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安い家ほどローンを借りにくい? 米住宅投資の出口戦略で見落とせない『買い手の資金調達力』

作成者: 海外不動産Insights 編集部|2026.10.28

【この記事のポイント(Insights)】

  • 米住宅の短期再販では、改修費などを差し引く前の売却差益が縮小している。
  • 改修済み住宅への評価は確認できるが、工事への支出が販売価格に反映される程度は改修内容によって異なる。
  • 現実的な再販価格を見積もり、買い手に合う改修と仕入れ額を決めることが、利益を残すための重要な条件となる。

 

購入価格の低い住宅は、投資額を抑えられるうえ、将来売るときにも買い手が見つかりやすそうに感じられます。しかし、米国では少額の住宅ローンを借りにくい問題があり、価格の手頃さが、そのまま購入のしやすさにつながるとは限りません。10月7日にrealtor.comが公表した調査も、この融資の壁に光を当てています。

自分は現金で買えても、次の買い手が資金を用意できるとは限らない。米住宅投資の出口を考えるうえで、押さえておきたい論点です。

少額なのに借りにくい。米住宅ローン市場の意外な壁

realtor.comの調査によると、当初借入額10万ドル以下の住宅ローンが実行件数に占める割合は、2013年と2014年には12%を超えていましたが、2025年と2026年の調査時点では3%未満に縮小しています。ただし、住宅価格が上昇すれば、同じような家を買うために必要な借入額も増えます。この割合の低下だけで、金融機関が小口融資を避けるようになったと結論づけるのは少し気が早いかもしれません。

それでも、利用条件を見ると気になる違いがあります。2026年の調査時点で、少額ローン利用者の頭金比率の中央値は34.4%と、全体の14.6%を大きく上回りました。個人の信用力を示すFICOスコアの平均も737で、全体の736とほぼ同等です。借りる金額は小さく、頭金を多く払い、信用スコアも差がない。普通に考えると、有利な条件で借入できそうです。しかし実際には、少額ローンの金利は全体より高い傾向があると報告されました。

ここで区別したいのが、住宅価格と借入額です。例えば、12万ドルの住宅を頭金3万ドルで購入するなら、借入額は9万ドルになり、realtor.comの調査では10万ドル以下のゾーンに含まれます。つまり少額融資の問題は、売値10万ドル以下の家だけの話ではありません。判断の起点は、その物件を買う人が実際にいくら借りる必要があるかです。

銀行にとっては、貸す金額が減っても仕事は減らない

貸す金額が小さければ、銀行にとっても負担は軽そうに思えます。ところが、融資には所得や信用履歴の確認、担保評価、契約書類の作成などが必要で、貸出後も返済管理が続きます。こうした仕事の費用は、融資額が半分になっても半分にはなりません。米住宅都市開発省(HUD)も2022年の報告で、融資実行と返済管理の固定費を、少額ローンの供給を妨げる主要な要因として挙げています。

買い手が審査に通るかどうか以前に、利用できる融資の選択肢が少ない場合もあります。ピュー慈善財団が2023年に公表した分析によると、2018〜2021年に住宅ローンを実行した5,000超の貸し手のうち、38%は、同調査で少額と定義した、2021年の物価水準で15万ドル未満の融資を1件も実行していませんでした。地域の住宅価格や事業方針の違いもあるため、すべての貸し手が小口の申請を拒んだという意味ではありません。それでも、購入希望者が使える商品を見つけられるかという問題があることは分かります。

さらに、融資額とは別に、物件の状態が壁になる場合もあります。例えば、FHA(連邦住宅局)が民間の住宅ローンを保険で支える制度では、担保となる住宅に安全性などの基準を設けています。HUDは、低価格住宅では修繕上の問題が融資の妨げになり得ると指摘しています。安い理由が建物の傷みにあるなら、買い手の信用力が十分でも、通常の融資を使いにくい可能性があります。

つまり、借りにくさには、本人の所得や信用履歴、金融機関の採算、物件の条件という異なる要因があります。この記事でいう「資金調達力」には、買い手個人の経済力に加え、その買い手が利用できる融資の選択肢も含まれます。

買い手のローンの壁は、売り手の出口にもつながる

この問題を、不動産を売却する投資家の側から考えてみましょう。ある住宅を欲しいと思い、月々の返済を負担できる世帯がいても、一括購入できる現金を持っているとは限りません。その世帯が必要な融資を利用できなければ、購入意欲はあっても成約にはつながりません。融資を必要とする層が市場に参加しにくくなることは、売り手にとって、購入候補者の幅が狭まることを意味します。

実際、ピュー研究所の2018〜2021年の米国1,440郡を対象とした分析では、住宅ローンを利用した購入の割合は、15万ドル未満の住宅で26%、それ以上の住宅では71%でした。金額は原則2021年の物価水準に調整されています。この差には住宅の状態や現金取引への選好なども影響しており、残りの購入者が全員ローンを断られたということではありません。それでも、価格帯によって購入資金の用意の仕方が大きく異なることは、出口を考える手掛かりになります。

融資を必要とする購入者を取り込みにくく、現金購入者同士の競争も弱い場合には、売り手が価格条件を調整する必要が出てくる可能性があります。特に早い現金化を優先するなら、限られた買い手が受け入れる価格を検討することになります。一方、現金購入者の需要が強ければ、価格を巡る競争が生まれることも考えられます。これは融資の制約から考えられる経路であり、低価格住宅なら一律に値引きが必要になるという意味ではありません。

価格条件との関係を指摘する研究もあります。チア、アンブローズ両氏による2025年の米金融学会の学会発表要旨では、金融危機後の少額ローン供給の減少が、現金取引とローンを利用した取引の価格差の拡大に寄与したと報告されています。これは学会要旨に基づく研究段階の知見であり、論文本文まで確認できたものではありません。融資の利用しやすさと住宅の価格形成の関係を考える補助的な材料といえます。

ただし、これをもって「少額ローンが付きにくい家ほど売却期間が長い」と断定することはできません。購入候補者が減ったときの影響は、売却まで待つ時間に表れることも、受け入れる価格に表れることも考えられます。出口戦略では、売れるかどうかに加えて、どのような条件なら売れるかを考える必要があります。

それでも「安い家は売れない」とは限らない

低価格住宅の市場には、売買対象の住宅への購入ローンを使わず、現金で決済する投資家などもいます。そうした買い手の需要が十分にあれば、一般世帯向けローンの選択肢が少なくても、売買は成立します。現金取引は、売買対象の住宅にローンを付ける手続きが不要な分、売り手にとって魅力のある選択肢にもなります。

過去の研究には、低価格帯で売買が活発だったことを示す結果もあります。アーバン研究所とシカゴ連銀の2018年の研究では、2015年の全米の年間売買件数を持家ストックで割った比率は、7万ドル以下の住宅が7.4%、7万ドル超15万ドル以下の住宅が5.5%でした。研究者は、低価格住宅を購入して改修・賃貸・転売する投資家などの存在を、背景の一つとして挙げています。古いデータであり、個別物件の売却日数を示すものでもありませんが、ローン利用が少ない市場でも売買は動き得ることを示しています。

少額融資が一律に利用できないわけでもありません。例えば、キーバンクの「Key Community Mortgage」は最低融資額を設けていません。ただし、自己居住物件向けで、対象地域や所得、他の不動産の保有などに条件があります。商品が存在することと、誰でも使えることは別ですが、同じ価格帯でも地域や買い手の条件によって、資金調達の選択肢は変わるわけです。

したがって、安い住宅を避ければよい、という結論にはなりません。実需の購入者に売るのか、賃貸運用する投資家に売るのか。その地域で、想定する相手がどの程度の価格なら購入できるのか。出口を具体的に描けるかどうかが、物件評価の重要な要素になります。

購入前に確認したい「次の買い手」の姿

投資家の立場でまず確認したいのは、周辺で成約している同程度の住宅を、どのような人が買っているかです。自宅として購入する世帯と、家賃収入を目的とする投資家では、価格を判断する基準も資金調達の方法も異なります。近隣の成約価格だけでなく、現金・ローンの利用状況や販売期間、値下げの履歴を合わせて見ると、売却先と条件を考えやすくなります。

次に、想定する購入者が利用できる融資を確認します。現地の仲介会社や融資担当者に、その地域と価格帯で扱われている商品、最低融資額、頭金、自己居住の条件、物件の基準などを尋ねることが出発点です。購入者自身が住むためのローンと、投資用ローンでは条件が違うため、単に「ローンが使える」という説明だけでは十分ではありません。また、今ある商品が将来も同じ条件で提供されるとは限らず、売却が近づいた段階での再確認も必要です。

物件の点検や修繕も、出口と結び付けて考えたいところです。入居者を確保するための改修に加え、将来の購入者が融資を受ける際に問題になりそうな箇所がないかを確認します。ただし、建物を直せば、金融機関が少額融資を扱う際の採算まで改善するわけではありません。何が融資の壁になっているかを見極めることが先になります。

最後に、希望価格で買う相手を待つ場合と、早期売却のために価格を調整する場合の両方で、投資収支を考えておくとよいでしょう。売却までの賃料収入だけでなく、修繕、固定資産税、保険などの負担も踏まえれば、売値と待ち時間のどちらを優先できるかが見えてきます。

米国では、2026年7月に成立した住宅関連法に、少額住宅ローンへのアクセスを改善する試行制度をHUDが設けられる規定も盛り込まれました。ただし、制度を設ける権限と、実際に利用できる商品の拡大は別です。今後は、支援がどの地域でどのような融資につながるかにも注目したいところです。

購入価格が安いことは、投資に必要な資金を抑えられるという魅力です。その魅力を評価する際に、「次の買い手は誰で、どのように購入資金を用意するのか」を加える。自分の買いやすさと、将来の買い手の買いやすさを分けて考えることが、米住宅投資の出口戦略を具体的にしてくれます。

 

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