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進むEUの右傾化が、米国不動産市場の追い風になり得る理由

作成者: 海外不動産Insights 編集部|2024.07.18

【この記事のポイント(Insights)】

  • フランスの国民議会総選挙をはじめ、EU諸国で極右政党が躍進中。
  • 極右政党の基本方針のなかには、反移民規制やEU脱退など、経済に影響を及ぼすであろう項目が含まれる。
  • 右傾化はEU不動産市場の減速要因であり、米国不動産市場にとっては追い風となる可能性も。

EU各国で極右政党が勢力拡大中

東京都知事選が行われた2024年7月7日、世界の関心はフランス国民議会(下院)総選挙の第2回選挙に注がれていました。第一回の選挙で”極右”政党である「国民連合(RN)」が最大得票率だったためです。

フランスの総選挙は、過半数を取った議員がいない場合、12.5%以上を得票した候補者のみを残して第2回選挙を行う仕組み(二度目の投票で過半数得票者がいない場合、最大得票者が当選)です。第一回選挙において、RNは33.1%の票を獲得しトップに立ちました。RNは過去にEU離脱(フレグジット)を提案したこともあり、同党の躍進はフランス国内のみならずEU全体、ひいては世界経済に影響を与え得る可能性があります。

加えて、”極左”と見られる「新人民連合」が28%獲得し2意となり、エマニュエル・マクロン大統領率いる中道連合「ルネサンス」が21%得票で3位に沈んだこともあり、フランス政界の激変ぶりに注意が集まりました。
※第一回で過半数獲得した候補はおらず、全選挙区で第二回投票が行われました。

蓋を開けてみると、極左・新人民連合が約180議席(改選前149)、与党ルネサンスが約160議席(同250)、極右・RNが143議席(同88)となり、RNが政権を握ることはありませんでした。

とはいえRNに限らず、イタリア「同盟」(移民に対する強硬な姿勢と反EUの立場で知られる)、ドイツ「ドイツのための選択肢」(反移民、反イスラム、反EUの政策を掲げ、東ドイツを中心に支持を拡大)、スペイン「ボックス」(スペインの統一を重視するナショナリズムを強調)、オーストリア「オーストリア自由党」(反移民、反イスラムの立場)など、EU諸国で極右政党の躍進が目立ちます。これら政党はEUの未来に、そしてアメリカ不動産にどんな影響を及ぼすのでしょうか? 結論から言えば、EUでの極右政党躍進は、アメリカ不動産市場にとってはどちらかというとポジティブです。

反移民規制や反グローバリズム、EU脱退……。極右政党の基本方針

不動産市場への影響を考える前に、極右政党に共通する政策方針についてまとめます。各国の事情や団体の成り立ちによる細かな違いはあれど、大まかな方針は共通していて、以下の6つに集約できます。

  1. 反移民政策: 極右政党は、自国民、特に領土に昔から住む民族の利益を優先します。そのため、移民の流入を厳しく制限し、既存の移民に対する規制を強化する方針を打ち出す傾向にあります。
  2. ナショナリズムの強調: 国家主権の強化と自国の伝統や文化を守ることを強調しています。
  3. EU懐疑主義: 欧州連合(EU)からの脱退や権限の縮小を求め、国家の自立性を主張しています。
  4. 治安強化: 犯罪対策として警察力の強化や厳しい刑罰を支持しています。
  5. 経済保護主義: 自国の産業を保護し、グローバル化の影響を最小限に抑える政策を推進しています。
  6. 伝統的価値観の擁護: 家族や宗教など伝統的価値観を重視し、リベラルな社会政策に反対しています。

移民や外国人投資家への規制が、EU不動産市場を減速させる

上記の方針が現実のものになると、EU圏の市場にはさまざまな変化が起こります。不動産への影響が特に大きいのは以下です。

移民減少による住宅需要の変動

  • 住宅需要の変動: 移民政策が厳格化されると、移民の流入が減少します。特に移民が集中する都市部では住宅需要が減少する可能性が高まります。
  • 家賃や住宅価格の影響: 住宅需要が減少することで、賃貸市場や不動産価格に下げ圧力がかかります。例外的に移民規制がゆるい地域を設定する場合、その地域の住宅価格や賃料が上昇することもあります。

外国人投資家への規制の強化:

  • 所有権や投資規制: 外国人による不動産所有や投資に対する規制が強化されることがあります。この場合、海外からの投資を減少させ、市場の流動性や価格に悪影響を及ぼす可能性があります。

右傾化の影響は多面的ですが、不動産市場に関してのみに言及すれば、概ねネガティブ要因と言っていいでしょう。

EUの人材や投資資本がアメリカにシフトする?

EU圏内の不動産市場に変化が生じると、他地域の不動産市場にも影響が及びます。世界最大の不動産市場であるアメリカ不動産市場も例外ではありません。考えられる影響を追い風、逆風それぞれの観点で整理すると以下です。

追い風の要素

  1. EUの経済不振や外国人規制による投資のシフト:
    • 資本流入の増加: EUの右傾化により不動産市場が不振に陥ったり、外国人投資家の排除が起こったりした場合、投資家が資本をアメリカ市場にシフトする可能性があります。これにより、アメリカの不動産市場に新たな投資が流入し、需要が高まることが期待されます。
    • 外資系企業の移転: 外国人規制により、企業がオフィスをアメリカに移転することを選ぶ可能性があります。これにより、アメリカの商業用不動産市場にとってプラスの影響が生じます。
  2. 米ドルの安全資産としての需要:
    • 為替レートの影響: EUが経済不振に陥るとユーロが弱くなり、相対的に米ドルが強くなることがあります。米ドルが安全資産として選ばれることにより、アメリカの不動産市場に対する投資需要が増加します。
  3. 移民と人口増加:
    • 高度人材の流入: EUに受け入れられなかった移民希望者が、米国に流入する可能性があります。アメリカも移民受け入れに対する考え方は厳しくなってきていますが、高度なスキルを持つ人材については比較的寛容です。人口が増えれば住宅需要も増加し、不動産市場が活性化します。

逆風の要素

  1. グローバル経済の減速:
    • 経済全体への影響: EUの経済不振がグローバル経済に波及し、アメリカ経済にも影響を与える可能性があります。これにより、アメリカの不動産市場も影響を受け、特に商業用不動産や高価格帯の住宅市場にネガティブな影響が出ることが考えられます。
  2. 金融市場のボラティリティ:
    • 金融市場の不安定化: EUの経済不振が深刻なものになり、金融市場全体のボラティリティを高めると、アメリカの金融市場も影響を受け、金利の上昇や融資条件の厳格化が生じる可能性があります。これにより、不動産購入が難しくなることがあります。

EUの右傾化は、投資のシフトや高度人材の流入など、アメリカの不動産市場にとって追い風となる要素が多そうです。一方で、EUの経済不振がグローバル経済全体を減速させるほどのものになった場合は、アメリカ不動産市場に悪影響が及びます。右傾化が進むEU諸国でどのような政策が実行されるのか、注意が必要です。

 

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