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今、米国内での新型コロナウイルスの感染者数が再拡大しています。
今年6月には、州内の成人の7割がワクチン接種を完了したとして前ニューヨーク州知事のクオモ氏がコロナ禍の終息を宣言。オフィス、商業施設、イベントなどの規制が解除されました。
ところが、デルタ株など変異株の流行を受けて、それまで減少していた感染者数が7月中旬から再び増加。感染者数がピーク時の7割を超えるような状況にもなりました。経済市場においても状況は悩ましく、金余りにより株価は上昇し続けているのに対して、実体経済の回復はまだ伸び悩んでいるような状態です。
今年の5〜6月に新型コロナウイルスが沈静化の気配を見せた頃、多くの自治体がさまざまな制限緩和に踏み切りました。補償を行おうにも自治体の財源には限りがあるため、経済活動をいち早く再開し、税収を復活させたいという思惑も、規制撤廃の裏にはあったのかしれません。これを裏付けるかのように、感染者数が再拡大している現在も、多くの自治体で制限は解除されたままです。
しかし、多くの自治体で制限が解除されているにもかかわらず、経済活動はいまだ冷え込んでいるのが現実です。レストランの利用者や旅行者数はパンデミック以前の水準には程遠く、多くの市民が自己防衛として自粛を選んでいることが伺えます。市民の自主的な危機管理によって感染者数を抑制しているという点は、アメリカも日本も同じだと言えそうです。
ワクチン接種率の高い地域ほど自粛を続けている傾向も見られます。早いタイミングからワクチンを進んで打つ人々はウイルスへの自衛意識も高いため、ワクチン接種が完了した後もリスキーな行動を控えているのだと考えられます。
一般市民・消費者の心理的にも、本格的な経済回復はもう少し先のことになりそうですが、労働力不足も経済回復の大きなブレーキになっています。飲食業界や旅行業界は、パンデミックの影響を強く受けたために、大規模な雇い止めを実行せざるを得ませんでした。経営者たちは経済再開に向けて再び労働者を確保しようとしていますが、多くの企業が人材確保に苦戦しています。
感染予防という観点から、顧客と対面で接する必要がある仕事を避ける労働者が増えたこと、またこれまでサービス業に従事していた人が雇い止めを経験したことで、より安定性の高い職業にジョブチェンジを図るケースが増えたことなどがその背景として挙げられそうです。
消費者と労働者、その両方が足りていないこの状況では、飛躍的な経済回復はやはりまだ難しいのかもしれません。
経済回復の遅れは、とくに民主党政権が強い州で顕著なようです。
理由の一つとして、民主党支持者層には感染防止意識が高い人が多いという点が考えられます。事実、ワクチン接種率にもその意識の差が現れており、民主党支持者が多かった地域は、軒並み接種率が高くなっています。
一方、民主党支持地域の経済回復が遅れていることに関しては党内からの批判も強く、バイデン大統領の手腕を疑問視する声も一部から挙がり始めている様子。バイデン大統領はワクチン接種をさらに推進する考えを示していますが、経済回復に重きを置く人々を今後どのように味方につけていくかが、この逆風に立ち向かう重要なファクターとなりそうです。
コロナ禍の終息と経済回復、この2大トピックを今後いかに形にできるか否かが、バイデン政権の正念場となっていきそうです。
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