【この記事のポイント(Insights)】
住宅の平均寿命が50年を超えており、長ければ100年を超えるものも珍しくないアメリカ。築年数が物件価値を大きく左右する日本と違い、古い物件も価格が落ちにくいと言われてきました。そんな常識が、近年崩れつつあります。
変化のきっかけは、住宅保険の引受基準の厳格化、いわゆる“築年数フィルター”の強化です。これは単なる保険料の値上げではありません。条件に合わない住宅は、そもそも保険を引き受けないという動きが、一部の州で現実になっています。この記事では、住宅保険業界で強化されつつある築年数フィルターの実態と、住宅市場が受ける影響について解説します。
これまで米国では、「築年数そのものは価値を決めない」と言われてきました。適切にメンテナンスされていれば、築40年、50年の住宅でも十分に流通し、価格も大きくは崩れない。実際、米国の住宅は木造中心とはいえ、修繕・更新を前提とした“長く使う文化”のもとにあります。これは新築志向が強く、「築浅=安心」「築古=値下がり」という構図が明確な日本とは対照的でした。
しかし2026年の米国では、その前提が静かに揺らぎ始めています。 理由はシンプルです。築年数が、保険の引受可否を左右し始めたからです。価格評価のロジックが変わったのではありません。金融インフラの側が、築年数を“フィルター”として使い始めているのです。保険に入れないことは、単に無保険になるということだけを意味しません。
米国では住宅ローンを利用する場合、火災保険への加入はほぼ必須条件です。つまり、「保険に入れない
」→ 「ローンが組めない」 → 「買い手が減る」という構造になるのです。売却時に買い手がどれだけ存在するかは、個々の物件の価値、ひいては中古住宅市場を大きく左右します。保険は単なる経費ではなく、物件の流動性を支える金融の土台なのです。
保険加入の条件がどのように変わったのか、具体的に見てみましょう。築年数フィルターとして取り上げられることが多いのは以下3つです。
1|屋根の年数制限
特にフロリダ州では、ハリケーン被害の増加により屋根に対する審査が厳格化しています。一般的な傾向として、アスファルトシングル屋根は15年超で追加検査、20年前後で更新拒否や交換証明要求といった事例が増えています。屋根交換費用は地域差がありますが、2万〜5万ドル程度になることも珍しくありません。購入時には問題がなくても、更新時に突然求められる可能性があります。
2|Four-Point Inspectionの一般化
築30年以上の物件では、保険会社がFour-Point Inspectionと呼ばれる簡易検査を求めるケースが広がっています。対象は「屋根」「電気設備」「配管」「HVAC」の4点です。これらに不具合がある場合、修繕完了まで保険加入が認められないことがあります。築年数が直接価値を下げるのではなく、築年数が「追加コストの発生確率」を高めるのです。
3|特定設備の排除
築1980〜1990年代の住宅では、ポリブチレン配管や特定メーカーの電気パネルが使われていることがあります。これらは水漏れや火災リスクが指摘され、引受拒否対象になる場合があります。
これらの観点で問題ありとなった物件では、保険加入のために設備更新が必要になります。購入価格が割安に見えたとしても、実質利回りが大きく低下する可能性があるのです。
築年数フィルターを意識するうえで重要なのは、これは2008年型の住宅バブル崩壊ではないという点です。当時は物件特性によらず市場のほぼ全体が影響を受けましたが、現在進んでいるのは二極化です。
また、築古であっても、屋根や設備が更新済みであれば評価は落ちません。逆に未改修であれば、築年数が金融条件の制約になります。
つまり、「築浅が好きなのは日本だけ」という時代は終わり、米国でも“更新済みかどうか”が価値を分ける時代に入りつつあるのです。築年数に加え、立地リスクも保険が選別し始めています。こうした状況を踏まえると、米国で住宅を購入する際に最低でも次の点は確認するべきです。
利回り計算より先に、まず保険加入の可否を確認する。これが2026年の新しい順序です。
誤解してほしくないのは、すべての築古物件が価値が低下するというわけではないことです。屋根や設備が求められる基準を満たしており、安定して保険を更新していける物件であれば、今までと変わらない価値を保てます。
だからこそ重要になるのが、購入後の管理です。メインテナンスコストを抑えつつも、必要な改修はしっかりと行うこと。ただ手入れするだけでなく、いつ何をどう更新したか、履歴をしっかりと記録すること。
2026年以降の米国不動産投資では、管理の視点を持っておくことは、投資効率向上のためにも、無用なリスクを回避するためにも、重要度を増していくでしょう。
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