2023年5月以降、メキシコで難民申請が激増しているようです。メキシコというと、アメリカへの亡命者が多いことが知られていますが、それと同時にグアテマラやエルサルバドルなどの中南米の国からの亡命受け入れ数も非常に多い国です。特に近年はその数が増加傾向にあり、COMAR(Comisión Mexicana de Ayuda a Refugiados:メキシコ難民支援委員会)によると2023年1月の亡命申請者は約1万3000人で、2022年同月の約2倍を記録していました。
COMAR長官のラミレス氏によると、5月の申請数は月半ばの18日の時点ですでに、メキシコシティで約3,300件、南部国境付近の都市タパチュラで約3,000件を記録。過去最多水準に達しており、申請対応に当たる職員は申請受付アプリの導入の必要性を訴えるなど、手続き処理の効率化を求める声を挙げています。
職員たちが危機感を抱く理由は、数の問題だけではありません。というのも、亡命申請は国境付近の都市で最多であるのが通常で、国の中ほどにあるメキシコシティの亡命者数がそれを上回るのは同国の歴史上はじめての異常事態だからです。
グアテマラ国境付近の都市タパチュラと首都メキシコシティの亡命申請者数が逆転した理由は、アメリカでタイトル42が失効したことの影響が大きいと見られています。
パンデミック下の公衆衛生対策を口実にトランプ大統領が発動したタイトル42は、移民を強力に排除する法律でしたが、5月11日に失効しました。これにより、移民受け入れ条件が緩和されると予想した人々が、11日前後にアメリカと国土を接する国に集まりました。カナダ側から亡命する人は多くないため、大半はメキシコ側からの亡命を図りました。
しかし、バイデン大統領が新たに設けた規制はタイトル42よりは緩和されたものの、米国国境通過直前に通過した国に不法入国した履歴がある人は受け入れないというものでした。そのため、中南米からメキシコを経由してアメリカに亡命しようとした人々は、アメリカに入国できず、かといって本国に帰ることもできないことから、メキシコで亡命申請を提出しているのです。
メキシコには国境なき医師団をはじめとする様々な団体が貧困層を受け入れるシェルターを運営しており、亡命希望者たちもそこで支援を受けていますが、多くのシェルターがすでに過密状態に達していると言われています。
自国のみならず周辺国の経済や治安にも影響を及ぼす米国の移民施策。米国内、特に民主党支持層からは、より人道的な移民規制を求める声も挙がっています。バイデン大統領がそうした声にどう向き合っていくのでしょうか?
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