トランプ政権、隣国カナダとメキシコに異例の高関税を開始

【この記事のポイント（Insights）】

• トランプ政権は、これまで自由貿易を推進してきたカナダ・メキシコに対し、25％の関税を課す大統領令を発表。
• アメリカの主要国（カナダ、メキシコ、中国、EU、日本）に対する関税政策の変化を時代ごとに分析すると、今回の措置の異例さが際立つ。
• インフレの加速、サプライチェーンの混乱、報復関税による輸出産業へのダメージが懸念される。

トランプ政権は、カナダとメキシコからの輸入品に25％の関税を課す大統領令に署名しました。本記事では、この関税措置の背景、各国への関税政策の推移、そして米国経済への影響について詳しく解説します。貿易摩擦がどのように経済全体に影響を与えるのかを知るために、ぜひご一読ください。

カナダとメキシコからの輸入品に25％の関税を課す大統領令に署名

トランプ政権は、新たにカナダとメキシコからの輸入品に対して25％の関税を課す大統領令に署名しました。これは、長年にわたる自由貿易協定の枠組みを大きく変える動きであり、両国との貿易関係に緊張をもたらす可能性があります。

アメリカ、カナダ、メキシコは、1994年に発効した北米自由貿易協定（NAFTA）によって、関税を撤廃し、自由貿易を推進してきました。NAFTAは、北米地域の経済統合を進めるための重要な枠組みとして機能し、特に自動車産業や農産品の取引を活発化させました。

しかし、今回の関税措置により、カナダとメキシコからの輸入品は従来よりも25％高いコストで米国内に流通することになります。この関税率は、一般的な関税水準と比べても非常に高く、輸入品の価格上昇を引き起こすことが懸念されています。

トランプ政権がこのような強硬策を取る理由としては、貿易赤字の削減や国内産業の保護が挙げられます。特に、鉄鋼やアルミニウム産業においては、安価な輸入品の流入が米国企業の競争力を低下させていると主張されています。また、トランプ氏は、メキシコを経由してアメリカに流入する違法薬物への懸念も表明しており、関税措置がこれを抑制する効果を持つ可能性があると強調しています。そのため、関税を通じて輸入品の価格を引き上げ、国内生産を奨励しようという狙いがあります。

アメリカの関税政策の推移：VSカナダ、メキシコ、中国、EU、日本

アメリカの関税政策は、時代ごとに大きく変化してきました。特に、カナダ、メキシコ、中国、EU、日本といった主要な貿易相手国に対する関税政策は、それぞれの国との関係や経済状況に応じて調整されてきました。

カナダ・メキシコ

• 1994年：NAFTA発効により関税撤廃（原則無税）
• 2018年：トランプ政権による鉄鋼・アルミ関税（原則無税だが、該当品目のみ25％）
• 2020年：NAFTAを改定したUSMCA（米国・メキシコ・カナダ協定）発効（原則無税）
• 2025年：今回の報復関税（原則、すべての品目に25％）導入

物理的に近いことから貿易がしやすく、また国防上も友好関係を築く必要が高かった隣国2カ国に対し、自由貿易を推進してきました。

中国

• 2001年：WTO加盟により低関税適用
• 2018年：米中貿易戦争開始、最大25％の関税
• 2021年以降：バイデン政権も対中関税を維持し、ハイテク規制を強化

はじめは低税率を適用しましたが中国が成長するにしたがって、同国を競争相手と見なし、関税戦争を通じて技術覇権を握ろうとしてきました。

EU

• 2018年：トランプ政権が鉄鋼・アルミに25％の関税を適用、EUは報復関税
• 2021年：バイデン政権が一部関税を緩和し、交渉を再開

EUに対しては隣国ほどの優遇は行っておらず、貿易摩擦が生じる場面が度々ありましたが、外交交渉によって調整される傾向にあります。

日本

• WTOルールに基づき基本的に低関税
• 2019年：日米貿易協定により一部関税引き下げ
• EV・半導体関連の補助金政策で間接的な貿易摩擦が発生

友好国として比較的安定した貿易政策が取られてきましたが、自動車産業や農業など特定の分野では対立があります。

これまでの推移を踏まえると、最大限の優遇を受けてきた隣国カナダ・メキシコに対し、25％関税を貸す今回の措置は異例と言えます。

報復関税は、米国経済にどのような影響を及ぼすか？

今回の報復関税は、米国経済にさまざまな影響をもたらすことが予想されます。特に、以下のような悪影響が懸念されています。

1. インフレの加速
   関税がかかることで、輸入品の価格が上昇し、最終的には消費者が負担することになります。例えば、カナダやメキシコからの農産物や鉄鋼製品が高騰すると、自動車や建築資材、食品価格が値上がりし、米国内のインフレを加速させる可能性があります。
   
   
2. サプライチェーンの混乱
   カナダ・メキシコとは、特に自動車産業や製造業においてサプライチェーンが強く結びついています。関税の影響で部品コストが上昇し、企業が価格転嫁を迫られると、最終製品の価格が上昇し、企業の競争力が低下する恐れがあります。
   
   
3. 輸出産業へのダメージ
   関税に対する報復措置として、カナダやメキシコがアメリカ製品に高関税を課す可能性があります。特に、農産物（トウモロコシ・大豆）、自動車、食品業界への影響が懸念されています。
   
   
4. 一部の産業には恩恵も
   関税の影響を受ける産業が多い一方で、恩恵を受ける産業もわずかに存在します。
   
   
5. 総括：懸念される経済全体への影響
   トランプ政権の報復関税は、短期的には国内産業の保護に見えるかもしれませんが、長期的には米国経済全体に負担を強いる可能性があります。

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