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米国で「Fixer-Upper:リフォーム前提の中古住宅」の人気が急落

作成者: 海外不動産Insights 編集部|2025.06.09

【この記事のポイント(Insights)】

  • アメリカで人気だった「安く買って自分で直す」Fixer-Upper住宅の需要が、2025年に入り急速に落ち込んでいる。
  • 背景には、資材や人件費の高騰、金利上昇、若者の価値観の変化がある。
  • 一方で将来的に金利や市場環境が変われば、Fixer-Upperが再評価される可能性もある。

かつて「安く買って、自分で直して、価値を上げる」という夢のようなストーリーを描けた米国の中古住宅市場。中でも「Fixer-Upper(フィクサー・アッパー)」と呼ばれる“リフォーム前提”の物件は、DIY好きな層やコスト意識の高い若者から強い支持を集めてきました。

しかし2025年、そんなFixer-Upperの人気が急速にしぼんでいます。背景には、建築資材や労務費の高騰、金利の上昇、さらには「手間より効率」を選ぶ価値観の変化があるようです。この記事では、Fixer-Upper需要がなぜ減っているのか、そして今後どんな動きが予想されるのかを、初心者にもわかりやすく紹介していきます。

DIY文化に支えられていた”Fixer-Upper”

「Fixer-Upper(フィクサー・アッパー)」とは、住むには何らかの修繕が必要な中古住宅のこと。たとえば、築50年で水回りや壁紙が古く、屋根や配管の交換も必要な物件などがこれに該当します。家そのものに致命的な欠陥があるわけではないものの、そのままでは住みづらい、あるいは価値が低い状態にある物件です。より詳しく知りたい方は、以前掲載したこちらの記事もご参照ください:【アメリカ不動産用語解説】Vol.8「Fixer Upper(フィクサーアッパー)

こうした住宅が米国で人気を集めてきた背景には、いくつかの理由があります。

1つ目は、DIY文化。米国では、週末に家族や友人と一緒に壁を塗ったり、床を張り替えたりすることがひとつのライフスタイルとして定着していました。ホームセンターには工具や塗料、キッチンキャビネットまで一通りそろい、「自分で家を直すこと=自立した大人」という価値観が根付いていたのです。

2つ目は、価格の割安さ。修繕が必要という理由で、Fixer-Upper物件は周辺の相場より安く売られることが多く、裕福ではない層が家を手に入れるための選択肢として機能していました。

そして3つ目が、資産形成の手段としての魅力。たとえば、20万ドルで買って5万ドルをかけてリフォームし、最終的に30万ドルで売却できれば、転売益(キャピタルゲイン)が見込めます。あるいは、リフォーム後に貸し出して安定した家賃収入(インカムゲイン)を得るのも良いかもしれません。このように、資産価値を自らの手で高めることができるの点も大きな魅力です。

このようにFixer-Upperは、「時間と手間をかける代わりに、割安に資産を手に入れられる」という米国的価値観に支えられて人気を博してきたのです。

2025年になり、“Fixer-Upper” 需要が急減した理由

そんなFixer-Upper市場ですが、2025年現在、風向きが大きく変わりつつあります。Zillowが2024年に発表した調査によれば、「リフォーム済み」とラベリングされた物件は市場価格より平均3.7%高く売れる一方、「修繕が必要」な物件は約7.3%安く売られているとのこと。これは数年来で最大の価格差であり、Fixer-Upper人気が明らかに落ち込んでいる証拠です。

では、なぜここまで急速に需要が落ち込んだのでしょうか? 主な理由をいくつか紹介します。

① 建築資材や労務費の高騰

2020年代前半のパンデミック以降、世界的なサプライチェーンの混乱やインフレの影響で、米国でも建築資材の価格が大幅に上昇しました。木材や断熱材、水回りの部材などは数年前の1.5〜2倍に。さらに職人不足によって工賃も上昇し、リフォーム全体の費用が跳ね上がっています。

実際、米国での住宅リフォーム費用の中央値は、2020年の1.5万ドルから2023年には2.4万ドルへと急増しています。これでは、「安く買って安く直す」というFixer-Upperの魅力が半減してしまいます。

② 住宅ローン金利の上昇

2024年末から2025年にかけて、米国の住宅ローン金利は6〜7%台にまで上昇。金利が高くなると当然、借入のコストが重くなり、月々の返済負担も増加します。しかも、リフォームにかかる費用は原則として「現金払い」が前提で、ローンのように分割して返すことはできません。

これにより、「買ってすぐに手間なく入居できる物件」を選ぶ人が増え、「購入後にさらにコストと労力がかかる」Fixer-Upperが敬遠されているのです。

③ 若年層の価値観の変化

従来、Fixer-Upperを好んでいたのは、コスト意識の高い若者やファミリー層でした。しかし最近では、「週末をDIYに費やすより、他の時間の使い方を重視する」傾向が強まっています。特に共働き世帯では、時間の確保が難しく、「すぐに住める」「そのまま貸せる」住宅が圧倒的に支持されています。

また、SNSやインフルエンサーの影響もあり、「おしゃれに仕上げられたリノベ済み物件」に対する憧れが高まっているのも要因のひとつです。

④ プロのリノベーション業者の台頭

最近は、プロの不動産業者が仕入れたFixer-Upperを、徹底的にリノベーションして売りに出すケースが増えています。これにより、個人が一からリフォームするメリットが薄れ、「完成度の高いプロ仕上げの中古物件」に需要が集中するようになりました。

Zillowの分析でも、こうしたリノベ済み住宅は購入希望者から「お気に入り登録」される確率が26%高く、シェアも30%以上多いというデータがあります。Fixer-Upperというカテゴリ自体が、相対的に“古くて面倒な存在”になってしまっているのです。

Fixer-Upper人気は潰えたのか? それとも?

ここまで見ると、「Fixer-Upperはもう終わった」と思う方もいるかもしれません。しかし、市場全体の変化を長期的に見ると、人気再燃の可能性も十分にあります。

たとえば、今後金利が再び下がれば、リフォームローンの返済負担も軽くなり、Fixer-Upperへの投資妙味が戻ってくる可能性があります。また、現在はコスト高の影響で敬遠されがちですが、資材価格が落ち着けば割安感が再評価されるかもしれません。

さらに、エリアによってもFixer-Upperの意味合いは変わってきます。たとえば、成長著しい南部の都市や、空き家率の高い地域では、Fixer-Upperを安く仕入れて価値を高める余地がまだ残っているケースも。行政が空き家対策としてリノベーション支援を行うような自治体では、ローカルルール次第でむしろFixer-Upper投資がしやすくなる可能性すらあります。

加えて、環境意識の高まりを受けた「サステナブルDIY」ブームも、今後の再評価につながるかもしれません。太陽光パネルの設置や断熱性能の向上など、自分でエコリフォームを行う層も一定数存在しており、「環境に配慮しながら資産価値も高める」という視点からFixer-Upperを選ぶ人も出てくるでしょう。

つまり、「今はFixer-Upperの人気が落ちている」のは確かですが、それが永久に不人気になるというわけではありません。市況や社会の価値観が変われば、再び脚光を浴びる可能性は十分にあるのです。

 

2025年現在、その魅力は大きく揺らいでいるFixer-Upper。高騰するコスト、上昇する金利、変わる若年層のライフスタイル……。こうした要因が重なり、今は「すぐ住める」「すぐ貸せる」リノベ済み物件が支持される時代です。この傾向が今後も続くのか、揺り戻しがあるのか、その動向をじっくり見守っていきましょう。

 

 


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