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生成AIの普及が不動産価格にも影響

米株式市場の変動が拡大

米国株式市場は史上最高値圏で推移しているものの、これまでのような一本調子での上昇から不安定な動きになりつつある。FRBの利下げに対する期待の変化や株価の高値警戒感から、今後も米株式市場は変動が大きい状況が続くことが見込まれる。 これまで米国株式の上昇を牽引しているのは大手IT銘柄であり、特に生成AIの普及期待を受けた銘柄群であった。その代表的な銘柄であるNVIDIAは、今後の生成AIに対する期待を表象する銘柄であるといえるが、それ以外のIT銘柄の上昇率との乖離が広がっている。このように一部の株価が牽引する形で株式指数全体が押し上げられる形は、ともすると相場の過熱感を示すとして警戒感を高める側面があるが、生成AIが産業革命に匹敵する変革を生み出し、新たな世界を創造するとの期待感の大きさも示している。このように楽観と悲観が大きければ大きいほど、一時的な変化が大きくなることは避けられないだろう。

図表1: IT・AI関連企業の株価

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出所:QuickFactSet

株価の割高感を見るうえで、株式益利回りと米長期金利の差であるイールドスプレッドの推移をみると、FRBの利上げ以降、縮小傾向にあることが読み取れる。ハイリスク・ハイリターンの関係を前提とすれば、長期債よりもリスクが高い株式益利回りは長期金利よりも高い水準にあることが自然である。足元のイールドスプレッドは0.3%程度まで低下しており、株式の投資リスクに応じた超過リターンが小さくなっていることが窺える。今後、イールドスプレッドがマイナスとなるならば、長期債への投資の方が効率的となる可能性が高まることを示しており、このような状況は2002年以来22年振りの出来事となる。これは株式投資のリターンが収益増加だけでなく、株価上昇によるキャピタルゲインへの強い期待に大きく影響を受ける状況に変化していることを示している。
一方で、S&P500の予想EPS(一株当たり利益)は前年比10%を超える水準であり、依然として利益成長への期待は高い。また、予想PER(株価収益率)も20倍の水準を続けており、堅調な企業収益が続くなかで株価に大きな割高感は見られない。このため、当面、株価上昇トレンド自体に大きな転換が生じる可能性は小さいだろう。
このため、株価上昇トレンドが変化しないとしても、キャピタルゲイン狙いの株式投資が価格変動を大きくさせる可能性には留意が必要である。その点からも、今後はハイリスク・ハイリターンの投資からミドルリスク・ミドルリターンを期待する投資スタイルにシフトするため、金融商品から経済成長を反映した実物資産へのシフトも選択肢となろう。

図表2:米国イールドスプレッド

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出所:QuickFactSet

生成AIの普及と不動産需要

株式市場を牽引する生成AIについては、生成AIが社会にもたらす影響は産業革命やインターネット革命よりずっと大きなものになると予想する意見も多い。今後は、生成AIをパーソナライズして一人ひとりの仕事や生活をサポートするために不可欠なツールとなり、生活スタイルも大きく変化することが見込まれる。このような変化に伴って社会インフラの再構築は不可避であり、特に、電力供給やデータセンターの制約をいかに解消するかは大きな課題である。
生成AIは電力消費量が極めて大きく、IEAによると2020年に全米の電力需要の2%に過ぎなかったものが、2026年には6%に増加するとの見通しを示しており、生成AIの普及が更に加速すれば、データセンターによる電力需要が全米の1割を超えるまでそれほど時間はかからないだろう。また、再生可能エネルギー関連のプロジェクトに積極的なIT企業は多く、Amazonは太陽光や風力発電プロジェクトに投資して、4年連続で世界で最も多くの再生可能エネルギーを購入したと報じられている。このように、生成AIの発展は、企業価値だけでなく、産業構造や経済全体にも大きな影響を与えており、この動きが想定以上の景気拡大を牽引していると考えられる。
その点で、データセンターは、生成AI発の産業革命がどの程度進んでいるかを明らかにしている。世界のデータセンターの売上高は、第1位がアメリカであり、これに中国、日本、ドイツが続く状況である。データセンター市場においても米国と中国の2強体制が進んでおり、米国では、2028年に1,245億ドルの規模と、今後も年平均5.4%のペースで拡大が続くと予想されている。

図表3:世界のデータセンター市場(売上高ベース)

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出所:Statista

米国におけるデータセンターのキャパシティを見ると、北バージニア地域の規模が目覚ましく増加しており、2015年から2022年後半にかけて390%の増加率となっている。これに次ぐデータセンターの集積地域はダラス/フォートワースである。そして、シリコンバレー、アトランタといった地域が続く。

図表4:米国のデータセンターキャパシティの成長

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注:キャパシティは2022年後半の数字。伸び率は2015年から2022年後半までのキャパシティの増加率
出所:Statista

データセンターは、リスクヘッジのために自然災害に強く、遠隔地であることが求められており、設置が分散化されることが望ましい。このためデータセンターが進出した場合には、地域活性化のメリットが大きくなる。雇用の創出のみならず、地域の大学等との連携によって知の集積も期待できる。また、データセンターには電力供給だけでなく様々な社会インフラが不可欠であるため、地域の経済成長に大きく貢献するものである。
2015年以降のデータセンターのキャパシティの伸びが大きい地域の住宅価格の変化を見ると、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ワシントンD.Cといった都市部の上昇幅は大きくないが、フェニックス、アトランタ、ダラスといった地方都市では比較的高い上昇幅となっている。これは、データセンターの進出が地域経済に良い影響を与えている面があるものと思われる。今後も、データセンターの拡充が行われるなかで、地域の産業振興が米国経済の基盤強化に繋がることが見込まれる。今後も、生成AI革命は、米国経済の成長を長期化させるとともに、社会変化を通じて不動産市場にも大きな影響を与えることが見込まれる。

図表5:米国主要都市のケースシラー住宅価格指数(2024年3月)

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注:2015年12月を100とした値

出所:QuickFactSet

執筆日:2024.06.06

著者 柴崎健(SBI大学院大学 経営管理研究科教授)

1989年日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行後、みずほ証券にて金融資本市場の調査(金融・財政・マクロ経済・金融制度・ESG投資等)に25年間携わる。みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ) にてコンサルタント、みずほ証券グローバル戦略部にて産官学連携にも従事。
SBI大学院大学教授、京都大学客員教授、早稲田大学非常勤講師等を務める。

著書『金融緩和のもとでの国債リスク』、『2020年 消える金融』(共著)、『シナリオ分析 異次元緩和脱出』(共著)、 『金融資本市場と公共政策-進化するテクノロジーとガバナンス』 (共著)、『現代ビジネスエシックスと企業価値向上』(共著)等

 

※この記事は、執筆日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。

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