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学生街から空室街へ?留学生受け入れ停止の先に起こり得る不動産市場崩壊

作成者: 海外不動産Insights 編集部|2025.06.25

【この記事のポイント(Insights)】

  • 留学生締め出しは教育都市の需要を急落させ、家賃と地価を連鎖的に押し下げ、深刻な空室リスクを招く。
  • 学生向け住宅の利回り悪化は投資家の撤退を誘発し、都市部から郊外への資金シフトを加速させる。
  • 空室物件の短期賃貸化や地元住民の住宅取得機会拡大など、副作用的な追い風も同時に生まれる。

トランプ大統領が発表したハーバード大学への留学生受け入れ停止命令は、留学生の生活を脅かすショッキングなニュースとして日本でも話題になっています。

この件は実は、不動産業界関係者にとっても無視できない重大なニュースです。というのも、名門大学に集う留学生たちは、学業だけでなく住宅需要の担い手として地域経済を支えてきたからです。この記事では、留学生排除が教育都市の不動産に与える影響と、その先に広がる可能性のあるディストピア的な未来を、初心者にもわかりやすく読み解きます。

ハーバード大に留学生受け入れ停止命令。打撃を受けるのは、学生だけじゃない。

トランプ大統領が発した大統領布告が全米に波紋を広げています。その対象は、なんとハーバード大学。国土安全保障省(DHS)はハーバードのSEVP(学生・交流訪問者プログラム)認定を即時取り消し、新規の留学生ビザ発給を停止するというのです。これにより、すでに在籍している約6,800人の留学生も国外退去や他大学への転学を迫られるという異例の事態に。

この命令が突如発表されたことで、ハーバードの学生はもちろん、大学周辺の不動産市場にも衝撃が走りました。とりわけ、学生向けに賃貸物件を提供していたオーナーにとっては、家賃収入の柱が突然失われる大打撃です。年間契約を前提に運用していた物件が、一夜にして空室に変わるリスクが現実のものとなったのです。

しかも、このような対応がハーバードだけにとどまらない可能性があることが、さらに状況を不安定にしています。MITやコロンビア大学、UCバークレーなど、リベラル色の強い名門大学も同様のリスクを抱えており、大学街を中心とした不動産市場全体に影を落としつつあります。

留学生が支えてきた「教育都市」の不動産市場

米国において、大学のある都市は"教育都市"として独自の経済圏を形成してきました。ボストン、バークレー、ニューヘイブンなどがその代表格です。こうした街では、学生、教職員、研究者を中心とした安定した住宅需要があり、不動産価格も高止まりしやすい傾向にあります。

特に、留学生の存在はその需要の中核を担ってきました。多くの州立大学では、学費収入の安定化や財政強化を目的に、積極的に留学生を受け入れてきた背景があります。その結果、学生寮だけでは足りず、大学周辺には学生向けのアパートや集合住宅が立ち並ぶようになりました。

留学生は一般的に、安定した収入や仕送りがあるケースが多く、オーナーにとっては理想的な借り手でした。さらに、一定のサイクルで入れ替わるため、空室リスクが比較的低く、投資先としても魅力的だったのです。

つまり、留学生は教育都市の不動産市場を魅力的にしてきたキープレイヤーといえ、彼らを排除することはエリア全体の価値毀損につながりかねないのです。

賃貸が沈めば、売買も無傷ではいられない

不動産市場への具体的な影響について考察してみましょう。

短期的には、学生向け物件の空室増加による家賃下落が顕著になります。特に新築の集合住宅や、家具付きの高級賃貸物件は影響を受けやすく、オーナーは値下げやインセンティブの提供を余儀なくされるでしょう。

しかし問題はそれだけではありません。家賃収入の低下は、物件の利回り悪化を意味します。投資用不動産の価値は、基本的に収益性(=家賃)をもとに評価されるため、家賃が下がれば売却価格も自然と下がっていきます。特に借入比率の高い投資家にとっては、ローン返済計画にも影響が及びかねません。

中長期的には、不動産投資市場そのものが冷え込むリスクもあります。都市型収益物件の代表格であった"学生向け住宅"が、もはや安定収入の源ではないと見なされれば、資金は郊外や他のアセットクラスに流れていくでしょう。教育都市における投資の魅力は、徐々に色あせていくかもしれません。

誰かの損は、別の誰かの得? 留学生排除が追い風になるかもしれない人々

とはいえ、すべてのプレイヤーが打撃を受けるわけではありません。状況を逆手に取り、恩恵を受ける層も確かに存在します。

たとえば、郊外や地方都市で住宅開発を手がける業者にとっては、チャンス到来です。都市部の収益物件に対する投資魅力が薄れる中、より安定した需要が見込めるエリアに資金が流れやすくなります。実際、2020年のコロナ禍では、都市部よりも地方の住宅価格が安定しやすかったというデータもあります。

また、短期賃貸市場を狙うオペレーターにとっても好機です。空室になった学生向け物件を、Airbnbなどの短期賃貸用に転用すれば、観光需要や出張族など別のマーケットで収益を確保できる可能性があります。ただし、規制とのバランスは要注意です。

さらに、長らく家賃の高さに悩まされていた地元の住民にとっては、歓迎すべき変化かもしれません。人気エリアの空室が増え、家賃相場が下がれば、これまで手が届かなかったエリアに住めるチャンスが生まれます。特に若年層や低中所得者層にとっては、住環境の選択肢が広がることになるでしょう。

もちろん、これはあくまで副次的な現象であり、教育都市の地盤沈下が前提となるため、単純に「良いこと」とは言い切れません。それでも、市場における"勝者と敗者"が常に交代していくのが不動産の本質でもあります。

 

留学生排除という政治的決定が、不動産市場という経済の現場にまで影響を及ぼしつつある2025年。表面化しているのは氷山の一角に過ぎないかもしれません。今後の不動産市場を見極める上でも、こうした"構造の変化"に目を向けることが、投資家としてのリスク管理につながるはずです。

 


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