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住宅売買価格と家賃価格がともに高騰し続けているアメリカ。住居とは別に投資用不動産をいくつも持つような富裕層はともかく、自ら住む家を確保するだけで精一杯な一般的な市民からすれば、負担が日に日に増しています。
そんな中、二大政党である民主党と共和党は、住宅問題についてどのようなアプローチをしているのでしょうか?
この問題を考える前に、まず両党の支持基盤の住宅環境の違いを把握しておく必要があります。アメリカでは、「青い州(民主党が優勢な州)は不動産価格が高く、赤い州(共和党が優勢な州)は不動産価格が低い」という認識が広く浸透しています。実際、青い州の代表格であるカリフォルニア州やニューヨーク州と、赤い州の代表格であるテキサス州やフロリダ州とを比較すると、不動産価格の中央値は青い州のほうが高いのは事実です。例外も多くあるものの、全体的な傾向としては概ね「青い州のほうが不動産価格が高い」と言って良さそうです。
青い州は、沿岸部に多い傾向があり、港町として栄えた都市部を擁します。また、レベルの高い大学が多く、金融やITなどの高収入職に就けるハイスキル人材が豊富です。オフィスワーカーが多いため大都市圏に人が集中する傾向があり、少ない居住空間を取り合わざるを得ず、結果的に住宅コストも上昇しています。
一方、赤い州は内陸部や南部に多い傾向があります。広い平野はもちろん、山間部や荒野、砂漠などの人口密度の低いエリアが広がっています。産業は、広い土地を活かした農業や工業が中心で、収入は青い州と比べると低水準ですが、住宅コストや生活コストも低いためバランスが取れています。
支持層の住むエリアの違いは、民主・共和両党の住宅政策にも差異を生み出しています。その違いを端的に表すと、民主党が「住宅の買い手や借り手を守る」ことを目指しているのに対し、共和党は「住宅を供給する企業を支援する」ことに力を注いでいます。
民主党の支持者の多くは人口密集地帯、つまりはすでに開発され尽くしているエリアに住んでいます。住宅供給量を増やそうにも、土地がありません。そのため、供給側(企業)のビジネスを奨励することよりも、需要側(買い手・借り手)を救済することに力を入れているのです。企業よりも労働者やマイノリティーなどの個人に寄り添ってきたリベラルな思想が、政策決定の最大の要因ではあるのでしょうが、土地の不足という解消しようのない問題も少なからず影響しているはずです。
共和党の方針はその裏返しです。まだまだ未利用地がある赤い州では、企業の開発を加速する政策を取ることで、需給バランスは改善できるでしょう。企業支援は、経済成長を優先する党の思想とも一致しています。
また、両党の「税」「規制」に対する考え方も、住宅価格の差を広げる要因になっています。
富の再分配を重んじる民主党が与党の青い州は、自由競争を重んじる共和党が舵を取る赤い州に比べ、税率が高い傾向にあります。これは、住宅にかかる固定資産税も同様です。そのため、住宅所有コストが大きくなり、青い州の不動産価格をさらに押し上げています。
環境保護や市民の権利を重んじる民主党は、住宅の省エネスペックや工事時の周辺への配慮などへの規制を厳しくする傾向があります。これにより、青い州では新築・メンテナンスのコストが大きくなりがちです。
立地によって決まる住宅価格傾向が党の政策に影響することもあれば、党の政策が住宅価格に影響を与えることもあり、鶏が先か卵が先かに近い感覚を覚えます。また、ここで挙げたのはあくまで全体的な傾向であり、青い州にも手頃な物件があり、赤い州にも高価な物件はあります。
どちらの党が優位になるかで、州内の物件価格が変わるとは断言できませんが、価格の動きを予想するヒントにはなるかもしれませんね。
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