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令和2年度税制改正大綱で、アメリカの不動産投資はどう変わるのか

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2019.12.23

令和2年度税制改正大綱が発表されました。海外不動産を利用した節税スキームは数年前から話題になっており、近い将来、何らか税制の改正があると多くの関係者が想定していました。しかし、発表された内容は予想を大きく上回るもので、税金の専門家ですら驚くべき内容でした。そこで今回は税制改正大綱の発表内容を踏まえ、オープンハウスがどのように考えているのか、皆さんにお伝えしたいと思います。


令和2年度税制改正大綱により、令和3年からは損益通算を使った節税スキームが一部使えなくなる

通常、日本居住者が海外不動産を保有し賃貸に出すこと等で収益を得た場合には、日本で確定申告をする必要があります。その際、中古資産の耐用年数に関する考え方についても日本の税法が適用され、これに基づき減価償却費が算出されます。

アメリカの物件は、日本と比較すると住宅価格に占める建物の割合が高く、多くの減価償却費を計上できるというメリットがあります。また、アメリカの住宅流通市場は中古物件の取引が大半を占めていることと、人口の増加および経済の持続的な成長を背景に、築年数が経過した物件でも資産価値が保たれる傾向があることから、売却時の流動性が高いことも特徴です。こうした特徴を利用して、「海外で中古住宅を購入し、多くの減価償却費を計上することで、損益通算によって所得税額を減少させる」といった節税スキームが、富裕層を中心に行われてきました。

しかし、令和2年度税制改正大綱で「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例」が新設され、令和3年からこれまでの節税スキームが一部使えなくなる可能性があります。

以下、令和2年度税制改正大綱(一部抜粋)

租税特別措置等 国税

〔新設〕
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例を次のとおり創設する。

(1)個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。

 

そこで、今回の税制改正大綱を踏まえ、オープンハウスが重要だと想定しているポイントについてまとめました。

令和2年度税制改正大綱でどうなる?オープンハウスが考える7つのポイント

1)すでに保有している投資家にも影響が及ぶ改正案は、専門家でも想定外だった

海外不動産に係る税制改正を予想する人は多く、改正される際には、租税法規不遡及の原則に則り、「新たに海外不動産を購入する投資家だけが影響を受ける」と考えられていました。

しかし令和2年度税制改正大綱は、「簡便法に基づいて算出される減価償却費によって損失を計上して、所得税を圧縮するスキームそのものが使えなくなる」という大きな改正案で、すでに海外不動産を所有している投資家も大きな影響を受ける内容となりました。オープンハウスとしても想定外のことでしたが、冷静にアメリカの不動産投資を振り返ると、現在所有している不動産を手放す判断をするのは少し早いと考えています。

2)焦る必要はない。あと1年、簡便法によるメリットを受けられる

現行法において中古資産の減価償却は、耐用年数を簡便法によって算出しますが、令和3年からは簡便法に基づくメリットが受けられなくなります。しかし、令和2年の間は引き続き現在の簡便法に基づいて計算された減価償却費を計上することができますので、アメリカの不動産投資のタックスメリットは継続しており、一般論として、すぐに売却を検討するのは早計と考えます。

3)売り急ぐ必要はない。出口戦略で描く買い手は、あくまで現地米国人

税制改正大綱の発表を受け、すでにアメリカの不動産を保有している投資家のなかには、減価償却のメリットが来年から一切受けられなくなると誤解されたり、日本人投資家が購入する動機が弱くなるために高値売却ができなくなると懸念されたりして、早めの売却を検討し始めている方もいらっしゃるようです。

しかし、オープンハウスでは、事業開始当初より売却時のターゲットは現地アメリカ人、つまり実際に戸建に住もうとする実需層を想定しており、仮に日本人投資家の需要が縮小したとしても、売却時に影響を受けることはほとんどないと考えています。また、アメリカの中古住宅市場は堅調に推移しているため、今後も保有し続けることでインカムゲインとキャピタルゲインの両方を手にできる可能性があります。

今回の税制改正大綱により、これまでどおりの「タックスメリット」を受けることができなくなるかもしれませんが、これからのアメリカ不動産投資は、より「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」「タックスメリット」「ドルへの資産分散」という4つのメリットのバランス感が際立つ商品となっていきます。アメリカの不動産市場は堅調で、運用先としては引き続き魅力的な運用商品であると考えています。

4)税制改正大綱は原案であり、法案成立はまだ先

税制改正大綱が発表されましたが、現時点ではあくまでも原案に過ぎません。法案成立までの流れとして、まず国税については財務省、地方税については総務省が税制改正大綱に基づいて税制改正法案を作成します。その後、法案は12月にかけて国会提出され、衆議院と参議院での審議を経て3月末までに成立・交付されるのが一般的です。そのため、審議の過程で法案の内容が変わる可能性があります。

また税制改正大綱には、減価償却費の扱いについて触れたあと「その他の所要の措置を講ずる」と付け加えられており、今回の税制改正案で不利益を受ける投資家に対し、何らかの措置が検討される余地があることを匂わせた書きぶりになっています。そのため、今後の審議の過程で具体的な措置が明らかになってくる可能性があり、法案成立まで慎重に見極めていく必要があると考えています。

5)簡便法以外による耐用年数算出には検証が必要

アメリカの中古住宅は、築年数が経過しても資産価値を保っているものが多いため、簡便法を用いて減価償却費を計上すると、実際の資産価値と帳簿上の資産価値が大きく乖離します。こうした点が、問題視される一因になっていました。

今回の税制改正大綱では、簡便法を用いた減価償却費の計上が制限されるという方向性が示されましたが、減価償却計算の根拠には「使用可能期間の年数を耐用年数とする方法」もあります。もし残存使用期間を合理的に見積もることができ、実態にそぐわない耐用年数設定が是正される場合は、一定の減価償却費の計上が認められるかもしれません。この点について、今後の審議でどのように判断されるのか、注目しておく必要があるでしょう。

6)マイナス部分ばかり注目されるが、譲渡益が縮小する点は押さえておきたい

減価償却費を経費として計上すると、その分帳簿上の資産価値が目減りし、相当額が取得費から控除されます。そのため売却時にはキャピタルゲインが発生しやすく、結果として税負担も大きくなっていました。

一方、税制改正大綱では、令和3年から「減価償却費が経費から除外された海外不動産を売却した場合、譲渡益から除外された減価償却費相当額を控除する(経費にならなかった減価償却費相当額は、取得費から控除せずに譲渡益を計算する)」と示されました。今回、減価償却費計上による節税メリットが損なわれる点ばかりが注目されていますが、譲渡益の圧縮により税負担が軽減されることは、投資家にとって収支上プラスに働きます。この点については、是非押さえておきたいところです。

7)今回の改正案は、法人が保有する海外中古不動産には影響がない?

今回の改正案によって、個人が所得税を計算する際に、簡便法に基づく減価償却費計上による損益通算が制限される見込です。しかし、法人が保有する中古の海外不動産は税制改正による規制対象から外れ、従来どおりの損益通算が適用できると目されています。

今回発表された税制改正大綱を受けて、アメリカ不動産投資につき不安を抱かれている方もいらっしゃるかと思います。ただ、闇雲に動くには時期尚早です。オープンハウスの見解もご参考にしていただきつつ、新たな税制度に移行するまでの間、プロの意見を取り入れながら検討されてみてはいかがでしょうか。