【この記事のポイント(Insights)】
不動産資産管理ソフトを世界中で提供するYardi Systems社が運営するメディア『Storage Cafe』が、全米の都市の不動産開発の活発さを調査した結果を記事にしています。
調査は、全米の100の大都市における、過去10年間(2013~2022年)の新築建設の数と規模を分析したものです。具体的には、一戸建て住宅や集合住宅の建築許可件数と、工場やオフィス、小売、倉庫などの新築面積とが調査対象に含まれています。
売買市場は停滞しているとの報道が続く昨今ですが、記事によると開発は依然として活発なようです。特に、商業用とでは工場と倉庫、住宅では集合住宅の新築件数が増加傾向にあります。例えば、一戸建ての建築許可件数は2013年の620,802件から2022年の975,584件に約1.57倍だったのに対し、集合住宅の建築許可件数は同期間で370,020件から689,504件へと約1.86倍に増加しています。
この傾向は全米に共通するものですが、地域差はあります。同調査によると、過去10年の開発が活発だった都市のうち上位10都市すべてをサンベルトエリア(南部および南西部)が占めており、さらにトップ5はすべてテキサス州の都市でした。
上位10都市に数えられたのは以下の都市です。
1位 - テキサス州ヒューストン
2位 - テキサス州サンアントニオ
3位 - テキサス州オースティン
4位 - テキサス州フォートワース
5位 - テキサス州ダラス
6位 - アリゾナ州フェニックス
7位 - フロリダ州ジャクソンビル
8位 - ネバダ州ラスベガス
9位 - コロラド州デンバー
10位 - オクラホマ州オクラホマシティ
サンベルト地域以外ではニューヨーク州ニューヨーク(14位)が最上位で、範囲を20位まで広げてもイリノイ州シカゴ(16位)、ネブラスカ州オマハ(18位)、インディアナ州インディアナポリス(19位)、オハイオ州コロンバス(20位)をあわせた5都市に留まりました。
サンベルトエリアでの開発が盛んな理由は、沿岸部に比べると土地に余裕があり地価も安いこと、それに目を付けた企業が工場や物流拠点などの移転先に選んだこと、製造業の理ショア(国内回帰)により産業不動産のニーズが高まったことなどが挙げられます。
上位を独占したテキサス州は、まさに産業ニーズによって開発が加速した地域です。
1位に輝いたヒューストンは、NASAのジョンソン宇宙センターをはじめえ多数の宇宙開発拠点を構える米国の航空宇宙産業の中心地であり、スペースシティと別称されます。ロケット打ち上げの印象が強い宇宙産業ですが、衛生を活用した通信サービスや測位サービス(GPS等)などさまざまなサービスを支えており、市場規模は世界的に右肩上がりです。この産業に従事する人々の数も増えているため、住宅需要も安定して伸びています。ヒューストンは、過去10年間で一戸建て住宅の建築許可件数が約55,600戸で全米1位でした。また、同期間に集合住宅の建築許可も約9万戸分が発行されました。
3位にランクインしたオースティンは、サンベルト地域の都市としては集合住宅建築許可数が最多で、約9万9,000件を記録しました。通常、集合住宅は土地が少ない沿岸部で増加傾向が強いとされています。実際、オースティンの記録を上回ったのはニューヨークやロサンゼルスなどの人口密集エリアでした。この結果は、オースティンが南部でも特にテクノロジーの発達した都市だからだと言われています。多忙な研究者や技術者が、都心の利便性と通勤時間の短縮を求めた結果、集合住宅のニーズが高まったのでしょう。
不動産開発において、目覚ましい発展を見せるテキサス州。ここからの10年、トレンドを維持し続けるのか要注目です。
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