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【アメリカ不動産用語解説】Vol.10「Seller Financing(セラーファイナンス)」

作成者: 海外不動産Insights 編集部|2023.08.30

【この記事のポイント(Insights)】

  • アメリカでは、売り手が買い手に購入資金を貸す「セラーファイナンス」という手法が比較的よく知られている。
  • 金融機関のローン審査を経ずに売買契約を進められるため、取引速度が速く契約内容の自由度が高い点が魅力。
  • 反面、貸し倒れのリスクも高いため、米国不動産の取引経験が豊富な玄人以外が手を出すのは危険。

アメリカ不動産の情報を調べたり、記事を読んだりしていると、馴染みのない用語を目にすることがよくあります。それらの用語を検索してみても、いまいち要領を得ない…なんて経験はありませんか? しっかり理解するには、アメリカの文化や現地事情への理解が必要な場合も。本シリーズでは、そのようなアメリカ不動産における頻出用語をより詳しく、そしてわかりやすく解説します。

第10回目のテーマは「Seller Financing(セラーファイナンス)」。不動産購入時の資金調達方法の1つで、端的に言えば銀行や金融機関ではな売り手から借りる手法です。日本ではまず考えられないお金の流れですが、アメリカではしばしば利用されるこの手法について解説します。

セラーファイナンスの最大のメリットは、ローン審査が不要な点

冒頭の通り、セラーファイナンスは売り手が買い手に融資する資金スキームです。買い手が金融機関で十分な金額の住宅ローンが組めなかった場合に利用されます。買い手は売り手とローン契約を結び、直接返済していきます。モノ(不動産)を先に受け取り、代金を後々支払うことから、買い手からしてみれば分割購入に近いイメージかもしれませんね。

この手法の最大のメリットは、ローン会社による審査を経ずに売買契約が完了する点です。買い手からすれば、なんらかローン審査が通りにくい理由を抱えていても、不動産を手に入れられます。
売り手からすれば、審査を待たずに売買を完了させられるため、取引速度が格段に早くなります。また、金融機関が取っていたローン手数料が自分の懐に入る点も大きなメリットです。

買い手と売り手の合意のもとで取引条件を個別調整できるのも魅力で、頭金の要件を緩和したり、支払期間を短期間にしたりと、当事者の都合で柔軟な取引が可能です。

セラーファイナンスの最大のデメリットは、リスクの高さ

一方で、セラーファイナンスには大きなデメリットもあります。

売り手の最大のデメリットは、貸し倒れリスクが高いこと。第三者による審査を行わないため、買い手の信用力や返済能力を自分で見極める必要がありますが、普通の売り手は信用調査のノウハウを持っていません。そのため、返済が滞るケースが一般的な住宅ローンに比べて圧倒的に多いという統計があります。
セラーファイナンスでは売った物件そのものを担保とすることが一般的です。返済が遅延しても不動産が戻ってくるのでOKという考えたもありますが、退去を求める訴訟を行う手間がありますし、退去後にメンテナンスが必要であればその間は収益がなくなってしまいます。住宅ローンを組んだ買い手に売れば、売却時に一括で資金回収が済み、その後に返済遅延があろうと関係ありません。

一方、買い手からしてみれば、金融機関の住宅ローンに比べて金利が高くなりがちな点が最大のデメリットです。上述の通り、売り手はリスクを負って自ら融資するため、その分を回収しようと高い金利設定にします。セラーファイナンスを利用する買い手の多くは、住宅ローンの審査が通らなかった、つまりは所得も低めの人々です。高い金利を上乗せして返済していくのは簡単ではありません。

サブプライム問題やリーマンショックを契機に利用が急増

以上のように、セラーファイナンスはメリットとデメリットがはっきりした資金調達手法です。ハイリスクハイリターンと言ってもいいかもしれません。

セラーファイナンスは、不況時や利上げ局面などで銀行の貸し手が保守的になり、通常の住宅ローンが組みにくくなったときに利用が増える傾向があります。特に、サブプライム問題とリーマンショックが重なった2008年前後、住宅ローンの審査条件が極めて厳しくなった時期にはセラーファイナンス利用者が急増しました。

現在、利上げは一段落しつつありますが、住宅ローン審査はまだまだ厳しいため、セラーファイナンスが積極的に利用されています。メリットも大きいとはいえ、アメリカの不動産市場や法制度の知識がない状態で利用するにはリスクが高いため、よほど経験豊富な方以外は利用を控えるのが無難でしょう。

 

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