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アメリカ不動産市場は国内だけでなく、世界中から多くの投資家や購入者が集まる巨大マーケット。その中でも、トップの投資額を誇るのが中国です。
全米不動産業者協会(NAR)のレポート(※1)によると、2019年〜2020年の外国からの投資額ランキングトップ5は、5位コロンビア(イギリスを抜かして初のランクイン)、4位インド、3位メキシコ、2位カナダ、そして1位が中国の順番でした。
中国人投資家はこの年、115億ドル相当にも及ぶアメリカの住宅物件を購入しています。これは外国からの購入額全体の6分の1をも占める数字となっており、中国人投資家がアメリカ不動産市場における巨大な顧客層を形成していることが伺えます。
なぜこれほどまでに、中国からの投資額が多いのでしょうか。その理由のひとつに「留学」という要因が挙げられます。
中国は、とりわけ海外留学に熱心な学生が多い国として知られています。中国は非常に学歴に重きが置かれている国のひとつ。一度受験に失敗したり競争のレールから外れたりしてしまうとリカバリーが難しく、生まれた地域によっては大学合格ラインや就職時の選択肢も異なるため、農村出身者が成功することは都市部の出身者以上に困難だとも言われています。
そうした状況から逆転するひとつの手段として「留学」という方法があります。
中国政府は2008年から、海外に散らばる優秀な中国人を呼び戻すための「千人計画」と呼ばれる政策を実施。例えば、海外の有名大学で博士号を得るなど、国際的な成果を残した人材がこの計画に選ばれると、中国国内の任意の場所に戸籍を移せたり、官民の重要なポストに就くことが可能になったり、各種手当の支給・税金の免除など金銭的な優遇が受けられたりと、さまざまな特典を受けることができるのです。
こうした背景を受けて、清華大学や北京大学といった国内大学の多くが世界的に評価されるようになった現在でも、海外大学への留学を選ぶ人は後を絶たないという事情があります。
とりわけ、英米のエリート校で教育を受けた学生は高く評価される傾向があり、中国の大学が教授職を募集する場合、アメリカの大学の学位が必要になることもあるようです。
子どもの将来的な成功を期待して、アイビーリーグなど有名大学への進学を視野に、小中学生の時期から子どもをアメリカに住まわせることを選ぶ親もいます。そのような場合に、子どものために現地に物件を購入する親が多いことが、中国からの不動産需要を説明する要因のひとつです。
物件を購入して子どもを住まわせる場合の大きなメリットとして、「学習環境を整えられること」がまず挙げられます。寮やルームシェアの場合、同居人を選べるケースが少ないため、海外生活に慣れていない場合はトラブルやストレスにもつながりかねません。そこで物件を購入する選択肢が浮上するわけです。またハウスキーパーを雇えば、家事などの負担も減らし、より学習に集中する環境を実現できます。
もうひとつのメリットとして「資産の分散」が挙げられます。現在、順調に成長している中国経済ではありますが、今後の見通しや政府による資産への介入リスクなども踏まえて、リスク回避としてグローバルな資産分散を選ぶ人も多いというわけです。
トランプ元大統領の在任中は、米中間の経済摩擦やコロナ禍の影響で、一時は中国人投資家の動向にもマイナスの影響が予想されていましたが、バイデン大統領の就任とワクチンの開発によって風向きが変わり、中国人投資家の人気は再び復活しつつあるようです。
アメリカ不動産市場の大きな担い手である中国人投資家の動向。今後も引き続き注目しておきたいところです。
(※1)National Association of Realtors “International Transactions in U.S. Residential Real Estate 2020”
https://www.nar.realtor/sites/default/files/documents/2020-international-transactions-in-us-residential-real-estate-08-06-2020.pdf
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