2022年4月から新しい年金法がスタートします。間近に迫った年金法改正ですが、これによってご自身のライフプランに大きな影響が出ることに気付いてない方も多いのではないでしょうか?
今日の記事では年金法改正の背景と、4つの改正ポイントこの2つについて解説します。公的年金制度は国民の老後を支える柱です。年金制度を正しく理解して効率よく利用する人、しない人では老後生活に大きな差が出るでしょう。制度をどのように活用するか、今からしっかり計画をして磐石のリタイア生活を手に入れましょう。
今回の年金法改正の背景には「現状の制度のままでは年金制度が持たない」という事実があります。その最大の理由は少子高齢化です。三角形だった年齢別人口分布が逆三角形に近づいているのがわかると思います。
1990年時点では65歳以降の高齢者1人を20〜64歳の現役の世代5.1人で支えていました。高齢化の進行によりこの数字がどんどん小さくなり、2030年には高齢者1人を現役世代1.7人で支える、2060年には高齢者1人を1.2人で支えることになると予測されています。組体操の「人間ピラミッド」をイメージすれば、上に一人、下に1.2人という形がいかに歪か一目瞭然です。
若い世代に過度な負担がかかることを踏まえ、政府は平成16年に「マクロ経済スライド」と言う制度を導入しました。これは現役世代の人口や平均余命の変動に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。というと分かりにくいですが、少子高齢化が進む社会においては、単純に「年金カット」を意味します。この仕組みによって合法的に年金の給付額が抑えられます。
現在の日本の年金制度は財源(社会保険料、積立金、税金など)と給付額が均衡するような仕組みになっています。財源の減少に伴い給付額が減少するものの、制度そのものが破綻することはないよう設計されているのです。とはいえ、年金額が減っていくのであればそれは実質破綻しているのと同義ではないかという声もあり、そうした声に応えるべく行われたのが今回の改正です。
国として、年金給付額を減らさないようにするには、社会保険料を納める人を増やすことが重要です。女性や高齢者を含め、これまで働いていかなった人に働いてもらえば、保険料を納付してねくれ、年金受給開始を先延ばしでき、公的年金とは別に労働者自身で蓄財してもらえるからです。
こうした背景から、新しい年金制度は、今までいなかったタイプの労働者に対応するためにメンテナンスされました。改正のポイントは以下の4つです。
① 厚生年金、健康保険の対象者拡大
② 働きながらの年金受給ルールの見直し
③ 繰下げ受給が75歳まで可能
④ iDeCoの見直し
順番に見ていきます。
① 厚生年金、健康保険の対象者拡大
「パート」や「アルバイト」のような働き方をしている人の中で、被用者保険(会社員や公務員など、他者に雇用されている人が加入する保険)の対象になる人が出てきます。
主な条件は、以下のように拡大されます。
現状 | 拡大後 | |
労働時間 | 週20時間以上 | 変更なし |
賃金 | 月額8.8万円以上 | 変更なし |
勤務時間 | 1年以上の見込み | 2ヶ月以上の見込み |
身分 | 学生は除外 | 変更なし |
企業規模 | 従業員数500人以上 | 従業員数50人以上 |
厚生労働省保健局によると、これによって加入者が65万人ほど増えると見込まれています。
② 働きながらの年金受給ルールの見直し
60歳以降も働く会社員、公務員にメリットがある変更です。変更されたルールは以下の2つです。
②-ⅰ60-65歳の会社員公務員に関するルール
年金が受け取れるのは基本的に65歳を過ぎてからですが、一部条件を満たした人は60-65歳の間も年金が受け取れます。これが「特別支給の老齢厚生年金」です。
ただし、「特別支給の老齢厚生年金」受給者で、60歳以降も働き続けている人の場合、給与額によって年金が減額されます。これでは、「働くほど損」に感じる人も多いため、減額の基準が緩和されます。改正前は年金+給与が28万円以上の時に減額でしたが、改正後は年金+給与が47万円以上の時に減額となります。これにより、「長く働こう!」と思う人は増えるでしょう。
②-ⅱ65-70歳の会社員および公務員に関するルール
65-70歳の会社員や公務員は現状、厚生年金保険料を払いながら厚生年金を受け取っています。厚生年金は支払った保険料に応じて受け取れる金額が変わる仕組みです。では、65-70歳で支払った保険料は、受給額にいつ反映されるのでしょうか? 今回の改正はこの疑問に対し、明快かつ公平に回答するものです。
改正前:年金に反映されるのは70歳(65-70歳の間に仕事を辞めたらその時に反映)
改正後:年金に反映されるのは66〜69歳の間、毎年
要するに保険料を納めれば納めるほど、翌年から年金受給額が増えるということです。
※ちなみに年金法の改正とは別に「70歳就業確保法」が誕生します。今後企業は70歳まで就業機会を与えることが努力義務になっています。
③ 年金の受給時期を75歳まで繰り下げ可能
年金の受給額は、受給開始を遅らせれば遅らせるほど増えていくよう設計されています。1ヶ月受け取りを延期するごとに0.7%ずつ増えます。これまでは5年(60ヶ月)延期の42%増額が最大でしたが、2022年からは10年(120ヶ月)まで延期可能になり、その場合の増額幅は84%になります。
④ iDeCoの見直し
上記の3つのポイントは公的年金のルール改正についてお伝えしました。4つ目は私的年金であるiDeCo(個人型確定拠出年金)。改正のポイントは以下の2つです。
④-i加入可能年齢の拡大
改正前は60歳まででしたが、改正後は65歳までになりました。iDeCoは所得控除を受けながら資産運用ができる制度です。
④-ii iDeCo加入要件の緩和
iDeCoの対象者は今まで原則60歳未満で国民年金保険に入っている人でした。これはiDeCoの主な対象が、不安定な立場にある自営業者やフリーランスだったことを意味します。福利厚生がしっかりした大企業に務める人は、iDeCo加入のハードルが高かったのです。会社主導で規約を作り、労使で合意を得る必要がありました。従業員の資産形成に非協力的な会社では諦めるしかなく、iDeCoに入れないという状況を「iDeCoハラスメント」と表現する人もいました。
今回の改正では上記のような要件なしで、本人の意思だけでiDeCoに加入できるようになります。iDeCoは今後、ほぼ誰でも使える制度になっていくでしょう。目減りすると言われる年金の穴埋め策としては検討できそうですね。
年金法の改正ポイントを知っておくことは、老後の暮らしを有利に進めるヒントになるでしょう。とはいえ、年金のみに頼って生きていけるかといえば、それはまた別の問題。少子高齢化が止まらない限り、劇的に改善されることはないと言えます。株、債券、不動産など、個人でできる資産運用を取り入れながら、健全な老後生活への蓄えをつくりましょう。
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