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トランプ政権では建設コストがさらに上昇!? キーとなるのは関税政策と移民政策

作成者: 海外不動産Insights 編集部|2025.01.05

【この記事のポイント(Insights)】

  • 2020年から2023年に建設コストは約10%上昇。資材価格高騰、労務費増加、需要供給のミスマッチなどを理由に現在も高騰が続く。
  • トランプが宣言している一律高関税は建設資材価格を押し上げ、特に鉄鋼や木材のコストが急増。これにより建設業界の短期コストは増加すると予想される。
  • トランプが掲げる移民制限政策は労働力不足を加速させる恐れあり。賃金上昇と工期遅延により、長期的に建設業界全体が弱る可能性も。

 

次期トランプ政権が提案する政策のなかには、建設コストに大きな影響を及ぼし得るものが含まれています。本記事では、これまでの建設コスト上昇の背景を振り返りつつ、関税政策と移民政策という2つの視点から、短期・長期の影響を考察します。

高騰中の建設コスト。改めて振り返る上昇要因

米国の建設コストは、近年著しい上昇を見せています。2020年から2023年にかけて、建設コストは約10%上昇したとされ、業界全体に大きな影響を及ぼしています。この上昇の背景には、資材価格の高騰や労務費の上昇、さらには需要と供給のミスマッチが存在しています。建設コスト上昇は、主に以下の要因からもたらされています。

資材価格の上昇:パンデミックによる生産力減やサプライチェーンの乱れにより、鉄鋼や木材、コンクリートといった建設資材の価格は軒並み上昇。現在も高い水準に留まっています。特に木材価格は2021年に一時的に300%以上の急騰を記録しました。鉄鋼価格も供給不足や関税政策の影響を受け、大幅に値上がりしました。これにより、住宅や商業施設の建設コストが全般的に押し上げられる結果となっています。
さらに元を辿ると、前トランプ政権が導入した(そしてバイデン政権もそのまま維持した)鉄鋼やアルミニウムへの関税も資材コスト上昇の一因になっています。

労務費の増加:建設業界の労働者賃金は、2020年から2023年にかけて約12%上昇しており、熟練労働者不足がその背景にあります。労働者確保の競争が激化し、特に経験豊富な職人や建設技術者の賃金が上昇しています。また、労働市場の逼迫により、新規参入者への教育やトレーニングコストも増加しています。

需要増加と供給不足:パンデミックによる郊外移住の増加や低金利政策の影響で、住宅需要が急増。一方で、建設のペースは追いついていません。都市部から郊外への移動が進んだことで、土地価格も高騰し、これが全体の建設コストに影響しています。

このように、建設コストはすでに高い水準にあります。次期トランプ政権が掲げる政策は、このコストにどんな影響を与えるのでしょうか?

短期視点のコスト上昇要因:関税政策が、資材コストをますます高騰させる

バイデン政権は同盟国との協調を重視し、貿易戦争の激化を避ける戦略を採用していました。これに対し、トランプ政権の関税政策は、一律10%の「ユニバーサル関税」や、中国、カナダ、メキシコなどの国々からの輸入品に対する大幅な関税引き上げを計画しています。

バイデン政権の関税政策の特徴:

  • 特定分野(ハイテク製品や半導体)に限定した規制を採用。
  • 国際協力を重視し、同盟国と協調する柔軟な貿易政策。
  • 資材供給の安定を優先し、国内市場への負担軽減を目指す。

トランプ政権の関税政策の特徴:

  • 輸入資材全般に対して一律の高関税を導入。
  • 国内製造業の保護を目的として鉄鋼やアルミニウム、木材などへの追加関税を実施。
  • アメリカ第一主義に基づき、同盟国を含めた広範な輸入品に課税。

建設資材コストへの影響

この関税政策の差異は、鉄鋼やアルミニウムなど、建設に欠かせない資材の価格がさらに高騰する可能性があります。関税の影響は施行後すぐに現れるため、短期間で建設コスト全体を押し上げることが予測されます。

長期視点のコスト上昇要因:移民政策が、人件費上昇&人材不足を招く

バイデン政権が移民受け入れの緩和を目指し、DACAプログラムの維持や合法移民の増加を推進したのに対し、トランプ政権の移民政策は、不法移民の取り締まり強化と合法移民プログラムの制限を特徴とします。

バイデン政権の移民政策の特徴

  • 不法移民への保護措置(DACAプログラム)
  • 合法移民プログラムの拡大

トランプ政権の移民政策の特徴

  • 国境警備の強化と不法移民排除
  • H-2Bビザ(季節労働者ビザ)の制限

この差は、労働力供給と人件費に大きな影響を及ぼす可能性があります。建設業界は移民労働力に大きく依存しているからです。労働需要が供給を上回り、賃金が急騰。人件費が高騰します。さらに、労働力不足により工期が延びるリスクもあります。プロジェクトの遅延は、建設業界のキャッシュフローを悪化させ、長期視点で産業を弱らせる可能性があります。そうなれば、住宅供給不足と価格高騰の傾向は今以上の水準になるでしょう。

 

このように、次期トランプ政権が提案する関税政策と移民政策は、建設コストに対して短期的にも長期的にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。短期的には、関税政策による資材コストの高騰。長期的には、移民政策による労務費上昇と労働力不足。

建設業界では、これらの政策転換に備えて新たな調達戦略や労働力確保のための計画を急いでいます。不動産業界や不動産投資家も他人事ではありません。政策が実施された場合の具体的な影響を注視し、柔軟かつ迅速に対応できるよう備えましょう。

 

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