【この記事のポイント(Insights)】
アジアの富裕層マネーはパンデミック期の低迷を経て、再び米国不動産市場へと流れ込みつつあります。彼らの購買力は高額帯の価格形成に直接影響を与え、一部都市の市場に大きな影響を与えています。本記事では、アジア系富裕層の購買特性と資金の行方、そしてこの流れが一過性のブームなのか構造的トレンドなのかを分析。投資家が「人気」ではなく「構造」で市場を読むための視点を提示します。
外国人による米住宅購入は2024〜2025年にかけて件数・金額ともに回復し、その中心にいるのがアジアの富裕層です。なかでも中国人が最大シェア(約15%)を占め、次いでインド、香港、シンガポール勢が続きます。平均購入額は他地域を大きく上回り、1件あたり約130万ドル前後という水準。特に中国人購入者では平均購入額が約130万ドル前後、現金比率も高水準(概ね7割)であることから金利上昇局面でも影響を受けにくく、価格形成への影響が大きいと言えます。
この「高単価×高現金比率」の特徴は、市場にとって極めて大きな意味を持ちます。高額帯の成約が平均価格を押し上げ、指数と中央値の乖離を広げる。現金買いが増えれば、金利上昇で冷え込む国内買い手の穴を埋め、価格下支え圧力として機能する。つまり、アジア資本は米国市場における“ボラティリティ緩和剤”でもあり、“価格偏りの要因”でもあるのです。
莫大な資金が流れ込む状況ですが、その流入先エリアには大きな偏りがあり、以下に挙げる一部の都市に大部分が集中しています。
この中でも流入先として特に有力なのがマイアミです。当メディアでも取り上げた通り、世界で最もバブルリスクが高い都市として注目されているマイアミ。アジア富裕層マネーも市場過熱の要因の一端を担っていることは間違いありません。
実際、2025年には中国とシンガポールがマイアミ不動産検索ランキングの上位を占め、デジタル上の「関心マネー」が可視化されました。また、『100万ドル投資で永住権』の報道が話題化し、アナウンス効果として関心を押し上げました(制度化の可否は流動的)。この報道により、アジアの富裕層が「規制前に」と動く動機になった側面もあるでしょう。なぜアジアの富裕層たちはマイアミの不動産を好むのでしょうか? その理由は明快です。
第一に税制。フロリダ州は州所得税がなく、州レベルのキャピタルゲイン課税も存在しないことから、国際富裕層には節税拠点として最適です。
第二に気候と余暇資産。海辺の高級住宅やコンドミニアムが多く、リゾート地としてのブランドも強いのが大きな魅力です。
第三に価格の割安感。価格高騰中とはいえ、ニューヨークやロンドンなどの不動産価格が世界最高水準の都市と比べると、まだまだ安価な傾向にあるマイアミ。同じ金額を出すにしても、遥かに広い床面積を確保できるケースが多く、富裕層からすれば“コストパフォーマンス”を感じるのです。
ただし注意すべきは、実需との乖離です。マイアミの住宅価格上昇は地元所得や賃料上昇を大きく上回り、先述の通り「世界で最もバブルリスクが高い都市(UBSの調査)」に位置づけられています。短期的には資金が集まる一方で、価格変動に脆弱な局地バブルを孕んでいる点は否めません。
マイアミが話題の中心である一方、バブル終焉の予兆から、それとも富裕層の気まぐれか、アジア資本の流れは着実に分散し始めています。
ニューヨークは依然として「世界の金融首都」としてのブランドを維持し、高級コンドミニアムがステータス資産として取引されています。教育・文化・医療環境が整い、富裕層家族の“居住投資”の受け皿でもあります。
ロサンゼルスやサンフランシスコ湾岸は、アジア系コミュニティの厚みとテック・エンタメ業界との親和性が強く、ビジネス拠点を兼ねた購入が多い。シアトルも相対的な価格の割安感とテック就業機会から人気を保っています。
テキサスではヒューストンやダラスが新たな候補地に。法人税制の優遇と産業立地の多様化、さらに人口増加を背景に、インド系や中華系の「実需+投資」層が増加中です。
ハワイは依然として日本人・韓国人富裕層の別荘地として不動の地位。現地の生活利便性と治安、長期滞在の安心感が根強い人気を支えています。
このように、「アジア資本=マイアミ一択」ではなく、居住・教育・事業・リゾートと目的に応じて投資先が論理的に分岐しています。
この流れが一過性なのか、それとも構造的な資金移動なのかを判断するには、次の3つの要因を見極める必要があります。
ベースシナリオとしては、マイアミ優位は当面続くもののボラタイル。一方でニューヨーク、ロサンゼルス、テキサス、ハワイへの機能的分散が同時進行しています。
アップサイド要因はビザ優遇や金利低下による再加速、ダウンサイドは対外規制強化や政治的リスクによるオセアニア・英国などへの迂回です。
このトレンドから投資判断の示唆を得るには、短期的な人気ではなく、資本の流れの構造的背景を理解することが重要です。その鍵を握るのは、雰囲気ではなく、定量的なデータ。特に注目したいKPIは「購入件数・総額」「平均購入単価」「現金比率」「在庫月数(供給のタイトさ)」「賃料伸び率(インカム性の指標)」などです。
これらのデータをもとに次の3点を考察することで、各都市の不動産市場にはどんな戦略がマッチするか考えやすくなります。
① 資金の出どころ:誰がどの目的で買っているのか(資産避難/教育/事業拠点)。
② ローカル需要:人口動態や賃料の上昇余地など、実需との整合性。
③ 出口の流動性:高額帯でも買い手がつくかどうか。
例えば、現在盛り上がっている都市に対しては、以下のような投資戦略が浮かんできます。
人気都市に後追いで乗るより、資金の流入理由と地域需給の整合性を見る視点が重要です。
バブルの懸念がかけられるマイアミは、実需の裏付けが薄いため振れ幅が大きいのは事実ですが、“資産避難港”としての魅力が価格を押し上げる構造的勝者です。中長期的に見ても、アジア資本の「米国志向」は継続する可能性が高く、都市ごとの役割分担がより明確化していくでしょう。その過程で、マイアミがその地位をより確かなものにするかもしれません。もちろん、懸念の通りバブルが弾けるリスクもあります。
チャンスとリスクが同居するこの状況において、「あの都市が人気だ」「いや、バブルだ」という印象論で判断するのは危険です。見るべきは、どの国の資本が、どの目的で、どの市場に流れ込んでいるかという構造そのもの。資金の出どころとローカルの実需が交差する場所に、次の投資機会が生まれます。
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