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アメリカ不動産アカデミーVol.40 アメリカのTPP復帰は現実になるか(2021年4月26日時点)

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2021.04.26

 

現実味を帯びるアメリカTPP復帰

日本とアメリカは大きくなる中国の影響力に対抗するため、関係をさらに深めようとしています。それを裏付けるように、バイデン大統領が就任以来初めて、対面で会談をする外国首相に菅義偉首相を選び、4月16日に会談が実現しました。
今すぐに米国がTPP(環太平洋連携協定)に復帰することはハードルが高いものの、新型コロナウイルスのパンデミックが収束していけば、復帰する未来もありえるかもしれません。

米国は2017年、トランプ前大統領がTPPを離脱。これにより、TPPが中国と互角に渡り合える同盟となるチャンスは失われました。
その後、アメリカに代わり日本が主導する形で、残る11か国が18年に「環太平洋連携に関する包括的および先進的な協定」に署名。しかし、現在の加盟している国々だけでは、中国と経済規模で張り合うには力不足です。パースUSアジアセンターによると、当初のTPP参加国のGDP(合計国内総生産)は世界団体のほぼ40%を占めていましたが、現状の加盟国合計は13%です。

こうした状況からTPP側は、米国が復帰しやすいような協定内容が提案しています。貿易障壁を下げ、国営企業や労働問題、環境、デジタル取引といった分野でもルールを設定。日本は米国の復帰を待ち望んでいますが、米国からすれば今はまだ復帰するタイミングではありません。米国のパンデミックは峠を越えたように見えるものの、米国の失業率は、昨年の3.5%を大きく上回った6%の状況で、国内の問題が山積みだからです。
一方で、米連邦準備理事会は今年の米成長率が、6.5%に加速、失業率は3.9%に低下すると予想しており、今後米経済が改善すればTPP復帰が現実味を増すでしょう。

このように注目の高まるTPPですが、米国不動産投資への制度的影響はそれほどないと考えられます。米国は、もとから外国人の投資が自由であるためです。一方で、米国人投資家がベトナムなどの成長国に投資先を鞍替えする可能性はあるため、米国不動産市場から資金が流出するかもしれません。

米国の4人に1人は、パンデミック収束後に転職を計画しているという調査結果

2020年3月以降、米国では新型コロナウイルスのパンデミックにより最初の数週間で2,050万人が失業。世界恐慌以来、最悪の失業率となりました。
しかし、米経済回復の兆しが見えてきた現在、プルデンシャル・ファイナンシャル社の調査によると、米国の4人に1人が転職を計画しているという調査結果が報告されています。
2021年3月に、モーニング・コンサルタント社は2000人の労働者に調査をし、次のような結果が出ました。

2-1.なぜ転職を考えているのか
労働者の26%がパンデミック収束後に離職を考えており、そのうち80%は現職でのキャリアアップに不安を感じていることを離職理由として挙げてています。また72%の人が、自身のスキルセットを改めて考えたと述べています。
転職を考えている多くの労働者は、柔軟に働ける仕事を探しています。現在リモートで働いている人の半数も、現在の会社が長期的にリモートワークの選択肢を提供しないのであれば、リモートワークを選択できる企業に転職すると答えています。ヒューストン大学教授で産業・組織心理学の研究者であるデレク・エイブリー氏はこの傾向はごく自然なものだとしつつ、「持てる者(転職をうまく利用できる上昇志向の強い人たち」と「持たざる者(新しいスキルやお金、地位、柔軟性を得るために雇用主を変えることができない労働者たち)」の間の格差が広がるのではと懸念しています。

しかし、すでにリモートワークが出来ている人々は、大学教育を受けた白人の高収入の労働者である傾向があり、この状況が加速すると、所得の不平等が悪化する可能性があるとエイブリー氏は指摘しています。

2-2.雇用主が考えるべきこと
プルデンシャル・ファイナンシャルの副会長であるロブ・ファルゾンは、考慮すべき懸念事項を指摘しています。

「まずは、企業文化を維持し、リモートワークを行いながらも従業員同士のつながりを支援する方法を再考する必要があります。雇用主と労働者の分離が進むと、転職への意識が高まる可能性があるからです。そして、ほとんどの労働者は対面とリモートワークを取り入れた柔軟な働き方を望んでいます。
第二に、パンデミックにより、会社を辞めない限り、新しいスキルを獲得できないという不安が労働者の中で高まっていることです。
雇用主は、これらの指摘を改善しなければ、才能ある労働者を失うことになるでしょう」

不動産投資の観点では、リモートワークの浸透は、短期的には郊外の住宅不動産市場を大いに盛り上げる材料です。一方で、リモートワークが企業活動を妨げる要因になってしまった場合、米国経済にブレーキがかかり、不動産市場も冷え込む未来につながります。人々がリモートワークとうまく付き合っていけるかどうか、注目したいものです。

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