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アメリカ不動産の情報を調べたり、記事を読んだりしていると、馴染みのない用語を目にすることがよくあります。それらの用語を検索してみても、いまいち要領を得ない…なんて経験はありませんか? しっかり理解するには、アメリカの文化や現地事情への理解が必要な場合も。本シリーズでは、そのようなアメリカ不動産における頻出用語をより詳しく、そしてわかりやすく解説します。
第7回目のテーマは「Deed(ディード)」。不動産売買における「権利証書」に値するもので、日本で言うところの「土地の権利書」のような書類だと考える人も多いようですが、その実態はやや異なるようです。日本人には馴染みの薄いDeedについて解説します。
Deedとはある資産の所有者が、その所有権を新しい所有者に譲渡することを宣誓した文書のこと。不動産だけでなく、車やゴルフの会員権のやりとりなどにも用いられているものです。
簡単に言えば、売り主側が「私(A)は、Bさんにこの不動産を売りました」と一筆したためた書類のようなものですが、注意すべきはDeedだけで譲渡が完結するわけではないこと。正式に譲渡が完了するまでには、以下の3ステップの手順を踏むことが必要です。
▼手順1. 売り主がDeedを作成する。
▼手順2. 公証人(州からライセンスを取得した立会人)に、売り主本人が作成・署名した書類であるという認証を受ける。
▼手順3. 不動産を管轄する自治体にDeedを提出、自治体がpublic record(公的記録台帳)に譲渡記録を記入する。
つまり、Deedはあくまで、売り主による権利譲渡の申し出にすぎず、自治体が受理し公的に記録されてはじめて正式に取引が完了するというわけです。
自治体による公的記録が完了すると、買い主(新しい所有者)の手元にDeedが届きますが、日本における「権利書(登記済権利証や登記識別情報)」とは違い、この書類自体を厳重に管理する必要はありません。先述したように、あくまでもDeedは単なる“申し出”のような書類に過ぎないからです。
日本の「権利書」との主な違いをまとめると以下のようなものになります。
▼Deedと権利書の主な違い
・Deedは売り主がつくるが、権利書は法務局がつくる。
・Deedは譲渡手続きを開始する際につくられるが、権利書は譲渡手続きが完了してから発行される。
・Deedは再譲渡する際には既存のものは必要なく、現所有者が新しく作り直す必要がある。一方、権利書は、再譲渡の際にも必要になる(厳密に言うと権利書なしでも取引は可能だが、余分な手続きが発生するため手間やコストが増える)。
比較すると、日本における権利書のほうが重要性が高く、紛失した際のリスクなども大きい書類だと言えるでしょう。ただしDeedも権利書も「書類そのものだけではあくまで法的効力は持たない」という点は安心できるポイントです。日米ともに、所有権が法的に他の人に移る際には、必ず本人確認が必要なため、書類だけで所有権を主張しても認められるケースは考えにくく、仮に書類が盗難されたとしても、その後の売買手続きの面倒が増えるくらいで済むとも言えます。
Deedにはいくつか種類がありますが、ここでは目にする機会が多い代表的な3つのDeedをご紹介します。
1. Warranty Deed(瑕疵担保証書)
Deedのなかでも最も手厚く、買い主にとって有利なもの。譲渡人(売り主)は、譲渡する不動産について、自分以前のオーナーにまでさかのぼって、権利上のいかなる問題もないことを買い主に約束する。問題が発覚し、買い主に損害が生じた場合には譲渡後であっても補償責任が生じる。
2.Grant Deed(譲渡証書)
州によっては「Special Warraty Deed と呼ばれることもある。譲渡人(売り主)は、譲渡する不動産について、自分がオーナーであった期間に権利上の問題がなかったことを保証する。裏を返せば、自分よりも前のオーナーたちの時代にあった問題については、それを保証しない。
3.Quitclaim Deed(権利放棄証書)
claim(クレーム、権利要求)をquit(やめる)することを宣言する証書。例えば、夫婦名義の物件を一方の名義に集約する際や、売買取引なしに名義だけを変更する際に、名義から外れる側の人物がこのDeedに署名する。主に、離婚や相続時の権利整理の際に用いられることが多い。
アメリカ不動産投資において、複数物件を取引する方でなければ、これらすべてのDeedを覚える必要は必ずしもありませんが「Warranty Deed」以外のDeedは条件付きでの保証となるため、注意は必要です。
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