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トランプ政権が25年末に発表した国家安全保障戦(NSS)から読み取れる、“アメリカの内向き化”

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2026.01.09

【この記事のポイント(Insights)】

  • 2025年版NSSは、従来の「アメリカ第一」を制度的に再構築した戦略文書である。
  • バイデン政権版と比べて、外交は取引型、経済は国家管理型へと大きく転換している。
  • 内政・地政・経済戦略の再設計は、金利・ドル・不動産市場にも中長期で影響を及ぼす可能性がある。

2025年12月、トランプ政権は新たな国家安全保障戦略(National Security Strategy, NSS)を発表しました。これは単なる「アメリカ第一主義」の再掲ではありません。むしろ、かつてよりも練られた政策文書として、国家の方向性を明示する内容になっています。

今回は、2022年にバイデン政権下で出されたNSSとの比較を軸に、トランプ版の戦略が何を変え、何を継承したのかを整理します。さらに、米国の政治・軍事・経済への影響を読み解きつつ、投資家視点から金利・為替・不動産への含意も簡潔に触れていきます。

NSS(国家安全保障戦略)で比較するバイデン政権とトランプ政権

NSSは、米国大統領が数年に一度策定する国家戦略の最上位文書です。外交・軍事はもちろん、移民、サプライチェーン、経済安全保障、技術戦略、さらには気候変動に至るまで、あらゆる分野の基本方針が盛り込まれます。

この戦略は、省庁の方針や予算配分、法律運用にも大きく影響します。つまり、単なる“理想論”ではなく、実務に直結する「国の設計図」とも言えます。だからこそ、政治家や官僚だけでなく、企業経営者や投資家にとっても、目を通す価値のある戦略文書なのです。前バイデン政権(2022年)版NSSと現トランプ政権(2025年)版NSSを比較してみると、さまざまなことが読み取れます。

共通点:安全保障の軸は「対中競争」と「経済安全保障」

2022年のバイデン版NSSと、2025年のトランプ版NSSには、実は共通点も少なくありません。まず両者とも、中国を「最も包括的な競争相手」と位置づけ、国家戦略の中心に据えています。また、経済安全保障の重視や、半導体や電力網などの重要インフラの防衛といった方向性も一致しています。

ただし、この“一致”は表層的なものにすぎません。内実を見ると、トランプ政権のNSSは、国家の優先順位や手段の選び方において、大きな再定義を試みています。

決定的な違い:地政学・外交・制度設計の再構築

トランプ版NSSの大きな特徴は、「選別的関与」の色合いがより濃くなったことです。まず外交面では、多国間主義を明確に後退させ、二国間交渉を重視する姿勢を強調しています。バイデン政権が“民主主義対専制主義”という価値観ベースの連携を目指したのに対し、トランプ政権は「取引重視」に回帰した格好です。

さらに、地政学的な優先順位も変わりました。バイデン政権がインド太平洋を中心に据えていたのに対し、トランプ政権は西半球、つまり中南米を重点地域として明記。これはモンロー主義(米州への外部勢力介入を拒む原則)の再強調とも言えます。

移民政策に関しても、大きな変化があります。トランプ版NSSでは、移民をもはや「社会問題」や「人権問題」としてではなく、明確に「国家安全保障の課題」と定義。治安・主権・制度秩序の観点から、国境管理を最優先課題として再設定しています。

政治・軍事・経済、すべてにおいて体面よりも実利を重視

政治・軍事・経済それぞれについて、具体的にどんな方針が示されているのか、簡単にまとめると以下です。浮かび上がるのは、自国の実利をとことん重視するドライな姿勢です。

政治:内政優先だが孤立主義ではない

「アメリカ第一主義」と聞くと、すぐに“孤立主義”を連想しがちですが、今回のNSSはむしろ「選別的に内政を優先する戦略的リアリズム」と見る方が正確です。

例えば、移民政策の厳格化や中南米への干渉強化は、単に国内票田の意向を汲むだけではなく、制度的秩序を維持することを国家の生存戦略と捉え直している点が特徴です。

軍事・外交:同盟は「無条件で優遇」はしない

NATOや日本、韓国といった同盟国への姿勢も微妙に変化しています。バイデン政権は「価値観による結束」を強調しましたが、トランプ政権は「負担と見返りのバランス」を強く意識。つまり、同盟は重視するが“費用対効果を見直す”という現実路線です。

また、広域的な軍事介入には消極的で、経済制裁や国境封鎖といった“選択的な圧力”が重視される傾向にあります。これは「関与しない」のではなく「関与の質を変える」方向性と言えるでしょう。

経済:市場メカニズムに対する国家戦略の支配力が高まる

トランプ版NSSでは、経済そのものが安全保障の一部とみなされ、特に以下の分野が“戦略的資産”として明記されています。

  • 半導体
  • 医薬品・医療機器
  • 電力網・インフラ
  • 食料と農業
  • AI・量子・バイオ技術

これらについては、純粋な市場論理ではなく、国家戦略に基づいて政策が誘導されていく可能性が高いです。民間企業にとっては、規制リスクだけでなく、インセンティブ機会としての読み解きが求められます。

金利・為替・不動産市場にはどんな影響が及ぶ?

最後に、各種金融市場への影響を予想してみましょう。実際の市場は他国の動向や民間の経済活動など他のファクターにも左右されるため、予想通りになるとは限りませんが、大まかな流れとして参考にしてみてください。

金利:長期金利は下がりにくい構造へ

移民抑制や国内製造業重視の方向性は、労働供給や生産効率の制約要因になります。インフレ率が粘着しやすく、政策金利が下がっても長期金利(10年債利回りなど)は高止まりしやすい構造が続きそうです。

為替(ドル):短期は底堅く、中長期は警戒も

西半球の地政学リスクが高まれば、ドルは“安全通貨”として一時的に買われやすくなります。ただし、FRBへの政治介入(利下げ圧力など)が強まると、中長期ではドルの信認が揺らぐリスクも。

不動産:住宅は“高値横ばい”、商業は“政策感度”で差が出る

住宅ローン金利が下がりにくいことで、住宅市場では「価格は粘るが、売買は冷える」状態が続く可能性があります。
一方、物流施設やデータセンターといったセクターは、サプライチェーン政策と合致するため、相対的に追い風を受けるでしょう。

”世界の警察”から“内向きの現実主義国家”へ

今回の2025年版NSSは、単なるトランプ的スローガンの再掲ではありません。「アメリカ第一主義」を、外交、経済、制度の文脈で緻密に再構築した“国家戦略”の完成形と言えるかもしれません。

今後のアメリカは、世界の警察官ではなく、“選別的に関与する現実主義国家”として振る舞っていく可能性が高いです。日本の投資家・企業にとっては、どこまでが“守られる対象”で、どこからが“自己責任”になるのか、その線引きを見極める時代に入ったのかもしれません。

 

 

 

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