現在、アメリカは深刻な粉ミルク不足に陥っています。多くの店舗では、粉ミルクの棚が空になる日が続いており、多くの小売チェーンが購入個数に制限を設け始めています。小売業に関するデータをデータセンブリー社は、4月24日時点で全米の平均品切れ率は40%に達し、数週間前の30%から急上昇していると指摘。昨年11月の品切れ率が11%だったことからも、不足が深刻なものであることは明らかです。
大手薬局チェーンのウォルグリーンは不測の原因を「需要の増加とさまざまなサプライヤーの課題により、乳児用調製粉乳と幼児用調製粉乳が全国的に制約を受けている」と分析。このうち需要の増加は、コロナ禍からの経済活動再開により、母乳から粉ミルクに切り替えた母親が増えたことが理由であると見られています。
サプライヤーの課題の中心は、医薬品大手アボット・ラボラトリーズ社が2月に起こした細菌感染症問題。同社の粉ミルクを飲んだ赤ちゃん4名が感染症を発症、うち2名が死亡したことで、現在同社は粉ミルクの生産を中止しています。米国農務省が2011年に発表した粉ミルクのシェアによると、アボット社は首位で約43%。以降、データは新しい統計は発表されていませんが、現在も同程度以上のシェアがあると見られています。市場の半分近い供給を担っていた同社が生産を中止したことで、品不足は決定的なものになりました。
アメリカの粉ミルク不足を受け、ネスレはスイスとオランダの向上からの輸送を開始。イギリスのレキットベンキーザーも米国内に持つ工場で30%の増産に着手しました。また、アボット社と米国食品医薬品局は、感染症を引き起こしたミシガン州スタージスの工場の操業再開について合意に達しました。
これらの動きにより、供給量は回復していく見込みですが、ただちに解決とは行きそうにありません。ネスレによるヨーロッパからの輸送は即効性がありますが、レキットベンキーザーの増産はすぐには完了しません。アボット社にいたっては、操業再開までもう1~2週間かかり、そこで生産された製品が小売店に並ぶまでには2ヶ月近い時間がかかると言われています。
米国小児科学会は、保護者向けのガイドラインを発表。特別な処方のミルクが必要な場合を除き、6ヶ月以上の赤ちゃんには「不足が改善するまで短期間に限り、全乳(一般的な牛乳)を与える」ことができるとしました。しかし、ガイドラインには太字で 「これは理想的ではなく、日常化すべきではない 」と強調しています。
注目記事
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その1)
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その2)