2025年の世界経済は、コロナ禍直後を除けば、もっとも低い成長にとどまる見通しとなっています。IMFやOECD、世界銀行、UNCTAD、フィッチ・レーティングス、そしてモルガン・スタンレーなど、国際機関や大手金融機関がそろって「成長は鈍化する」との見方を示しています。
各社が発表した予測を見てみると、IMFは2.8%、OECDは2.9%、世界銀行は2.7%、UNCTADは2.3%、フィッチは1.9%、モルガン・スタンレーは2.9%といった水準です。どの数字も2〜3%台前半に集中しており、いずれもコロナ後では最も低い成長となりそうです。
では、なぜここまで足並みが揃った悲観的な見通しになっているのでしょうか。各機関が共通して挙げているのは、主に次の4つの要因です。1つ目は、米国の新関税政策によって貿易の流れが混乱していること。2つ目は、中国経済の構造的な減速。3つ目は、エネルギー価格がなかなか下がらないこと。そして4つ目が、政策の先行きが読みにくいという不確実性の高まりです。
こうした背景の中で、いま注目されているのが「ジオエコノミックリスク(地経学的リスク)」という考え方です。これは、地政学と経済が絡み合い、国家間の対立や通商政策の変化が経済成長に直接的な影響を与えるというもの。今回のように各国の通商や投資が慎重になると、長期的な意思決定が遅れ、経済全体の勢いがそがれてしまうことになります。
なかでも目を引くのが、アメリカが進めている追加関税政策の影響です。トランプ大統領主導のもと、中国をはじめとする各国からの輸入品に対して高関税がかけられるようになりました。
モルガン・スタンレーはこれを「構造的ショック」と表現しています。つまり、これは一時的な混乱ではなく、経済の仕組みそのものに長く影響する変化だということです。IMFやOECDも、こうした関税が物価上昇を招き、各国の金融政策を難しくしてしまうと警戒を強めています。利下げのタイミングが遅れれば、企業や個人への資金の流れも細り、景気の足かせになってしまいます。
さらに懸念されているのは、経済の“分断”です。企業は不確実な通商環境を受けて、サプライチェーンの見直しを進めざるを得なくなっています。ただ、新たな供給網を作るには時間もコストもかかるため、短期的には非効率が生まれやすくなります。
国レベルでも、各国政府が自国優先の産業政策へと舵を切りはじめています。その結果、世界全体で経済のブロック化が進んでおり、貿易の自由度が下がれば下がるほど、イノベーションや生産性の伸びにもブレーキがかかってしまう恐れがあります。
こうした中、各機関のレポートでは「慎重な判断と政策の見直しが不可欠」とのメッセージが繰り返されています。世界経済の行方が見通しにくくなっている今こそ、慌てずに情報を集めて、しっかりと動きを見極めることが大切です。
記事を読んで「なんだか雲行きがあやしいな」と感じた方は、ぜひIMFやOECDなどの一次資料にも目を通してみてください。小さな兆しを見逃さない姿勢が、これからの時代にはより求められていきそうです。
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