【この記事のポイント(Insights)】
住宅ローン金利の高騰により勢いが陰り気味のアメリカの住宅市場ですが、そんな状況を逆手に取って大きな利益を得ている人がいます。彼らが行っていることを端的に言い表すと、「パンデミック下の超低金利ローンの譲渡」です。ローン、つまりは借金を譲って欲しがる人がいるというと不思議な感覚ですが、金利が高騰した今、かつての低金利はお金を出しても買いたいような条件なのです。
超低金利ローンを活かした儲け方で最もシンプルなのは、ローン込みで物件を売却することです。ほんの2年ほど前まで3%前後だった30年固定ローン金利は、現在は倍以上の約7%ほどで推移しています。そのため、いま普通の住宅をローンを組んで買おうとすると利払い金額が莫大になるわけですが、物件リストのなかに住宅ローン3.0%の住宅が含まれていたらどうでしょう? 価格が多少高くとも、最終的な支払額は大きく圧縮できるため、人気が殺到するのも理解できるのではないでしょうか?
事実、住宅売買プラットフォームでは、物件紹介文の1行目に低金利ローンごと譲渡可能であることを書く手法が流行りつつあり、そうした物件は売却までの期間が他より早く、売却額も高くなる傾向にあるそうです。
とはいえ、この手法は低金利ローンの借り手全員に可能なわけではありません。というのも、アメリカの住宅ローンの多くは直接譲渡することができないからです。譲渡できず、買い手が借り直しをする必要がある場合は、現在の金利が適用されるため買い手のメリットがなくなってしまうのです。
この手法が通用するのは、連邦住宅管理局、退役軍人省、農務省などの政府保証型のローンの場合です。これらのローンは、信用スコアや軍役経験、農業従事などの特定の資格を満たした人しか借り入れできませんが、そのままの条件で名義変更が可能です。ただし、譲渡先の人物(買い手)も、同様の資格を満たしている必要があります。退役軍人省からのローンであれば、買い手も軍役を経験している必要があるのです。
政府保証型ローンは、はじめて住宅ローンを組む人から特に人気で、全米の未返済ローン残高のうち4分の1を占めると言われています。そのうち、超低金利時代にローンを組んだ人はそれなりにいるはずですが、条件を満たす買い手を見つけるのは簡単ではありません。
この点に目を付け商機を見出す人もいます。コンサルティング会社Assumption Solutionsは、売り手から買い手への住宅ローンの譲渡を試みる不動産業者に対する支援を専門にしています。彼らは、1回の売買につき1,100ドルの手数料でローン譲渡の手続きを代行します。1,100ドルの経費を使っても、売却金額上昇による不動産会社の利益のほうが大きいのか、このビジネスにはそれなりの引き合いがあるようです。
2年前と言えば、低金利であったとともに、住宅価格がほぼピークを迎えたタイミングでした。そのため、「高掴みしてしまった」と家を買ったことを後悔している人もいるようですが、低金利のローンを付けて売りに出せばキャピタルゲインを生み出すことは十分に可能です。
不動産相場の上下だけでなく、こうした周辺条件も加味されて物件価格が変動するのは不動産投資のおもしろさの1つです。制度や仕組みをうまく使う手段を考えることも、上手な資産運用のポイントかもしれませんね。
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