【この記事のポイント(Insights)】
2024年の全米の住宅差し押さえ率は、過去20年間で3番目に低い水準となりました。このデータだけを見ると、米国の住宅市場は安定しているように思えます。しかし、その背景には政府の手厚い支援策が大きく影響しており、通常の市場環境とは異なる側面を持っています。
さらに、2025年から始まる第二次トランプ政権では、住宅市場に関する政策が大きく変わる可能性が指摘されています。政府支援が縮小されることで、差し押さえ件数が増加し、市場に供給される物件が増えるのか、それとも金融規制の緩和により住宅市場が加熱するのか、不透明な要素が多い状況です。
本記事では、現在の低い差し押さえ率がどのような意味を持つのか、そして今後の住宅市場の行方を左右する要因について、投資家目線で詳しく解説していきます。
2024年の全米の住宅差し押さえ率は、過去20年間で3番目に低い水準であることが明らかになりました。このデータは、Statistaの統計データおよび米国住宅市場調査レポートに基づいています。このデータは、米国の住宅市場が安定しているように見える一方で、その背景には特別な要因があることを示唆しています。
住宅差し押さえ率は、住宅市場の健全性を示す重要な指標の一つです。この数値が低いということは、多くの住宅所有者がローンの支払いを滞らせることなく生活していることを意味します。しかし、同時に、差し押さえ物件の市場供給が減少するため、住宅価格の高止まりにつながる可能性もあります。
住宅差し押さえ率が低くなると、住宅市場の参加者の心理や行動に以下のような影響を与えます。
差し押さえ率が低いときには、供給減・需要増になりやすい、つまり価格上昇圧が働きやすいため、安く買って高く売りたい投資家にとっては慎重な市場分析が求められます。
ただし、上述のような市場傾向は、平時における差し押さえ率の影響に関するもので、現在の状況にそのまま当てはめるのは危険かもしれません。
というのも、差し押さえ率が低水準にあるのは、パンデミックの影響が大きいからです。2020年以降、新型コロナウイルスの影響を受けた住宅市場は、政府の手厚い支援策によって大きく保護されてきました。具体的には、ローン返済の猶予措置や差し押さえのモラトリアム(一定期間の差し押さえ禁止)、低金利政策などが実施され、多くの住宅所有者が差し押さえを回避できる環境が整えられたのです。
実際、過去20年のうち差し押さえ率が低い年の上位5年は、2021年(0.11%)、2020年(0.16%)、2024年(0.23%)、2022年(0.23%)、2023年(0.24%)と、すべてパンデミック以後の年です。ついで低かったのは2019年(0.36%)で、パンデミック前後で大きな差があることが分かります。
こうした背景を踏まえると、現在の低い差し押さえ率は、通常の市場動向によるものではなく、政府の政策介入の影響が色濃く反映された数値であると言えます。市場の自然なバランスによって形成されたものではないため、これを「住宅市場が強い」と単純に解釈するのは危険かもしれません。
さらに、本来なら差し押さえに至っていたはずの住宅が延命されていただけで、支援が打ち切られたときに一気に差し押さえ・市場放出となるリスクもあります。このような状況下では、投資家が市場の動向を正しく把握するのが難しくなり、不動産投資のタイミングを見極めることがより一層重要になります。
2025年から始まる第二次トランプ政権では、政府の住宅支援策が削減される可能性が高いと見られています。この変化が住宅市場に与える影響として、以下の3つのシナリオが考えられます。
トランプ政権の政策次第で、住宅差し押さえ率は上昇するのか、それとも市場が別の方向に進むのかが決まります。投資家にとっては、政策の影響を慎重に見極め、リスク管理を行うことが求められます。就任から1ヶ月ほどの間のトランプ大統領の動きを見る限り、公約に掲げていた項目について何の意思表示もせず長期間放置する可能性は低いと予想できます。政府支援をどう扱うかについて明確な発言まで待ってみるのも1つの手かもしれません。
本件に限らず、大統領交代のタイミングは市場環境が大きく変わります。その分、リスクとリターンも増しますので、ご自身の投資スタンスを踏まえ、動くべきか待つべきかご検討ください。
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