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インドとアメリカの接近は、世界経済に何をもたらす?

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2024.04.01

【この記事のポイント(Insights)】

  • インドとアメリカが接近しており、モディ首相の就任以降はその傾向がより強まった。
  • 経済的な存在感もさることながら、中国・ロシアとの距離感の観点で重要視されている。
  • モディ首相には、イスラム教徒を弾圧しているという批判もあり、米民主党員からは不評。

2024年は、アメリカ大統領選の年であると同時に、インドの総選挙の年でもあります。2023年4月に中国を抜いて人口世界最大国となり、近年アメリカとの接近が目立つインドについて、世界経済への影響という観点で紹介します。

人口最大国として、著しい成長を遂げるインド

インドは、日本の貿易相手国としては輸出入ともにトップ10に入っておらず、ビジネス的な観点では影が薄く感じるかもしれません。しかし、世界経済における存在感は年々大きくなってきています。特に、以下の観点で無視できない存在です。

急速な経済成長

世界銀行によるインドの経済成長率予測は、2023年から2024年にかけて6.3%(23年10月発表予測)で、G20諸国中トップクラスです。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のなかでも頭1つ抜けた存在です。

世界最大の人口

冒頭でも紹介した通り、インドは2024年現在、世界最大の人口を抱える国です。本メディアでもたびたび言及してきましたが、人口増は経済成長の最大のエンジンです。労働人口が増えることで生産性が増えるとともに、労働者の購買力が増すことで内需が伸びるという正のスパイラルを産みます。

デジタル・テクノロジーの発達

インドはデジタル化とイノベーションにおいて、世界有数の国家です。AlphabetとGoogleのCEOを勤めるスンダル・ピチャイ氏を排出したインド工科大学(IIT)をはじめ、国際的に評価される教育機関が多数あり、在学中からスタートアップ起業が盛んです。

欧米諸国とは違う立場から、中国・ロシアと交渉できる

そんなインドですが、2000年代以降、アメリカとの接近が目立ちます。特に2014年にナレンドラ・モディ氏が首相に就任して以来、その傾向が顕著です。これは、米国と特に緊密な関係を持つ国の首脳や国際的に重要な影響力を持つ人物のみが行えるとされる、米上下両院合同会議での演説を、モディ首相がすでに2回経験していることからも明らかです。これは、チャーチル元英首相と並ぶ栄誉です。ちなみに、日本人による同会議での演説は2015年に安倍晋三元首相が行った1度きりで、他に例はありません。

アメリカがモディ首相にこれほど歩み寄るのは、上で挙げた「経済成長」「人口」「テクノロジー」への期待もありつつ、安全保障上の理由が最も大きいでしょう。インドは、ロシアと中国という世界が無視できない大国と対等に振る舞える稀有な国です。地理的に近いのはもちろん、かつて社会主義国だったという点で思想的な近さも持ち合わせており、欧米諸国とは違う立場から物を言える存在です。中露との関係は、必ずしも友好的とは言い難いものですが、それでもアメリカ単独で対峙するのとは違う選択肢が取れるはずです。

親密になりきれない理由も

アメリカにとっては、味方にしておきたいインドですが、貿易やビザに関する意見の相違を含め、いくつかの摩擦もあります。なかでも大きいのが、ロシアやイランとの関係性です。特に、インドがロシアからS-400ミサイル防衛システムを購入したことは、アメリカの制裁法(CAATSA)に触れる可能性があり、米メディアでも大いに注目されました。

また、モディ首相の宗教弾圧的な行動には、多様性を重視する米民主党支持者から非難の声が上がっています。モディ政権はヒンドゥー教徒団体を支持母体としており、イスラム教徒及び宗教的少数派に対する差別的な政策や行動が目立っています。特に批判が集まったのは、2019年に制定された市民権改正法(CAA)です。この法律は、隣国からの非合法移民にインドの市民権を与えるものですが、イスラム教徒を市民権取得の資格から除外しています。この法律に対して、インド国内外からイスラム教徒に対する差別だとする強い批判がありました。大統領選を前に党員から不評を買いたくないバイデン大統領としては、頭の痛い問題です。


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