【この記事のポイント(Insights)】
アメリカ不動産の情報を調べたり、記事を読んだりしていると、馴染みのない用語を目にすることがよくあります。それらの用語を検索してみても、いまいち要領を得ない…なんて経験はありませんか? しっかり理解するには、アメリカの文化や現地事情への理解が必要な場合も。本シリーズでは、そのようなアメリカ不動産における頻出用語をより詳しく、そしてわかりやすく解説します。
第11回目のテーマは「Fannie Mae(ファニー・メイ)」と「Freddie Mac(フレディ・マック)」。これらはアメリカの住宅ローン市場において重要な役割を果たす政府系企業ですが、ある理由から日本ではあまり詳しく知られていません。本記事では、その理由や2社の違いについても解説します。
ファニー・メイとフレディ・マックはいずれも、住宅ローンの借り手と貸し手を支援し、アメリカ国民が住宅を手に入れやすくすることを目的に設立されたGSE(Government Sponsored Enterprises:政府援助法人)です。
借り手と貸し手の支援とは主に、貸し手(銀行や金融機関)から住宅ローンを購入し、それらを証券化して住宅ローン担保証券(MBS)として投資家に販売することです。こう書くと借り手(住宅購入者)の支援の部分が見えづらいですが、以下のようなメカニズムで借り手の利益に繋がっています。
・貸し手の貸す能力には上限がある。良い借り手がいても、キャッシュがなければ貸せない。
・通常のローン返済では、貸したお金が戻ってくるのに時間がかかるため、貸し出しが増えると次の借り手に貸せないという状況に陥る。
・貸し出し能力が限界に近づくと、借りたいという需要に対し供給が追いつかず、競争が発生する。より良い借り手の選別が発生し、貸し出し条件が厳しくなる。
・ファニー・メイやフレディ・マックが債権を買い取ることで、貸し手は早いサイクルで住宅ローンを現金化できる。
・貸し手の資金繰りがスムーズになることで、需給バランスの崩れが発生しづらく、貸し出し条件も厳しくなりにくい。
このような流れで借り手と貸し手を支援しているわけです。このスキームが適用されるローンをFHA(Federal Housing Administration:連邦住宅局)ローンと呼び、借り入れ条件が緩いことが特徴です。通常20%必要と言われる頭金も、FHAローンの場合は3.5%で済みます。
買い取った住宅ローンは、金利や償還期限、リスクなどで選別したうえで証券化し、MBSとして投資家に対し販売されます。ファニー・メイやフレディマックが発行するMBSは元利支払いが保証されているため、リスクの低い試算として投資家から人気があります。
アメリカの住宅ローンの3分の2は証券化されていると言われており、MBSも巨大な市場規模を持ちます。そしてその大部分を、ファニー・メイとフレディ・マック、ジニー・メイ(米国政府抵当金庫)の3社が占めています。
※ジニー・メイの説明を行うと話が長くなるため割愛しますが、ファニー・メイとフレディ・マックが半官半民、ジニー・メイは純・政府機関で役割が似ていますが、立ち位置が異なります。
保有する住宅ローンは数兆ドル規模と言われる超大企業の2社ですが、日本で話題に上ることは多くありません。金融業界や不動産業界の人間には知られていても、一般の方は聞き覚えがあるかな、くらいではないでしょうか。
それもそのはずで、ファニー・メイもフレディ・マックも、米国に住んでいない投資家がの住宅ローンは購入しないからです。米国籍を持たない人間がFHAローンを借りるには、原則としてグリーンカードを持っているか、就労ビザ(留学や研修などは除く)を持っている必要があります。いずれも持たない場合は、その住宅を主な住居として使用することの証明と、有効な社会保障番号と雇用許可書類を提出する必要があります。
つまり、アメリカに居住実績がある人だけがファニー・メイとフレディ・マックの恩恵に預かれるわけで、日本に住んでいる人にとっては直接的に関わることはまずない存在なのです。
最後に、ファニー・メイとフレディ・マックの違いを紹介します。
設立経緯
ファニー・メイ:1938年に連邦政府機関として設立。設立理由は、住宅ローン市場の流動性を高めるため。1954年に連邦住宅抵当協会憲章法に基づいて官民混合の公社に転換。その後、1968年に民営化された。
フレディ・マック:1970年にアメリカ連邦議会によって公庫として設立された。設立理由はファニー・メイを補完するため。1989年、金融制度改革・復興・執行法(FIRREA)の一環として再編され、株主所有の会社となった。
住宅ローンの主な仕入元
ファニー・メイ:大手小売銀行や商業銀行
フレディ・マック:普通預金口座と住宅ローンの提供に特化したリサイクルバンク(地域密着型の小規模銀行が多い)
融資プログラムの利用条件
両社とも複数の融資プログラムがあり、それぞれに利用条件が異なる。例えば、低所得者向けのローンプログラムで比較すると以下のような違いがあり、ファニー・メイのほうがより厳しい。
ファニー・メイ:HomeReady ローン。収入が居住地域の平均収入の80%未満の人のみ利用可能。
フレディマック:Home Possible®ローン。収入が居住地域の平均収入未満の人のみ利用可能。
ファニー・メイやフレディ・マックには、ここで紹介した以外にもさまざまな機能や差異があります。気になった方は、ぜひ調べてみてください。
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