金融ニュースサービス『Seeking Alpha』によると、アメリカの大手カード会社8社のうち3社(キャピタル・ワン・フィナンシャル、ディスカバー・フィナンシャル、ブレッド・ファイナンシャル)において、延滞率がパンデミック前の水準を上回りました。
パンデミックは失業者を増やした反面、政府給付金や学生ローンの支払い免除などにより、消費者負担を減らした側面もありました。経済活動が再開し、雇用が増えて給与水準も上昇しましたが、それを上回る速度で物価上昇が進行しており、その結果カードローンに頼らざるを得ない人々が増えている模様です。
一部アナリストは、例年なら税金還付がある5月は滞納率が低下するにも関わらず、今年は上昇したことに注目。延滞率は今後数ヶ月上昇し続け、特に年末に向けてその傾向が加速するだろうという見解を示しています。
決済サービス情報特化メディア『PYMNTS』と金融サービス企業LendingClub社の共同調査によると、2023年5月時点で米国の消費者の57%が給料ギリギリで生活をしていると回答。さらに、給料の一部でも貯蓄に回していると答えた人は32%に留まりました。これはつまり、多くの人々が貯蓄を切り崩しながら生活していることを意味します。
クレジットカードの返済に問題を抱えていると回答した人々の平均支払い額は、彼らの平均貯蓄の157%に達しており、貯金を全額使っても返済が追いつかない状況です。
そうしたなか、401k(アメリカの確定拠出型企業年金制度)の口座資金を利用する人々も増えています。401kは給与やボーナスの一部を年金として積み立てる制度で、通常は中途引出しはできませんが、困窮時にのみ引き出しが可能です。将来への備えであり、税制的にも有利なこの資金にまで手を付けざるを得ないほど、米国消費者は追い込まれています。
苦しんでいるのは消費者だけではありません。アメリカ6大銀行(JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー)の第2四半期の貸し倒れ損失は、総額50億ドルにも及ぶと予想されています。
この損失には、一般消費者のクレジットカードローンの未回収分に加え、リモートワークの浸透で需要が減った商業用不動産への融資の貸し倒れが目立ちます。商業不動産融資額が米国最大のウェルズ・ファーゴは、同社投資家に向けての説明でオフィスビルやその他の業績不振不動産から受けるであろう損失に備えるため、貸倒引当金に10億ドルを追加したことを公表。その分、新規融資やトレーディングの予算が削られることになると予想されます。
政策金利が大きく上昇するなか、大手銀行は預金金利を低い水準でキープ。融資金利を引き上げることで、金利差収益を大きくして貸し倒れ損失をカバーしている状況です。しかし、中小銀行はより良い預金金利を提示しており、預け替えをする消費者も増えています。預金引き出しを避けたい大手銀行は、なんらか手を打つはずです。金融機関の業績やサービスの動向に注目です。
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