【この記事のポイント(Insights)】
アメリカの不動産価格の高騰をバブルだと指摘する声が定期的に上がりますが、UBSのレポートによると、日本は他国よりも国内の心配をした方が良さそうです。
UBSが毎年発表する世界不動産バブル指数(UBS Global Real Estate Bubble Index)の2023年版によると、東京のバブル指数は調査対象の世界25都市のなかで2番目に高い1.65でした。指数の目安は、-0.5から0.5までの都市が不動産の価値に対する価格が適正な範囲で、0.5以上1.5未満が過大評価、1.5以上になるとバブル水域にあるとされています。東京の1.65という数字は、紛れもないバブル状態にあることを示しています。
このレポートは特定の国や地域に忖度しない、公正な調査として知られています。その証拠というわけではありませんが、東京を唯一上回るバブル指数1.71を記録し、世界で最もバブル状態にあると評された都市は、UBSの拠点であるスイスのチューリッヒでした。
ちなみに、アメリカの都市のバブル指数は、マイアミの1.38とロサンゼルスの1.03がやや高めなものの、それ以外はニューヨークが0.47、ボストンが0.34、サンフランシスコが0.27といずれも適正価格水準。少なくともこの指数を見る限りは、バブルという指摘は杞憂のように見えます。
UBSはバブル指数の算出方法について、過去の不動産バブルのデータから、価格加熱のパターンを見出し、各都市のデータがそのパターンにどれほど近づいているかをもとに測定していることを明らかにしています。典型的な兆候の例として、不動産価格が地域の所得や賃料から切り離されていること、過剰な融資や建設活動といった実体経済の不均衡などを挙げています。
レポートには、「バブル指数は、調整(バブル崩壊)がいつ始まるかを予測するものではない」という免責条文がありますが、過去のレポートの的中率はなかなかのものです。
例えば、2021年のレポートでバブル指数2.2と評されリスク1位に挙げられたフランクフルトは、22年初頭をピークに現在までに20%近く下落しました。同じく21年に指数1.9で3位に着けた香港は、2022年半ばから2023年半ばにかけて7%下落。しかし、売買価格が4倍になっているのに家賃は1.5倍にしかなっていないアンバランスさを解消するにはこの下げ幅ではまだまだ足りないため、23年のレポートでも指数1.24と過大評価ラインにとどまっています。ここからさらにズルズルと下落するのかもしれません。
20年近く不動産価格が上昇し続けている東京は、ここ数年は一貫して過大評価と評価され続けています。21年に1.5だったバブル指数は、22年1.56、23年1.65と、徐々にリスク度が上昇しています。
大きな魅力であるローン金利の低さはいまだ健在で、円安による外国人投資家の参入も進んでいるため、不動産価格は依然として上昇中ですが、需要には陰りが見え始めているとUBSのリサーチャーは指摘しています。コロナ禍により上京する人々の数が減った一方で、リモートワークが浸透したことで郊外に人口が流出。賃料はすでに下落し始めているため、不動産価格もいつ下落してもおかしくありません。
対してアメリカはと言うと、住宅ローン金利の急上昇による需要は低下したものの、所得の伸びと在庫不足によって、大幅な価格調整に至っていません。価格も賃料も、市場に合わせて敏感に変動するため、実勢と乖離することが少なく、極端な値動きが発生しにくいのです。
定期的に出てくる不動産バブル論争。印象論に流されず、客観的なデータやレポートを見ることが重要です。
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