【この記事のポイント(Insights)】
バイデン現大統領に代わり2024年の大統領選民主党候補となったカマラ・ハリス氏。交代直後こそ、支持率調査でトランプ氏に水を空けられていましたが、討論会以後は対等以上の評価を集めており、投票まで2ヶ月を切った9月末時点でも、どちらに転ぶかわからない情勢です。
そんなハリス氏ですが、不動産市場に対してはバイデン氏以上の規制強化派であることで知られます。今回は、住宅の公平性や低所得者層の支援を重要視する彼女が、不動産市場規制についての発言やアクションを紹介します。
ハリスは、カリフォルニア州司法長官時代から、住宅問題や不動産業界に対する強い関心を持っていました。彼女のキャリアにおいて特に注目されるのは、リーマンショック後の住宅ローン危機への対応です。2013年、ハリスは「California Homeowner Bill of Rights
(カリフォルニア州住宅所有者権利章典)」を導入し、不正な差し押さえや詐欺的な住宅ローンからカリフォルニア州の住民を保護する措置を講じました。この規制は多くの金融機関に圧力をかけると同時に、住宅所有者を守るという社会的な評価を受けています。
さらに、彼女は賃貸市場においても、低所得者層を保護するために賃料の急激な上昇を防ぐ政策を推進してきました。これにより、不動産投資家に対しては新たな規制が導入され、市場参入におけるコストやリスクが増加する結果となりました。この背景から、ハリスは不動産市場の中でも特に消費者保護と市場の安定化に焦点を当てた政策を展開してきたといえます。
2024年大統領選でも、ハリスは不動産業界へのアプローチについて言及しています。彼女の主要な公約の一つである「Stop Predatory Investing Act(略奪的投資行動の抑制)」は、不動産市場における投機的な投資活動を規制し、住宅不足と物件価格・賃料の高騰を解消することを目的としています。特に、投資ファンドや個人投資家による大規模な賃貸物件の買い占めに対する厳しい規制が含まれています。未成立の法案であるため、「大規模」の基準も検討段階ですが、一定数(例えば50戸)以上の住宅保有や、投資総額などが採用されるのではと言われています。
規制内容案は主に以下です。
税控除の制限: 賃貸物件に関する税控除を削減する。
減価償却のルール変更: 減価償却の適用条件を厳しくする。
長期保有へのインセンティブ強化: 短期的なキャピタルゲイン税率の強化により、短期間での売買を抑制し、長期的な保有を促進する。
REITsに対する規制強化: 特定の地域や価格帯に集中するREITsに対して税制優遇を見直し、投資活動を抑制する。
こうした規制が導入された場合、大口投資家の資本が引き上げられることにより、市場全体の成長が鈍化する可能性が高いと見られます。
対するトランプ氏は、彼自身がビジネスマン出身であり、特に不動産開発を得意としていたことから、緩和的な政策を提唱しています。不動産投資家からすれば、トランプ氏の当選は、少なくとも短期目線では有利に働くと言えるでしょう。
ただし、外国人投資家にはリスクもあります。「アメリカ・ファースト」を掲げる彼は、ときに強引な手法で外国人の締め出しを行ってきたからです。前政権でも、一部の国、特に中国からの投資には厳しい制約が加えられました。国際情勢の変動により、規制対象を広げる可能性が大いにあるため、注意が必要です。
両陣営、どちらが勝っても不動産市場への影響は小さくありません。その行く末に、世界中の投資家が注目しています。
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