【この記事のポイント(Insights)】
アメリカの不動産価格が高値で保たれている最大の要因は供給不足ですが、需要面にも好材料があります。最大人口を誇るミレニアル世代が、ちょうど住宅購入年齢に差し掛かったことです。
ミレニアル世代は1981年から1997年に生まれた世代、26歳から42歳の人々を指します。2015年にベビーブーマー世代の人口を上回り、アメリカで最大の世代になりました。
住宅購入年齢は、NAR(全米リアルター協会)が発表するレポート「Profile of Home Buyers and Sellers:住宅の買い手と売り手の人物像」を参照するのが一般的です。典型的なファーストタイムバイヤー(はじめて家を購入する人)の年齢は年々高まっていますが、2023年版レポートでは35歳とされています。まさにミレニアル世代ど真ん中の年齢で、この世代の購入需要はこれからまだ伸びるのは間違いありません。
ミレニアル世代のなかには、家を所有しない主義の人や、家を購入する資金がない人たちが上の世代の人々よりも多くいますが、エコノミストたちはそうした人も含めて、住宅需要増に貢献するとしています。結局は住む場所が必要なため、本人が直接買うか、代わりに別のオーナーが買って貸すかの違いでしかないからです。
また、この世代は、絶対的な人口が多いだけでなく、世帯数の増加率も高いのが特徴です。世帯数は、親元からの独立や、単身赴任や離婚などによる別居によって増加します。ライフイベントの多い20~40代は世帯数が増えやすいのです。
Redfinが公開しているレポートによると、ここ数年、住宅購入シェアの主役はミレニアル世代で、ローンで購入された住宅の約60%を占めていると言います。
さらに、人口が多いということは、選挙結果に影響を与えられるということでもあるため、今後の政治が彼ら世代に有利に働く可能性が大いにあります。住宅購入への補助金やローン金利の抑制などが強化されるかもしれません。そうなれば、ミレニアル世代からの住宅需要は今以上に高まります。
外交や軍事技術、医療が発展したこの時代、特定の世代の人口だけが激減するような現象はまず起こり得ません。国際情勢を考えても、米国から急激な人口流出が起こることも考えにくいことです。今後10年以上、アメリカにおいてミレニアル世代が多数を占める状態が続くことは、ほぼ確定していると言っていいでしょう。
予測し難い要素が複雑に絡む不動産市場のなかで、ミレニアル世代の旺盛な住宅需要は数少ない確定要素。ぜひ有効に活かしたいものですね。
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