【この記事のポイント(Insights)】
住宅ローン金利高が続く中でも、住宅価格は下落していません。これは主に、需要に対し供給が不足しているためで、特に若い世代は家を購入したいのに手の届く価格帯の家がないという状況に陥っています。
こうした状況について、バークレイズのエコノミストであるジョナサン・ミラー氏は、"Blame the boomers(ベビーブーマーのせいだ)"と題したレポートを公開。ベビーブーマー世代の高齢化したことが、住宅需要の増加の主な要因だと指摘しています。
ベビーブーマー世代とは、戦後まもない1946年から1964年にかけて生まれた、人口の多い世代を指します。日本の団塊の世代よりも広い年代を含みます。その人口の多さから、国内消費を牽引してきた存在で、彼らが大人になるタイミングで住宅市場は大いに盛り上がりました。そんなベビーブーマーたちも高齢化し、人口は少しずつ減り始めています。にもかかわらず、住宅需要が増えているとはどういうことなのでしょうか?
実は意外なことに、ある世代における「世帯主」が最も増える年齢は、60代前半頃だということがデータから分かっています。世帯の定義は”住居および生計をともにする集団”ですから、世帯主が増えることは住居の需要が増えることと同義です。
人が世帯主になるというと、若者が卒業や就職を期に親元を離れるタイミングを想像する方が多いでしょう。実際、25歳前後から世帯主が急増すると言います。しかし、単身者同紙が結婚すれば世帯主は減少するため、増加のピークはこの年齢ではありません。
高齢者になってから世帯主になる代表的なきっかけは離婚や別居です。死亡によって世帯が減りはじめますが、死亡した世帯主が結婚している場合は、残された配偶者が世帯主になるため、世帯数は減りません。子どもたちがすでに独立していて、かつ夫婦が共に亡くなってはじめて、世帯は消滅します。
つまり世帯数が増えるか減るかは、単身者の死亡や夫婦両方の死亡によって世帯が減る数と、別居により世帯主が増える数とを足し引きして決まるのです。このことを考慮すると、世帯主が最も増える年齢が定年退職を少し過ぎたあたりになることにも納得が行くのではないでしょうか?
ベビーブーマー世代の高齢化はすでにはじまっていますが、彼らのうち最も若い1964年生まれの人々はまだ59歳です。彼らの世帯数ピークはおそらくまだ先になるはずですから、アメリカ全体としての世帯数はまだしばらく増加していくと予想できます。
これはつまり、住宅需要がますます増える可能性が高いということを意味します。一方で供給は、新築物件が増加することはあっても、中古住宅は住宅ローン金利が下がるまでは急増することはないと考えられます。現在、家を所有している人たちは、有利な条件で住み替えられる状況になるまでは今の家を手放さないからです。
需要は人口動態から見てしばらく根強い。供給は金利政策次第ですが、利下げがはじまるにしても、段階的に下げる可能性が濃厚。そんな状況から、ミラー氏は住宅価格は、ペースが鈍化するかもしれなないものの上昇し続けるだろうと結論付けています。
あくまで一人のエコノミストの意見ですから、鵜呑みにするのは危険ですが、人口動態から市場動向を予想する手法は参考になる部分も大きいのではないでしょうか?
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