活躍できる場を広げたい」といった回答もあります。つまり、日米ともに生活防衛としての副業と、機会を広げるための副業が混在していると見るのが妥当でしょう。「米国人はキャリアのため、日本人は生活苦のため」といった単純な国民性の違いではなさそうです。

日本で大きく変わったのは「副業していいのか」という前提

では、なぜ日本では近年になって副業する人そのものが増えているのでしょうか。

背景として無視できないのが、企業と労働者の関係の変化です。日本では長らく、大企業の正社員を中心として、1つの会社に長期間勤めることが標準的なキャリアモデルとされてきました。会社が副業を禁止することも珍しくありませんでした。

ここに、米国との大きな違いがあります。米国では、副業すること自体は以前から珍しいものではありません。一方、日本では、まず「副業してもよいのか」という躊躇いがあったのです。

その流れの転換点の1つとなったのが2018年です。厚生労働省は「モデル就業規則」を改定し、それまで存在した「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除しました。

政府が副業・兼業を促進する方向へ明確に舵を切ったことで、企業側も変化しています。厚生労働省の資料に掲載された民間調査によると、副業を全面的または条件付きで認める企業の割合は2021年の55.0%から、2023年には60.9%、2025年には64.3%まで上昇しています。

こうした制度的な障壁が下がった時期と、副業率が上昇した時期は重なっています。両者の因果関係を統計だけから断定することはできませんが、日本で副業が広がってきた背景の1つと考えることはできそうです。

もしかすると「副業率」そのものが古い指標になりつつある

ただし、副業について考えるうえでは、もう1つ厄介な問題があります。そもそも現在の統計は、「副業」を正確に捉えているのでしょうか。米国の公式統計では、複数就業率は5%台です。ところが行政記録を用いた研究では、2018年時点でも複数就業率は約8%だったと推計されています。公式調査より約3ポイントも高い数字です。

差が生まれる理由の1つとして考えられているのが、ギグワークや自営業、プラットフォームを通じた仕事です。米国のCPSでは、少なくとも1つは賃金・給与を受け取る仕事を持つことが複数就業者として数えられる条件になります。そのため、複数の自営業を並行して営むケースなどは、実際には複数の仕事をしていても公式の複数就業者として捕捉されない場合があります。

また、会社員が週末だけプラットフォームを通じて単発の仕事を請け負っていても、本人自身がそれを「2つ目の仕事」と認識していなければ、アンケート調査で十分に捉えられない可能性もあります。オンラインで商品を販売したり、個人でコンサルティングをしたりする場合も同様です。

従来の労働統計は、「どの勤務先で、どのような雇用形態で働いているか」を把握することには適しています。ところが現在は、
「会社員+個人事業」
「会社員+プラットフォーム労働」
「会社員+コンテンツ販売」
「自営業+別事業」
といった組み合わせが広がっています。こうなると、「何社で働いているか」だけでは働き方の実態を把握しにくくなります。これは、今後の日本でも同じでしょう。

1人が1つの会社に勤め、そこからほぼすべての勤労所得を得ることを前提とした統計や制度は、次第に現実とのズレが大きくなる可能性があります。これから働き方を考える際には、「副業している人が何%いるのか」だけではなく、1人の人間がいくつの仕事や所得源を組み合わせているのかという視点が、より重要になるのかもしれません。

日米は違うルートから「1人1社1仕事」ではない社会へ

副業率だけを見ると、日本と米国の数字は意外なほど近く見えます。しかし、その数字が生まれた背景は違います。

米国では、複数就業は30年前から珍しいものではなく、現在の副業率も歴史的に見て特異な水準ではありません。その代わり、中所得者や大卒者、自営業者の存在感が高まり、ギグワークなど従来の統計では捉えにくい仕事が広がっています。

日本では、副業率そのものが上昇しています。その背後では、2018年以降、副業を前提とする制度や企業側の姿勢にも変化が見られます。

つまり、スタート地点も進み方も異なります。ただし、向かっている方向には共通する部分があります。1人の働き手が1社だけに所属し、1つの仕事からほぼすべての所得を得る。そんな20世紀型の働き方が、日米双方で少しずつ絶対的なものではなくなりつつあるのです。

今後は「副業率が何%になったか」という数字だけでは、働き方の変化を十分に捉えられなくなるかもしれません。

 

 

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