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Redfin×国勢調査が示す「人が動かないアメリカ」。人口移動の減速が2026年の住宅市場を変える

作成者: 海外不動産Insights 編集部|2026.01.21

【この記事のポイント(Insights)】

  • Redfinと国勢調査の国内移動データは、サンベルトへの人口流入が量的に減速し、住宅需要の前提が変わり始めたことを示す。
  • 人口移動の鈍化は価格下落より先に取引量と流動性を冷やし、2026年の米国住宅市場を「上がらず下がらず」の凪へ導く。
  • 2026年はサンベルト一括評価の時代が終わり、人口動態と保険・供給条件を重ねた地域別選別が投資判断の軸となる。

米国不動産の話題は、つい「住宅ローン金利は下がるのか」「価格は崩れるのか」に寄りがちです。ただ、2026年を読むうえで、もう1つ“先に動く指標”があります。それが国内人口移動です。パンデミック期の米国住宅市場は、低金利とリモートワークに背中を押され、「高コスト都市→サンベルト(フロリダ、テキサスなど)へ人が動く」ことで需要が膨らみました。ところが最新データ(2024年分)を見ると、そのエンジンに明確なブレーキがかかっています。

この記事では、RedfinがU.S. Census Bureau(米国勢調査局)のデータを分析した結果を軸に、「サンベルト一強」論を“終わった/終わってない”の二択で語るのではなく、移住ブームが作った需給構造が次の局面に入った、という見取り図を提示します。そのうえで、2026年の住宅市場がどう“ゆっくり変わる”のかを、できるだけ根拠に寄せて整理します。

サンベルトで顕著な「流入の急減速」

Redfinは2025年4月に、U.S. Census Bureauのデータ(2023年7月〜2024年7月を含む期間)を用いて、全米人口上位50都市圏の国内純移動を整理しました。そこで浮き彫りになったのは、”人が大量に逃げ出した”というより、“入ってくる人の勢いが落ちた”ことです。

象徴的なのがフロリダとテキサスです。以下はその代表例です。

  • タンパ(Tampa, FL):2024年の純流入は10,544人。前年の34,920人から大きく縮み、前年差は▲24,376人。
  • ダラス(Dallas, TX):2024年の純流入は12,927人。前年の35,229人から減少し、前年差は▲22,302人。
  • アトランタ(Atlanta, GA):2024年は▲1,803人と、純流入から純流出へ転じた(前年は16,663人の純流入)。

同じリストには、ヒューストン、マイアミ、オーランド、フォートローダーデール、サンアントニオ、フォートワース、オースティンが並びます。つまり「サンベルトの主役級」が一斉に減速している、という絵です。

ここで重要なのは、データが“国内移動だけ”を扱っている点です(国際移民は含まない)。2024年の米国人口増が主に国際移民に押し上げられた、という大きな流れとは分けて考える必要があります。

人口移動を減らした3つの「構造要因」

Redfinは、サンベルトへの移動が鈍った理由として、いくつかの要因を列挙しています。ここでは記事の論旨に直結する3点に絞ります。

要因1:サンベルトの「割安神話」が薄れた

タンパ、ダラス、オースティンといった都市は、以前はサンフランシスコやニューヨークの“手頃な代替”と見なされていました。しかしパンデミック期の流入と価格上昇で、大都市との住宅コスト差が縮んだ、とRedfinは整理します。移住の動機が弱まるのは自然です。

要因2:気候災害リスクと保険料が「住むコスト」を押し上げた

フロリダはハリケーンなどの気候災害が注目されやすく、結果として保険料やHOA費用の上昇が住宅コストをさらに押し上げます。Redfinはこの点を「フロリダで顕著、テキサスでも同様」と述べています。
また別のRedfin分析では、洪水リスクが高い郡(counties)で純流出超に転じる動きも示されており、気候リスクが人口移動に影響し得ることがデータで補強されています。

要因3:出社回帰で「地理的自由」が縮んだ

パンデミック期はリモートワークと低金利がセットで、職場から離れた移住が成立しやすかった。しかし出社要請が戻れば、同じ動きは起きにくい。Redfinも、サンベルトに移った人が大都市へ戻るケースがある、と説明しています。

人口移動の鈍化が需給バランスの崩れを加速する

人口移動が鈍ると、住宅市場で最初に出やすい変化は「価格」よりも「取引の量」と「売れ残り方」です。実際、2025年の米国住宅市場は“動かない”こと自体がニュースになりました。

Redfinによれば、2025年の最初の9カ月で1,000戸あたり28戸(2.8%)しか持ち家が売買されていないとされ、少なくとも1990年代以来で最低水準だとしています。
そして、2025年通年でも住宅販売は歴史的に遅く、Redfinは月平均424,078戸が売れたとまとめています(2020年の月平均585,000戸に比べ大幅に低い)。

この「低流動性」は、サンベルトの人口流入鈍化と相性が悪いです。なぜなら、移住が市場の買い手・借り手の母数をつくってきた地域ほど、流入が弱まると需給がゆるみやすいからです。Redfinも、移住が鈍っている地域では、供給過剰(パンデミック期の建設増)も重なり、需要が弱く感じられると説明しています。

もちろん、すべてが一方向に進むわけではありません。同じRedfinの分析は、「高コスト沿岸の大都市圏から出ていく人が減った」ことも示しています。ニューヨークは2024年の純流出が▲119,198人で、前年の▲152,940人より流出が縮小。ロサンゼルスも同様に流出が縮んでいます。つまり、“サンベルトへの一方通行”が弱まった、ということです。

2026年のキーワードは「凪の継続」

以下はRedfinが公表している2026年見通しです。 これまでよりもかなりゆったりとしたペースの成長が予測されています。

  • 全米住宅価格の中央値は前年比+1%程度の小幅上昇
  • 中古住宅販売は2025年比+3%で、年率約420万件(4.2 million)
  • 家賃は前年比+2%〜+3%程度

この見立てを、人口移動の文脈に翻訳すると、2026年のポイントは以下です。

1. 「価格が崩れない」可能性は高いが、「上がりにくい」

需要が弱いなら価格は下がりそうですが、Redfinは「売り手も引っ込む(listingを控える)」ため、急落しにくいと説明しています。つまり、2026年は“下がらないけど上がらない”という、投資家としてはやや身動きしづらい状況になりそうです。

2. 取引は少し戻るが、人口移動の“ブーム再来”ではない

販売が+3%でも、ベースが低いので「活況」という感じにはなりません。特にサンベルトでは流入が再加速する条件(超低金利×フルリモート大量発生)は揃いにくい。結果として、2026年は全国平均で見れば小幅回復でも、地域別には濃淡がさらに出やすいです。価格も取引量も伸びづらい「凪」の状態が続くと予想されます。

3. サンベルトは「一括り評価」をやめる年

同じサンベルトでも、供給が積み上がっている地域 / 気候災害・保険コストの負担が重い地域 / それでも雇用流入が強い地域など、さまざまな地域があります。Redfinの移動データが示すのは、少なくとも2024年時点で“主役級の都市圏が同時に減速した”という事実です。これだけで「サンベルト終わり」と断じるのは雑ですが、逆に「サンベルト最強」を前提にするのも危うい。

2026年は「どこが伸びるか」より「どこが耐えるか」

2026年の米国住宅市場は、暴落シナリオよりも、低流動性の長期化と地域差の拡大が中心テーマになりそうです。2025年に住宅の売買回転率が30年超ぶりの低水準まで落ちた事実は、「市場が動かない」ことが一時的な違和感ではなく、構造化し得ることを示しています。そのうえで、2024年の国内人口移動データは、パンデミック期の勝ち筋だった「サンベルト流入ドリブン」が、すでに減速局面に入ったことを明確に映しました。

だからこそ、2026年は「全米平均の価格」よりも、人口移動(国内純移動)と、気候リスクに紐づく“住むコスト”と、供給の積み上がり方を重ねて読む年です。言い換えると、米国不動産は“成長の物語”から、“選別の物語”へ。Redfin×国勢調査のデータは、その転換点を示す補助線として、かなり使えると思います。

 

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