アメリカには、日本と同じように公的年金(ソーシャルセキュリティ)プログラムがありますが、その予算が尽きようとしています。ソーシャルセキュリティを運営する社会保障年金社会保障庁が6月2日に発表した見立てによると、主に給与税を財源とする積立予算は、2035年に枯渇する見込みです。
プログラムの予算を健全化するには、増税によって積立金を増やすか、受給額を削減するか、またはその両方を組み合わせるかのいずれかしかありません。しかし、どの方針を選ぶかをめぐって、政権与党である民主党と、野党である共和党で意見が割れています。
民主党の考えは、主に高所得者を対象にした増税によって歳入を増やし、支給額(歳出)についてはむしろ拡大していこうというものです。
同党のバーニー・サンダース議員は高所得者を対象とした増税法案を提案するとともに、「我々の仕事は、社会保障を拡大し、アメリカのすべての人が自分にふさわしい尊厳を持って引退できるようにし、この国の障害を持つすべての人が必要な安全を守って引退できるようにすることです」と発言。また、「社会保障を削減することではなく、共和党員たちが言うように定年を引き上げることでもありません」と共和党を牽制しました。
一方、共和党はサンダース氏の提案を「有害な提案」「社会保障プログラムを持続可能な基盤に置くことができない」と酷評。下院財政問題委員会の共和党リーダーであるケビン・ブレイディ議員は、「共和党は、現在の受益者と将来の世代のために社会保障を保護したい」と、増税に強く反対しました。
また、自身も年金受給開始年齢に達したばかりの共和党リンジー・グラハム議員は、「富裕層に課税することが社会保障を救うと思うなら、あなたは間違っている」とし、「もし、私よりも社会保障を必要としている人たちのために、社会保障を少し減らしてほしいと言われたら、私は賛成します」と、受給額削減を訴えかけました。
両党のすれ違いは大きく、妥協による前進は難しい状況です。そんななか、共和党の重鎮ミット・ロムニー議員が、派の垣根を超えた議論が必要だとし、TRUST法案と呼ばれる、超党派委員会を設置するための法案を提案するなど、議論前進に向けた調整が行われています。
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