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インフレが進む中、高級ワインの価格が下落。投資需要の翳りが原因か。

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2023.10.31

【この記事のポイント(Insights)】

  • カルトワイン社が発表する高級ワイン価格指数が、産地を問わず一様に低下。
  • 昨年まではコロナ禍に由来する実需および投資需要増で高騰していた。
  • 債券、現金、株式などの魅力が戻ったことで、投資需要が減少したことで価格が落ち着いた。

世界的なインフレの中、高級ワインの価格は産地問わず下落

世界的なインフレトレンドのなか、およそすべての物品の価格が値上がりしていますが、例外もあります。その一例が高級ワインです。

高級ワインの取引全般(購入、販売、投資、収集など)を便利にするプラットフォームを運営するカルトワイン社が独自に算出しているワイン市場の指数「ClutX(カルトワイン・インデックス)」は、年初から下落傾向にあります。世界中の産地すべてのワインを総合したグローバルインデックスは年初から2.13%、6月だけでも0.83%下落。地域ごとのデータを見ると、年始からの騰落率は、シャンパーニュ(-3.35%)、ブルゴーニュ(-2.68%)、ローヌ(-2.56%)、ボルドー(-2.06%)、イタリア(-0.85%)、USA(-0.58%)、これら以外の地域(-1.51%)とすべての地域で下落しています。

なぜ今、高級ワインの価格は下落しているのでしょうか? その理由は、投資マネーの動きにあります。

コロナ禍を期に、実需と投資需要がともに上昇した昨年まで

実は、ClutXが低下しはじめたのは今年に入ってからで、それまではむしろ過加熱と言っていいほどの上昇トレンドにありました。騰落率の期間を5年に広げると、世界の産地合計のインデックスは40.19%上昇。地域別ではブルゴーニュの81.52%上昇をはじめ、シャンパーニュ(56.60%)、イタリア(33.56%)、アメリカ(33.00%)、その他地域(25.47%)、ローヌ(21.89%)、ボルドー(8.07%)と、「何を買っても上がる」と言ってもいいほどの状況でした。

この高騰を支えたのが、コロナ禍です。富裕層からの需要によって成り立つ高級ワイン市場は、コロナ禍などの不況時にも需要に影響を受けません。それどころか金融緩和で富裕層がより豊かになったことで、むしろ需要は増えました。一方で、生産に年月のかかる高級ワインは、供給を増やすことはできません。限られた本数のワインを取り合う状況が価格を押し上げました。

一方で、株式等の他資産は一時低迷したため、それらの投資家たちの一部はリスクヘッジ資産としてワイン投資を始めました。その後インフレが始まってからも、現物資産であることが好まれ、投資需要はさらに加速。実需と投資需要の両輪で、わずかな期間で価格が急上昇したのです。

債券や現金、株式の魅力向上により投資需要が減少

現在価格が下降気味なのは、両輪のうちの片方の輪が外れたからです。まず、利上げにより債券や預金の利回りが上昇し、低リスク中リターンの魅力的な資産になりました。さらにここ最近の株式市場の復調により、ワイン投資に充てていた資金をこれらの資産に戻す投資家が増えているのです。

もう片方の輪は、実需であるため大崩れはしないと考えられます。純粋な投資資産であれば、多数が手を引き値崩れすれば、残った人々も逃げていくわけですが、ワインの場合はそうなりません。自ら楽しむために買っていたワインラバーたちは、投資家が手を引くことで価格が抑えられることを喜ばしく思うはずだからです。これまでと同じかそれ以上の需要が保たれるでしょう。そのため、ワイン価格の下落速度は比較的緩やかです。

一見すると趣味性の高いワイン市場ですが、価格形成には経済動向も色濃く反映されているのがおもしろいですね。


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