【この記事のポイント(Insights)】
2020年度の税制改正により、海外不動産投資を行う際、それまで個人でできていた簡便法を用いた減価償却費の計上方法が改正され、以前のように多額の減価償却費から生み出される赤字を計上し、給与所得などから差し引くことができなくなりました。
しかし、法人であれば引き続き簡便法を使用した4年間の減価償却が可能ですので、従来通りの活用をすることが可能です。そこで、この記事では海外不動産投資において税制改正前と後で減価償却がどう変わったのかなどを詳しく解説します。
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減価償却の仕組みは複雑で、これから海外不動産投資しようという方にとっては減価償却とは何なのかがわかりにくい部分も多いかもしれません。
海外不動産投資の減価償却の概要と計算方法について詳しく解説していきます。
減価償却とは、海外不動産などの固定資産の購入費を、購入した年に一括で計上するのではなく、償却期間で案分して計上する会計上の処理のことです。ただし、すべての固定資産が減価償却費の対象ではなく、対象になるものとそうではないものに分かれます。
減価償却できる資産 | 建物・建物付属設備・機械装置・器具備品・車両運搬具・ソフトウェアといった無形資産など |
---|---|
減価償却できない資産 | 土地・骨とう品・使用期間が1年未満の物・取得額が10万円未満のものなど |
減価償却費は、経年劣化で減少する価値を考慮して計上するものなので、経年劣化で価値が減少しない土地などは減価償却の対象外となります。そのため、海外不動産を土地と建物セットで購入した場合、減価償却費を計上する場合は購入額の土地と建物の内訳を明確にする必要があるのです。
減価償却費の計算方法は、毎年同じ額の減価償却費を計上する「定額法」と、毎年償却していない残高に対して償却率を乗じた額を計上する「定率法」の2通りあります。
対象の固定資産や個人法人の違いによって、選択できる方法が定められているので注意しましょう。
減価償却費の計算方法 | 法人 | 個人 |
---|---|---|
定額法 | ・建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアに関しては必ず定額法で計算 ・機械設備、車両運搬具、工具器具備品は税務署に届け出ることにより定額法で計算可能 |
・原則として、すべて定額法で計算 |
定率法 | ・原則として、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェア以外のすべてを定率法で計算 | ・建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェア以外であれば、税務署に届け出ることにより定率法で計算可能 |
定額法での減価償却費の計算は次のようになります。
減価償却費=取得金額×定額法の償却率
償却率は、償却期間や取得年月日に応じて定められています。例えば、3,000万円で取得した木造住宅の償却期間が22年の場合、償却率は0.046です。
よって、1年で計上できる減価償却費は3,000万円×0.046=138万円となります。
一方、定率法は毎年償却していない残高に対して償却率を乗じた額を計上する方法です。残高の多い最初は計上できる額が大きく、年が経過するごとに計上額が減少するという特徴があります。
定率法での減価償却費の計算方法はこちらです。
減価償却費=未償却の残高×定率法の償却率
仮に、3,000万円で取得した木造住宅の償却期間が22年の場合、初年度は3,000万円×0.091(定率法の償却率)=273万円を計上します。
2年目は、3,000万円-273万円=2,727万円に償却率を乗じた額を計上することになるのです。
まずは、改正前の減価償却制度について見ていきましょう。改正前で減価償却を活用できたポイントは次の2つです。
不動産投資を行う際に損をしないために、そもそも減価償却とは何かを理解しておく必要があります。不動産投資での減価償却とは、不動産の購入価格を購入した年に一括で計上するのではなく、償却期間で案分して計上する会計上の処理のことです。
仮に、土地建物合計5,000万円の木造住宅を購入した際、内訳が土地4,000万円・建物1,000万円であれば、建物部分の1,000万円のみが費用化できる減価償却費の対象となります。償却期間が5年なら毎年200万円を5年間計上することになります。
この際に重要になるのが法定耐用年数です。法定耐用年数は、建物の構造や目的により定められており、住宅として利用する物件の場合、構造ごとに以下のようになります。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
仮に、新築木造住宅を購入した場合、法定耐用年数が22年なので償却期間は22年です。この耐用年数は中古住宅の場合では算出方法が異なってきます。
中古住宅の場合、法定耐用年数のうち、取得時においてすでに経過している年数を考慮して耐用年数を算定する「簡便法」を用いることができ、次のように計算します。
【法定耐用年数の一部を過ぎている場合】(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
【法定耐用年数を過ぎている場合】法定耐用年数×20%
※算出した結果で1年未満の端数は切り捨て
仮に、構造が木造で築年数が30年の不動産の場合、22年の法定耐用年数を超えているため、償却期間は「22年×20%=4年」となるのです。
減価償却費を多く計上することで、会計上の赤字を作りやすくなります。減価償却費は、実際には使われていない経費です。そのため、実際には黒字でも減価償却費を多く計上できれば、会計上は赤字にできます。
不動産投資の所得は「不動産所得」に区分され、給与所得との損益通算が可能です。不動産所得での赤字を給与所得と相殺することで、課税所得の圧縮につながります。例えば、給与所得が2,000万円あり不動産所得の赤字が250万円なら、相殺した1,750万円が課税所得となるのです。
所得税は、所得が高くなるほど税率も高くなる累進課税制度です。仮に、2,000万円の給与所得を得ていて課税所得が2,000万円の場合、所得税の税率は40%、10%の住民税率(所得割)と合わせると50%の税率となります。
しかし、不動産所得の赤字が250万円なら給与所得2,000万円と損益通算することで課税所得を1,750万円まで圧縮でき、税率は所得税率33%と住民税率(所得割)10%合わせて43%まで下がるのです。2020年税制改正前は、所得の高い人ほど減価償却を活用できました。
2020年に税制改正が施行され、税金面でいくつかの変化がありました。海外不動産投資に関わる部分は以下の通りです。
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例を次のとおり創設する。
(1) 個人が、令和3年以降の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。
引用:総務省「令和2年度税制改正の大綱」
※上記は、いわゆる簡便法等により算定しているものが対象となります。
つまり、個人の場合は国外中古建物にて簡便法等を用いて減価償却費を計上して不動産所得を赤字にし、不動産所得の赤字と事業所得や給与所得等と損益通算できなくなってしまったのです。しかし、2020年の税制改正後も海外不動産投資において、コスト・セグリゲーションというやり方でメリットを得ることができます。
コスト・セグリゲーションとはコスト(費用)・セグリゲーション(分別)という意味の言葉で、建物をひとまとめに減価償却するのではなく、構築物(土地を囲うフェンスなど)や動産(大型家電など)などに細かく分けて個々に減価償却の計算をする方法です。
構築物や動産は耐用年数が6年〜20年と、住宅よりも短い耐用年数が設定されているため、より短期でより多くの減価償却費を計上することができるようになるのです。
※コスト・セグリゲーションを用いた個人の償却方法に関しては、弊社オープンハウスの営業担当に個別相談フォームよりご相談ください。
2020年の税制改正により、個人での簡便法を用いた減価償却費の計上方法が改正され、海外不動産の場合はこれまでのように多額の減価償却費から発生する赤字を計上し、給与所得などから差し引くことが不可能になりました。しかし、税制改正後もデメリットばかりではありません。
今回の税制改正で減価償却費の規制が設けられたのは、個人だけであり法人は対象外です。法人で海外不動産投資する場合、従来通り簡便法を用いて計算した減価償却費を損金算入することが可能です。しかし、発生した利益は法人のものとなるため、個人の所得税・住民税への税効果はありません。
法人で利益が出た場合には法人税の対象となるため、減価償却費を計上して利益を圧縮できれば、法人税を抑制することが可能です。ただし、法人が減価償却費を計上した場合は、課税の繰り延べとなる点に注意が必要です。
個人が不動産を売却すると、物件の売却益に対して譲渡所得税が課税されます。また、個人が不動産を5年以上保有すると譲渡所得税の税率は下がりますが、法人の場合は物件の売却益にも法人税が課税されるため、税率が下がりません。減価償却費の計上によって法人税を抑制しても、物件を売却した時に支払う法人税で相殺となります。つまり、法人の場合は節税ではなく課税の繰り延べになるという点に注意が必要です。
例えば、法人実効税率が33%の場合、年間2,500万円の減価償却費を損金算入することで、2,500万円×33%=825万円の課税を繰り延べできます。また、法人の赤字は翌年以降に持ち越して年間の計上額の設定ができるので、減価償却期間が4年でも、それ以上の年数で課税繰り延べの効果を期待できます。
※税制改正に対応した個人の償却方法に関しては、弊社オープンハウスの営業担当に個別相談フォームよりご相談ください。
先述のように、法人で不動産投資する場合、減価償却を活用することができます。しかし、税効果を得られるのは一定期間のみで事業継続中ずっと得られるわけではありません。
ただ、海外不動産投資のなかでも、アメリカ不動産は税金面以外にもさまざまな投資メリットがあり、投資する価値は十分にあると言えます。アメリカ不動産の主な投資メリットは以下が挙げられます。
経済大国アメリカのドルは、世界中で通用する基軸通貨であり、アメリカ不動産に投資するだけでドル資産を保有することにつながります。資産運用で重要なリスク分散としても、アメリカ不動産は「国」「通貨」「資産クラス」の分散が可能です。不動産はインフレに強い資産という点では、インフレ対策にもなります。
アメリカ不動産投資は、法人の場合に短期間で減価償却をより多く計上できます。つまり、税負担を緩和するとともに、短期間で資金を回収することが可能になります。
また、アメリカ不動産の特徴として中古物件でも価値が高くなる傾向があります。アメリカ国内で年間500〜600万件の不動産取引がありますが、そのうち中古物件の取り扱いは8割ほどです。そのため築年数30年、40年といった中古物件でも、値上がりが続くという現象が起こっています。
加えて、アメリカ人は一生の間に4、5回ほど不動産を買い替える傾向があり、アメリカ不動産は、売却しやすく売却益が期待できます。中古物件の市場価値の安定さがあり、売却益の発生時期をコントロールしやすいため、事業経営も安定しやすいと言えます。このような観点から、法人によるアメリカ不動産投資は注目を集めています。
海外不動産投資は、アメリカ以外にもヨーロッパや東南アジア諸国などさまざまな投資先があります。その中でも、なぜ海外不動産投資の中でアメリカがおすすめできるのか、以下6つの理由について解説します。
アメリカが投資先としておすすめな理由として、「人口増加」と「群を抜く経済成長」が挙げられます。
国連人口基金(UNFPA)の「世界人口白書2023」によると、2023年のアメリカの人口は3億4,000万人で世界3位の規模を誇ります。今後もアメリカの人口は緩やかに増加を続け、2050年には3億8,800万人になることが見込まれています。
IMFのデータによると、2023年の世界のGDPは1位アメリカの約268兆ドル、2位中国の約193兆ドル、3位日本の約44兆ドルです。特に3位以降と比べるとアメリカは群を抜いた経済規模です。
国の人口はその国の国力・経済に大きな影響を及ぼすこともあり、今後もアメリカの経済は成長していくことが見込まれます。
日本では、中古物件は築年を経るごとに取引価格が下落していくことが一般的です。
一方、アメリカでは中古物件がメインの市場です。人口増加により住宅への需要は増え続けているため、築年を経た中古住宅でも価格競争力が損なわれないのです。
過去30年のアメリカの不動産価格は約3.5倍の上昇率となっており、売却する際もキャピタルゲインが期待できます。今後もアメリカの不動産価格は上昇していく可能性が高く、投資先としておすすめだといえます。
アメリカ全体の空室率が5.8%であるのに対して東京都全域の空室率は10.6%と、人口が増大しており不動産の新規供給が少ないアメリカでは、賃貸需要が旺盛なため空室のリスクを日本よりも低く抑えられます。
また、アメリカでは物価が上昇しており、毎年の契約更新のタイミングで賃料の賃上げ交渉が可能です。
アメリカは日本と比べて投資文化が成熟しているという特徴があります。外国人にも市場が開かれており、日本人であってもアメリカでの不動産投資は比較的取り組みやすくなっていることがポイントです。
海外不動産投資では、国によって外国人の投資が厳しく制限されているケースもあり、不動産投資を行うのにリスクがあります。成長性に優れるアジアや中南米の国々への投資は、この点で不安が残ります。
投資に関する法制度が整いきっていないことが多く、現地の関係者が不当に大きな権限を持っている場合があります。恣意的な解釈によって不利益を被る可能性があり、それを防ぐために袖の下を要求されるようなことも少なくありません。
一方で、先進国であれば問題ないかというとそうとも限りません。法的には外国人投資家の権利が確保されていても、現実の商取引でそれが守られていないケースは多々あります。不動産取引は売り手が常に1人なのに対して、買い手の候補は無数にいることから、売り手の力が強いのもその原因の一端です。
日本でも見かけますが、「外国人には売りません」と堂々と宣言する売り手はどこの国にも一定いますし、取引はできるものの現地の買い手より不利な条件がつくことが少なくありません。
その点、アメリカは商取引の透明性が非常に高い国です。契約主義という言葉は、揶揄の意味で使われることもあります。しかし、契約を交わす当事者からすれば、国籍やその他の条件によって差別されることなく、フラットな条件で自由な商取引をする助けになってくれます。
アメリカで不動産投資をすることは、世界中で通用する基軸通貨であるドル資産を持つことでもあります。
仮にドルを保有中に円安になった場合、不動産自体の価値は変わらなくとも、円換算でプラスになります。また、アメリカの不動産を持っていることでリスク分散できる点もポイントです。
逆に、円安に動いた場合、円資産だけしか保有していないと、何もしていないのに保有しているお金の価値が相対的に落ちてしまうことになります。
もちろん、円高に動いた場合は逆に価値は上昇しますが、ここで大事なことはドルで資産を保有していると為替変動リスクを分散できる、という点です。為替が将来どのように変動するかは誰にもわかりません。円資産とドル資産の両方を保有しておくことで、将来の為替変動によるリスクを減らせるのです。
2020年の税制改正により、アメリカ中古住宅の価格が落ちにくく減価償却の対象となる建物比率が高い特性を利用して、簡便法等を用いて多額の減価償却費を短期に計上することで不動産所得を赤字にして、その損失額と給与所得等と損益通算することが不可能になりました。
しかし、上記は2023年現在では個人のみを対象としたものであり、法人は税制改正後も簡便法による4年間での減価償却も、法人の事業利益と損益通算することができます。耐用年数計算・損益通算が可能な法人の場合はこれまでと同様のスキームで減価償却することが可能です。
そのため、法人の場合は簡便法による4年間での減価償却を継続して活用することが可能です。
※税制改正に対応した個人の償却方法に関しては、弊社オープンハウスの営業担当に個別相談フォームよりご相談ください。
さらに、アメリカ不動産は流動性が高く、容易に売却して現金化することができます。そのため、出口のタイミング、すなわち、譲渡益計上のタイミングを戦略的に設定することが可能です。
具体的には、売却時期を経営者・役員の退職金支給や多額の設備投資の時期、一時的な業績悪化などの資金需要に合わせることで、譲渡益と事業経費を損益通算することができます。
また、仮に法人の事業所得に欠損が出た場合でも、急いで売却する必要はありません。法人の青色申告欠損金は9年間繰越し、10年間控除できますので、物件の値上がりのタイミングを計り売却時期を調整することで、譲渡益と繰越欠損金を相殺して損益通算することも可能ですので、従来通りご活用いただけます。
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オープンハウスだからできる「ワンストップサービス」の内容は以下5つです。
1.賃貸運用・売却時を意識した物件選定
オープンハウスグループでは、現地に根付いた事業活動で得られた「土地勘」と「アメリカ人の目」をもって、実際に足を運び、仕入れから修繕に至るまで、現地で厳しく物件を見定めています。
2.グループ会社による融資商品提供
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3.ご契約手続き
アメリカ不動産の契約手続きは、エスクローという第三者機関を介して進められるなど、日本の商慣習とは異なる部分が多くあります。
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4.ご購入後の管理体制
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日本語による毎月の収支報告をはじめとした、賃貸運用時のオーナー様のさまざまなご要望に対し、適切にお応えできる体制を構築しております。
Open House Texas Property Management社が建物の管理をサポートします(一部の州ではプロパティマネジメントを外部委託しております)。
5.ご売却
アメリカ現地の不動産市況や日本の税制などを多角的に分析し、適切な売却タイミングや販売戦略をご提案いたします。
加えて、東証プライム市場上場企業という安心感・信頼性もあります。
その結果、日本マーケティングリサーチ機構がアメリカ不動産における年間取引数・取扱高において調査を実施した結果「年間取扱高」「年間取引件数」において4年連続No.1を獲得するに至りました。
海外不動産投資の減価償却の税制改正前後の内容やアメリカ不動産投資の魅力について解説しました。
2020年の税制改正により、それまで可能であった「簡便法を用いた減価償却による課税所得の圧縮」ができなくなりました。しかし、法人は今回の規制の対象外となり、これまで同様減価償却を活用することが可能です。
海外不動産投資の中でもアメリカ不動産投資は、将来的に経済成長していく期待度が高く、また世界の基軸通貨である米ドルで資産形成できるなどさまざまなメリットがあります。海外不動産投資に興味を持っている方は、本記事の内容を参考にアメリカ不動産投資を一度ご検討してみてはいかがでしょうか。
◆オープンハウスのアメリカ不動産をご活用頂いたオーナー様の体験談はこちら◆