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ロサンゼルスの山火事は不動産市場に何をもたらすか? 2018年に同州で発生した「キャンプ・ファイア」との決定的な差異

作成者: 海外不動産Insights 編集部|2025.01.22

【この記事のポイント(Insights)】

  • 2025年1月にロサンゼルス近郊で発生した山火事は、パシフィック・パリセーズなどの高級住宅街に広がり、推定520億ドル以上の経済損失をもたらした。
  • 富裕層が多いロサンゼルスでは、経済力や保険の利用により、2018年のキャンプファイヤと比べて復興が速いという予想が主流。
  • ただし楽観視は禁物で、労働力不足、インフラ復旧の遅れ、保険金支払いの遅延が発生した場合、復興が遅延する可能性も懸念される。

2025年1月、カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した大規模な山火事は、主に富裕層が多く住む高級住宅街を中心に広がり、多大な経済損失をもたらしています。本記事では、2018年に同州で発生した大規模な山火事「キャンプ・ファイア」との比較を通じて、被災地の経済力や住宅価格の差が復興速度や不動産市場に与える影響を分析します。

2025年、ロサンゼルスで発生中の山火事の概要

2025年1月にロサンゼルス近郊で発生した山火事は、高級住宅街として知られるパシフィック・パリセーズや、学者やクリエイティブクラスが多く住むアルタデナを中心に広がり、甚大な被害をもたらしました。乾燥した気候と局地的な強風(サンタアナ風)が火災を急速に拡大させ、多くの住民が避難を余儀なくされました。


現在、火災の多くは鎮火していますが、一部の地域では依然として炎がくすぶっています。消防当局は完全な鎮火には数週間を要する可能性があると発表しており、住民は帰宅を許可されていない地域もあります。


暫定的な報告によると、少なくとも2,000棟以上の住宅が焼失し、そのうちの多くが高価な不動産です。被災地域の住宅価値は、1軒あたり数百万ドルに達する場合もあり、総額での経済損失は推定520億–570億ドル、保険金総額は200億ドル以上に上る可能性があります。

2018年に発生したキャンプ・ファイアとは?

本件と比較して語られるのが、2018年11月にカリフォルニア州北部のパラダイス市を中心に発生した、同州史上最も壊滅的な山火事とされる「キャンプ・ファイア」です。極度の乾燥状態と強風により火災が急速に拡大し、約18,000棟の建物が焼失、85名の犠牲者を出しました。


キャンプ・ファイアによってパラダイス市の住宅のほぼ全域が焼失し、多大な経済損失をもたらしました。保険金総額はインフレ調整済みで125億ドル程度と推定されています。


このように、ロスの山火事とキャンプ・ファイアは、乾燥した気候を原因とすることと、多くの住民が避難を強いられたという点が共通しています。パラダイス市では、5年が経過した2023年11月時点でも、人口は火災前の約26,000人の3分の1程度の9,000人に留まり、まだまだ復興途中です。このことから、ロスでも復興に長い時間を要するのではと考える方もいるかもしれません。しかし、2件の火災の間には決定的な違いがあり、ロスの復興はよりスピーディーに進むのではと言われています。

ロスの火災とキャンプ・ファイアの差異

その違いとは、住民の経済力です。キャンプ・ファイアが発生したパラダイス市はカリフォルニア州のなかでも郊外に位置し、火災前の住宅価格は20万~30万ドルと全米平均を下回るエリアです。そのため住民の多くは引退後の高齢者や低所得の労働者階級で、保険未加入や補償額が十分でないケースも珍しくありませんでした。住宅再建の予算がない住民がほとんどだったため、大幅に遅れる要因となったのです。一方で、ロサンゼルス近郊の被災地では、富裕層や中流–上流階級が多く、自己資金や保険を活用して迅速に住宅再建を進めることが可能です。


また、パシフィック・パリセーズやアルタデナの住宅価格は高く、再建された住宅が高値で取引される可能性があります。このため、開発業者や投資家にとっても復興のインセンティブが大きく、再建が進むと考えられます。


とはいえ、ロスでも復興が遅れる懸念はあります。特にリスクが高いシナリオを3つ紹介します。


ロス山火事復興が遅れるシナリオ1.労働力不足
ロサンゼルス郊外では復興需要が集中し、建設労働者の不足が発生する可能性があります。他の被災地域との競争や、カリフォルニア州全体の建設需要増加が影響します。


ロス山火事復興が遅れるシナリオ2.インフラ復旧の遅れ
ロサンゼルスは都市インフラが複雑であり、電力網や通信、道路の修復に時間がかかることが復興を遅らせる要因となる可能性があります。


ロス山火事復興が遅れるシナリオ3.保険金支払いの遅延
高額な保険請求が殺到することで、保険会社の支払いが遅延し、被災者が再建資金を確保できないケースが懸念されます。この問題は、2018年のキャンプファイヤでも発生していました。

ロサンゼルスの2025年の山火事は、被災地域の経済力や住宅価格の高さから、復興が比較的速く進むと予想されます。しかし、労働力不足やインフラ復旧の遅れ、保険金払いの遅延といった要因が発生すれば、復興に影響を与える可能性があります。これらの課題に対応するためには、地域全体での調整と効率的な復興計画が求められます。

 

 

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