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トランプの関税政策に揺れ動くも、どこか楽観的な米国株式市場

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2025.02.19

【この記事のポイント(Insights)】

  • 2025年2月1日、トランプ大統領はカナダ・メキシコからの輸入品に25%の関税を発表し、市場は大幅下落に陥った。
  • その後、延期発表により株価は迅速に回復した。投資家はトランプ大統領の発言を、交渉手段の1つであり、いずれ軟着陸すると見たようだ。
  • トランプ大統領は第一次政権時にも、極端な貿易政策を発表してから緩和するという手法を使っており、その経験が市場に耐性をもたらしている。

2025年2月1日、トランプ米大統領が突如発表した大規模な関税政策は、米国株式市場に大きな波紋を広げました。本記事では、トランプ大統領の発言が市場にどのような影響を与えたのかを時系列で追い、投資家の心理の変化を分析します。また、第一次トランプ政権の経験が市場にどのような耐性を与えたのかについても考察します。

時系列で追う、トランプ大統領の言動への株式市場の反動

2月1日(土):関税政策の発表

トランプ大統領は記者会見において、カナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税を課すと発表しました。同時に、中国からの輸入品には10%の関税を課すとの方針も示し、施行開始を2025年2月4日午前0時1分と定めました。この強硬な発表は、米国の国家安全保障上の必要性や、フェンタニルなどの流入、不法移民問題への対応を背景に行われたものです。大統領令は翌日の2月2日に正式に署名され、政策は法的根拠を確立した形となりました。

2月3日(月):市場の動揺

月曜になり米国株式市場が開かれると、すぐに大幅な下落局面に突入し、S&P500、ダウ平均、NASDAQといった主要株価指数が一時的に大きな下落を記録しました。市場参加者は、今回の関税が即座に発動される場合、北米全体のサプライチェーンに深刻な混乱をもたらすのではないかと懸念し、リスク資産である株式からの資金流出が発生しました。

2月4日:関税の一部延期発表

ところが、発動予定日の約8時間前、トランプ大統領はSNS等を通じて、カナダおよびメキシコに対する25%の関税適用を1か月間延期するとの発表を行いました。これを受け、投資家の間では「トランプ流の交渉術」と捉え、直前で一部措置が軟化されたことに安心感が広がりました。結果として、2月3日の米国市場終値は、当初の急落から持ち直し、S&P500は前日比でごくわずかな下落にとどまりました。

2月14日現在の状況

以降も市場は徐々に回復し、2月14日現在では主要株価指数は発表前の水準にほぼ戻り、一部は史上最高値に迫る勢いを見せています。なお、中国に対する10%の関税は予定通り発動されており、この点においては市場の警戒感が依然として根強い状況です。

油断からの動揺、そして安堵へ。浮き沈みするも、根底は楽観的な投資家たち

トランプ大統領は、就任以前から「アメリカファースト」を強く主張し、貿易政策についても一貫した強硬姿勢を示してきました。したがって、多くの投資家は今回の関税強化について一定の予測を立てていたはずです。しかし、それでも株価は発表直後に大幅に下落しました。これは、投資家がトランプ大統領の具体的な行動を十分に織り込めず、わずかな油断があったことを示しています。

関税発表直後、市場は不確実性に対するリスク回避行動として、株式を急激に売却し、安全資産とされる米国債や金、さらには安全通貨である円やスイスフランへの資金シフトが進みました。多くの投資家は、急な下落に直面して一時的にポートフォリオのリスクを軽減しようとしたのです。しかし、この動揺は市場全体をパニック状態に陥れるほどのものではなく、むしろ短期的な調整に留まりました。

トランプ大統領が延期を発表した直後、投資家は再び冷静さを取り戻し、迅速に押し目買いを開始しました。市場関係者の中には、「今回の関税措置は交渉の駆け引きに過ぎず、最終的には譲歩がなされるだろう」と楽観的な見方を示す者が多く、これが市場の回復を後押ししたと分析されています。結果、初動の大幅下落の後、米国株式市場は短期間で底堅い展開となり、現在では発表前の水準にほぼ戻っている状況です。短期的には動揺したものの、根底にある楽観ムードは揺らがなかったといえるでしょう。

第一次トランプ政権での経験が、市場に耐性を身に付けさせた?

投資家たちがパニックに陥らなかった要因の1つと見られるのが、第一次トランプ政権時代(2017年~2021年)の経験です。中国との貿易摩擦や鉄鋼・アルミに対する関税措置が市場に大きな衝撃を与えました。当時、発表直後には株価が急落し、世界中で資産の逃避が見られるなど、深刻な市場混乱が発生しました。しかし、その後、トランプ大統領が土壇場で交渉に応じる形で一部措置が軟化されたことから、急落は一時的な調整に留まり、市場は比較的早く回復しました。

今回の2025年の関税政策発表においても、同様のパターンが見られます。初動では市場が大きく動揺しましたが、延期発表により迅速に安心感が広がった結果、投資家は「過去の経験を踏まえ、最終的には落とし所が見つかる」と判断し、買い戻しに転じました。実際、過去の交渉戦略や、関税措置が最終的に穏やかな結果に収束した経験が、現在の投資家の心理に大きな影響を与えていると考えられます。

市場参加者は、今回の発表に対しても「トランプ氏はこれまでと同様に、最終的には譲歩するに違いない」という期待を持っています。これは、第一次政権時代においても、株価急落後に見られた迅速な反発と回復の流れと共通しており、今回の関税措置がもたらす市場リスクをある程度ヘッジする効果があると捉えられています。さらに、現在のマーケットは大手ハイテク企業など、グローバルな供給網を持つ企業が株価の牽引役となっており、これらの企業は関税の直接打撃を受けにくいという構造的な耐性も備えているため、過去以上に市場が迅速に回復する要因となっていると分析されています。

 


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