英米に本拠地を置く格付会社フィッチ・レーティングスは2023年8月1日、アメリカ国債の格付けを最高格のAAAからAA+に引き下げました。S&P社はフィッチ社よりも早い2011年に米国債格付けをAAAからAA+に引き下げているため、世界三大格付のなかで米国債を最高格に置いたままなのはムーディーズ社のみとなりました。
フィッチ社は、格下げの理由として「今後3年間に予想される財政の悪化、一般政府債務の高さと増加、過去20年間における『AA』および『AAA』格付けの他国と比較したガバナンスの劣化」を挙げました。「ガバナンスの劣化」の具体例には、債務上限を巡る上院と下院の対立や、2021年1月6日に起きた大統領選選挙不正を訴える国会議事堂襲撃事件などがあるとしています。
そのうえで、上記のような個別の出来事が引き金となったわけではないことを強調。 「過去20年間のガバナンス基準の着実な悪化」と表現された、慢性的なガバナンス不全にこそ問題があることを指摘しました。
格下げ発表を受け、ジャネット・イエレン財務長官はすぐさま声明を出し「フィッチ・レーティングスの決定には強く反対する。(中略)変更は恣意的であり、古いデータに基づいている」と批判。ホワイトハウス報道官のカリーヌ・ジャンピエール氏や上院多数党院内総務のチャック・シューマーも同様に格付けに反対しつつ、信用問題を生じさせたのは共和党であると非難しました。
このように政権与党関係者たちは共和党に責任を求めているわけですが、民主党と共和党の対立構造にこそがガバナンスを悪化させている最大の理由であることを考えると、フィッチ社の判断は妥当なようにも思えます。
更新後のフィッチ格付けでは、最高格のAAAはドイツやオーストラリアなどを含む9カ国になり、次点のAA+にアメリカ、カナダを含む5カ国が並びました。以降はフランスや韓国を含むAA-が7カ国、エストニアや中国を含むA+が3カ国、日本はその下のAに位置づけられます。
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